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図書館の地理を歩く(その2):蔵書の構成を知る

 今回は、「図書館の地理を歩く」の第2回目の記事です。というのも、前回、図書の分類記号について調べたらとても興味深く、さらに詳しく調べてみたくなったためです。

 まず、図書の分類を決める日本十進分類法は、現在の最新版は第10版であることがわかりました。これまでに何度か構成の修正を重ねているということですね。また、この構成ごとに細かい分類を説明する資料が整理されていました。

 さらに、日本統計年鑑において、日本十進分類別の蔵書数が統計として掲載されていました。図書館の設置者別に分類されていたので、ここではそれをグラフにしたものを紹介します。

2015十進分類別蔵書数の割合

 設置者別にみた日本十進分類別蔵書数の割合(『令和2年日本統計年鑑』のデータにより作成。)※日本統計年鑑の出典は『出版年鑑』だそうです。

 これを見ると、都道府県立の図書館と市区町村立の図書館では、蔵書の構成に違いがあることが分かります。都道府県立の図書館は、「哲学」、「歴史」、「社会科学」の構成比が市区町村立の図書館より大きく、「文学」の構成比が小さいです。市区町村立の図書館は、「文学」の分類の図書が3割程度を占めるのに対して、都道府県立図書館では2割弱です。

 これは、利用者の属性を反映しているといえます。下のグラフは同じ資料に載っていた帯出者数の属性をグラフにしたものです。

帯出者の属性の違い

 設置者別にみた帯出者の属性の割合(『令和2年日本統計年鑑』のデータにより作成。)

 帯出者のうち、児童のみ分けて集計されていたのですが、これをみると、都道府県立の図書館は児童の利用が少ないです。さらにいえば、これはまだ推測ですが、都道府県立図書館の方が成人の利用者でもいわゆる「調べもの」をする人の利用が多いと考えられます。結果として、都道府県立図書館では楽しむための書籍としての「文学」の図書より、学習や調査研究に利用される「社会科学」等の分類が多くなるといえます。大学図書館も同じ傾向かもしれません。

 逆に、市町村立の図書館では家族連れなど「文学」を楽しむ人の利用が多いと考えられます。これは書店における販売冊数でも同じことがいえるかもしれませんね。

 ということで、「図書館の地理」を考える足がかりとして、分類別の冊数を概観しました。考えるほどに楽しくなってきます。今後は、分類記号についてさらに調べて、まずは「地理学」に関係する本の所蔵について、図書館内での位置(地理)を見ていきたいと思います。

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