旅楽団 39

【39 青空のもとの弁護会】


双子の兄弟たちの話をオリ達はフンフンと聞いていたのさ。
チリチさんは鬼のような顔をしていたんだけれどさ。
「電車の中でゆっくり話を聞こうかね?」
そう提案すると、首をブンブン振ってね。
「それは断固お断りよ!これ以上この[メロン殺し特選]を減らすわけにはいかないわよ!」そう言うなり、その場にどっかと座ってね。
ピクリとも動こうとしなかったのさ。
そう言うわけで、この場所が質問会の会場になったのさ。
それでオリ達は一番の疑問の銀鱈狐についての質問から始めたのさ。
「銀鱈狐は、いつの間にか僕らの家の周りをうろうろしていたんだ。僕らが家の前で縄跳びをして遊んでいるときにね『ようぅ、お前らの父ちゃんはいるかいぃ?ソロソロだって聞いてきたんだけれどねぇ?魂をいただきに来たのさぁ』そうやって急に声をかけてきたんだ。僕らのお父さんは、しましま病にかかっていてね。本当に魂を抜かれてしまうのじゃないかって…。それで妹がそんなの嫌だって言ったんだけど、銀鱈狐は『嫌とかではないんだよぉ。決まっている事なんだわぁ。俺が連れて行くといえばぁ、連れて行くことになっているんだわぁ』妹は嫌だ嫌だ嫌だって。僕は、なんか…。なんか手立てはないんですかって聞いてしまったんだ。すると銀鱈狐は、『まぁぁ、お前らがそこまで言うんだったらぁ、考えなくもないがなぁ…。くすくすぅ…』で、僕は何でもするって約束してしまったんだけど…。その奴の言う何でもって言うのがさ。古い水槽を一晩貸してくれってことだったんだ」涙をポロポロこぼしながらボテンは言う。
「お父ちゃんがね。お兄ちゃんも。貸したの。病気だったんだもの。水槽。しましまの。心配だったからなのー」よくわからない文脈で、サボは必死に訴えかける。
オリはボテンに先を促すのさ。
「それで、どうしたのさ?」
「それで、家の奥にしまってあった丸い水槽をこっそり持ち出したんだ。当然お父さんにも、お母さんにもその事は言わずにね。銀鱈狐に貸したんだ…。けれど…」
「けれど、どうしたのさ」
「けれど…。一晩だけって約束だったんだけどさ。銀鱈狐は、それっきり僕らの前に現れなかったんだ。お母さんに知られたらこっぴどく怒られてしまうと思った僕たちは、銀鱈狐を探そうと思って、[ちくわぶ]を2本持ち出して家を飛び出したんだ。それから街と言う街の電車の中に居ないかと、2人で探し回っていたんだ」
そこまで黙って聞いていたチリチさんが急に質問をするのさ。
「その水槽って言うのは、どんなもの?」青空デンデンムシの兄弟の兄のボテンは少し不思議そうな顔をして、ちょっと小首をひねるとさ。
「このくらいの大きさで、こんな形の…」と水槽の説明を始める。
「ウンウンなるほどね。それはさ底の部分に何かハンドルのようなものが付いていなかった?」
「あったよ!白くてね。ちっちゃいのなの!」サボが答える。
チリチさんは少し考えてね。
はっと何かに思い至ったのかね。
「タクト。きっとそれよ!」
オリはちっともわからないのさ。
「なになのさ?」
「それはね、畜音符機と言ってね。水槽の中に音符をためるものなのよ。あの人口スタジオ池を覚えてる?」
オリはウンウンうなずくのさ。
昭和さんと行ったあのラジオのスタジオの事だね。
「あの人口スタジオ池を小さくしたものよ。多分銀鱈狐は、この間の夜にそれを使ってあたしたちの楽器たちの会話を引き出してね。楽器たちの心。つまり音符たちを抜いて行ってしまうのよ。その音符を何に使うのかはわからないけれどね」
そう言ってチリチさんはうなりだして考え込んでしまったのさ。

オリはそれを聞いて不安になっていくのさ。
オリのバンジョーの音符は、今どこにあるのかっていうのを考えてしまってね。


ひとまずストックがなくなりましたので これにて少しお休みいたします。 また書き貯まったら帰ってきます。 ぜひ他の物語も読んでもらえると嬉しいです。 よろしくお願いいたします。 わんわん