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街から田舎へ

ある夜
街に引っ越して以来久々に綺麗な星空を見て
ふと昔を思い出した。

私は6歳ぐらいまで街の県営アパートに住んでいた。


幼少期から幼馴染みが沢山おり共に成長し
夏はアパートの住人達でパジャマのままバーベキューや花火したり。

昔はネット環境も携帯も無く
テレビも一家に一台位しか無かった。

幼馴染みは順に家を建て南へ西へ東へと引っ越してゆき、その度とても寂しいお別れをした。

7歳になり両親の力で
私達も新築の一軒家に引っ越せる事になった。

生まれて数年暮らした場所を離れるのに私は何故かワクワクしていた。

しかし他の幼馴染みとは違い、私達は北へ向かった。
ちょうど団地ブームでもあり、丁度良い土地が見つかったという両親の決断。

その場所は街とは少し違い
田園風景や海、川、山々が広がる様な本当にトトロがいるような場所だった。



新築の家の匂いと
引っ越し当日から近所の子達と鬼ごっこし、まだ幼く周りも温かく素朴で、割と馴染むのが早かった。

小、中とひたすら4キロ近い田んぼ道を徒歩や自転車で通学したのだが、その生活がすでに当たり前だった。
雨の日はカッパを着て、カバンをビニール袋に入れて自転車に括り付け通学していた。

私には街より田舎で育った事が、本当に幸せな事だった。
学校もいじめなど無く、性格も一人一人の個性として受け入れられていた。

一見辛い通学距離も
空や山や畑を見る度に想像力が働く。
雲の形、石蹴り、野イチゴ摘み、野良犬と並んで帰る、栗拾い等、遊びを見つけながら帰っていた。
部活帰りは皆で無数の星や流れ星をよく見ていた。

様々な事情で今は大きな街に暮らしているが何だか
馴染めない。
きっと街の特性や気質は各々違う為、合う街はあるかもしれない。
しかし
今の街は
便利なのに何故か何年経っても心に虚しさを感じる

美味しい物、沢山のお店、利便性の良さ、完璧な接客、素敵な洋服屋さん、他何でも揃っているのに
昔の様に心が何かを感じる事が出来なくなった。

それはきっと

昔感じていた風の匂い、草花の匂い、木々の揺れる音、どこからか流れてくるお味噌汁の匂い、海の色、小鳥のさえずり、無数の星達の記憶が心の何処かにあるからかもしれない。

自然と共に生きる事を体が覚えている。

今はそれらが全く見えなくなり
沢山の車の音や騒音で日常は慌ただしくかき消され、体はいつもガチガチに緊張している。

まるでハイジが山から街に引っ越した時の様。
ユキちゃん!
山よ山〜!などは言わないけど。

私にはきっとやや田舎暮らしの方が合っているのだろう。と思う。

街に来てからはずっとそんな事を考えている。




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