旅楽団 41


【41 空の香り。土の感触。目に浮かぶ声。】


オリ達が青空の兄弟達から細かく事情を聴いていた時に、大柄の飛脚が風に乗ってやって来たのさ。最初は凄くちっちゃいゴミのようなものが空に浮かんでいるように見えたんだけれどさ。それがこちらへだんだんと近づいてくるとね。それが大ぶりの蓮の葉だって言うのがわかったのさ。その蓮の葉は風にフワリフワリ舞って踊っている。
その姿がオリ達に見えるようになった頃オリ達はみんな口をあんぐりと開けてさ。みんな空を見ていたのさ。
飛脚の彼は蓮の葉の上でね、デンと座って蓮の葉をうまく操っている。
オリ達の前にフワリとおりてきてね。蓮の葉から降りると、飛脚は背が高くてブルーのマスクをつけていてさ。
「こ…。こ…。い…」こう話しかけるのさ。けれどもマスクを通した声はくぐもっていてね。何を言っているのかよくわからなくてさ。チリチさんもよくわからなかったみたいでね。
素の飛脚に向かって冷たく言い放ったのさ。
「ちょっと悪いんだけど、いまそれどころじゃなくて、大事な話をしている途中なのよ。それにあなたの言っている事ちっともわから無いし聞き取れないのよ」そうあしらわれた飛脚はね。スッとブルーのマスクを外してズボンに収めるとさ。手にはめていたグローブを取りながらさ。
「大変失礼しました。せっかちはどうもいけませんね」と、前置きをした後。
「こちらにクラリネットを使う子豚の方がいらっしゃると、お伺いして来たのですが」あたりを見渡すとね。オリの方を見てさ。
「違いますよね…。私の主人のトンビの方から、一本の書状を預かって来たのですが…」再びあたりを見渡すのさ。チリチさんはそこまで聞き終わると、鳥背をピンと伸ばしてね。
「それはそれは、すいませんこちらも取り込んでいたものですから」余所行きの声を出すのさ。サイレンのような音だけれどもね。
「実は今、子豚とは別行動をしていましてね。それでもここで待ち合わせをしているので、すぐに戻ってくると思います。あのマンゴーばねが次に跳ねるまでの時間に約束をしていますから」
「そうでしたか。それではお邪魔でなければここで一緒に待たせていただいてもよろしいですしょうか?」と、飛脚は丁寧に申し出て、チリチさんの対応を待ったのさ。
もちろんチリチさんはそれを断る理由もないからさ。
「ええ、まったくかまいませんよ」飛脚はそれを聞くなり、蓮の葉を丁寧にたたんで椅子を仕立てるとね。
「では失礼して」そう言ってそこへ腰かけたのさ。
オリ達はその様子を見て、青空デンデンムシに向き直るのさ。
「それで、その畜音符機っていうのは…………」そう言った…、時にさ…。
オリの目に映る世界はグルグルグルグルグルグルまわりまわるまわりだすの…さ。
まわりの人の声が遠くなったり、近くによって来たりしていてね…。
あたりの匂いだって、近くなったり、遠くに行ったりしているのさ…。
まるでブランコに乗っているようさ。
オリはよくわからないのさ…。
気持ちがどんどん悪くなっていくのんさ…。
吐き気が喉をせりあがっていくのがわかるのさ…。
でも、どうしたらいいのかわからないね…。
どうにもどうすることもできなくなっていくのさ…。
オリは自分の声すら聞こえなくなっていってね…。
耳に届く音はさ
「め・め・め・め」そんな風な繰り返していたのさ。
ほっぺに土の感触がしたのさ…。
土の香りがしたのさ…。
茶色い風景が見えるのさ…。
それが覚えている光景なのさ…。
まぶたは重たくなっていくのさ…。


ひとまずストックがなくなりましたので これにて少しお休みいたします。 また書き貯まったら帰ってきます。 ぜひ他の物語も読んでもらえると嬉しいです。 よろしくお願いいたします。 わんわん