旅楽団 45

最終楽章
『明後日でも明日でも今日でもなく今から』
【45 ようくお聞き。私たちは私たちの事実をこの読み物に込めて君たちに記し託すのだよ】


『グリヲ』について、僕とチリチさんはマイタケに言われるがまま調べたんだ。
「[ちくわぶ]を読み物にすると中に書いてあるはずだよ」
マイタケはその言葉を残すと、いつものようにソロバンを使ってどこかに行ってしまったんだ。
僕らは[ちくわぶ]の紐をほどく。
紐をほどくともれなく[ちくわぶ]の中に書かれている道をたどらなくてはいけなかったんだ。
意味の分からないところは、僕のヒントを使いつつね。
それでそこに
『ようくお聞き。私たちは私たちの事実をこの読み物に込めて君たちに記し託すのだよ』という一文がどの章にも書かれている。僕らが捜していた『病気の賞』も例外ではなくこの一文が頭に添えられていた。文字の読めない僕の代わりにチリチさんは、例のバックから花眼鏡を取り出して軽妙に読み摘んでいった。
チリチさんは『病気の章』を読み進める。
僕にわかるよう声に出して。
『病気の章』それに続いて病名がそれの後に列を作っている。
その中にひっそりとその名前は並んでいた。
『『グリヲ』この病について』
わかりやすく言うならば、この病気は生まれた土地とは違う土地の空気を子供が吸い続けていると、ラディッシュが喉の下のあたりに出てくる病気。
子供が慣れない環境に置かれるとこの病にかかることがある。
別名…ラディッシュ病
『『グリヲ』処置の方法』
ラディッシュが嫌いな燻製を口にさせて、その後土に首を出した状態で埋めておく。
するとラディッシュは嫌がって口から飛び出していく。
ラディッシュが飛び出してしまえば息を戻すことができる。
そこまでチリチさんは読み終えると、
「ふう」とため息をついたあと僕に向かって
「燻製ねぇ…。そんなもの見つけるのに何日かかる事やら…。そんな珍しいものが必要だなんて…」すごく切ない顔をして切り出すんだ。
だから僕は、
「燻製ってそんなに珍しいものだったの?ぶ」つい、大きな声を出してしまった。
「あるのよ!北魚の燻製なの!ちょっとずつのやつをしていたの!だからまだ残ってるの!」サボが大きな声で僕らに教えてくれる。
僕は事の顛末をチリチさんに説明する。
チリチさんはウンウン聞いていて、顔に笑顔を取り戻していった。
そこへ、ボテンが余計な一言を投げつけてくる。
「[ちくわぶ]と交換だぞ!」
チリチさんの形相がみるみる怒りに打ち震える。

チリチさんは
『君たち兄弟に足りないもの』というテーマで講習を始めてしまう。
僕はチリチさんに
「でもね、でもね。交換だったんだよ。ぶ」
そう説明したのだけれど、その言葉ではチリチさんの講習を止めることはできなかった。
それでしかないけど僕もその講習に参加することにしたんだ。
そしてその講習の肝心な主題『命とは』に差し掛かったところで、暴走ソロバンが戻って来たんだ。
マイタケのソロバンの後ろにはロープが縛られてる。
そのロープの端をモグラたちが握っている。
モグラたちは足にスケートをつけている。
土の上を見事に滑る。
ただし変なかけ後をかけながら…。
マイタケはスコップを探しに出たのだけれど、その途中でモグラの二人組に出会ったそうなんだよ。
マイタケが事情を説明すると、小さいモグラの方が
「大体わかりました。そう言う事なら早く行かなくてはいけませんね」そう言ってくれたのだそうだ。
それを聞いていたチリチさんは青空デンデンムシの兄弟たちに向き合うと、
「これよこれ!」
再び講習が始まりそうになったので、僕は
「タクトをつけようよ。ぶ」そう懇願したのさ。
もう時間もあまり残されていない。
[ドキュメント・イル]ののろしの色が青く変わっていく。


ひとまずストックがなくなりましたので これにて少しお休みいたします。 また書き貯まったら帰ってきます。 ぜひ他の物語も読んでもらえると嬉しいです。 よろしくお願いいたします。 わんわん