鳥獣戯画6
6 紳士
夜の闇に乗じてそういうモノはやってくると言われがちだが。
みすぼらしい格好の紳士は、頭を深々と下げながら名刺を渡してくる。
事の始まりは、誰かが私の家のドア口をしつこくノックしてくるものだから、また隣の石系の人間が醤油を借りたいだとか、ラジオの音が少し大きいだとか言ってきたものかと思ったんだ。
『すみません。あたくしこういうモノです』名刺には死神だとか、ドラキュラだとかかわいらしい字体が踊っている。よくよく見てみれば、紳士はその顔にどくろのお面をかぶっている。実にかわいらしい。
「ええと、何の様でしょう?」私の問いに少し照れたような様子のそれは
『この辺りに魂の抜けかけている『ピー助』と言う名のロボットが来てはいないかい?とてもいい匂いがするから間違いないと思うんだ。この奥の方からぷんぷん匂うね。実はねそいつは、とてもとてもレアな種族なのさ。もちろん中の奴がね。私はそれをお迎えに来たんですよ』
「『peacekey』?ロボットねぇ・・・・」私の視線の先と共に、ちらりと奥の部屋をうかがうどくろのお面。
「正直、ロボットは此処にいるよ」目を輝かせるどくろ
「でもね魂がどうのこうのっていうのは、もちろん私にはわからない。そしてそれがあなたの言う『ピー助』なのか、私の言う『peacekey』なのかもよくわからないからね。もし私の言う『peacekey』だったとしたら奪われたり死なせたりしたら大変なことになってしまうもの」
その時するりと私とどくろの間を信雄が通り過ぎる。そのまま何も言わぬまま信雄が玄関から出ていく。あいつはいつだって風来坊だ。
『なにせ見せてくださいな。判定はこちらでやりますので。んん?なんだあなた最近何かと会ったかい?これはこれで私好みのいい香りだ』気味の悪いそれとの会話、私は気が乗らないので、はぁとか、まぁとか変な相槌で受け答えをしていたよ。
その瞬間。私の横をどくろがするりと通り過ぎてロボットのいた部屋の方へと進んでいく。
慌てて後を追いかけて奥の部屋に進むが、しかしそこに先ほどまで座っていたはずの埃まみれのロボットの姿はない。ほっとしながらも私ははてと思う。
どくろの面の姿もそこにはなく、ただ壁に一文。
『隠したって無駄なのさ。いつかまた来る』の文字
これは流石に大家に叱られてしまう。
ひたすらに困る金曜日
ひとまずストックがなくなりましたので これにて少しお休みいたします。 また書き貯まったら帰ってきます。 ぜひ他の物語も読んでもらえると嬉しいです。 よろしくお願いいたします。 わんわん