旅楽団 46

【46 森沢山な話】


[イマ・市]の森は僕が想像していたものよりずっと深いものだった。
タクトはチリチさんのバックに入れられて、ここまで運ばれてきたんだ。
道すがら、タクトの口には何度か北魚の燻製を放り込んでね。
マイタケとモグラたちは先に行ってタクトの入る穴を掘っていた。
僕らがそこについても、タクトを降ろして横にしているときも、彼らは手を休めることなく土を書き出している。
僕らは手伝おうと、穴に顔を近づける。
すると思った以上に深い穴がそこにあってね。
「調子に乗って掘りすぎた」と頭をかきながらモグラの二人は穴から出てきたんだ。

マイタケたちを先に行かした理由は他にもあってね
あの青空デンデンムシの兄弟に、畜音符機の水槽の場所を教えていたり、真看板の周りのネイクラたちを誘導したり。
ネイクラの誘導は、オリとチリチさんのコーラスであっという間に終わったんだけど。
あの畜音符機を青空デンデンムシの兄弟2人では運ぶことはできないだろうから、とんでもない仕事になるだろうと覚悟をしていたんだ。
そんな風に思っていると、飛脚のお兄さんが水槽のある場所の途中に居たんだよ。
それには本当に驚いたよ。
彼は手打ちそばを店先で食べていたんだ。ズルズル音を立ててね。
そこで僕らは彼に頼むことにしたんだけど。
そのお願いをしたのは、青空デンデンムシの兄弟でもなく僕でもなく、チリチさんがお願いしていたんだよ。
こんな風にね。
「勝手なお願いで申し訳ないのですが、彼らは私たちの大事な仲間なんです。できる事なら彼らの家まで運ぶのを手伝っていただけないでしょうか?」そして、あんなに大事にしていた[メロン殺し特選]を
「飲み掛けで申し訳ないのですが」そう言って、飛脚のお兄さんに渡したんだ。
飛脚のお兄さんも
「そこまで言われて断ってしまったら、トンビの親分のもとへ帰れませんよ。わかりました。私がしっかり送り届けますから、心配しないでくださいね」そう言って青空デンデンムシの兄弟と畜音符機を、蓮の葉っぱを広げると、その上に軽々積み込んでいく。
そしてあっという間に空高く飛び立っていく。
青空デンデンムシの兄弟の
「さよなら」「ありがとう」の声が青空に響き渡る。
飛脚のお兄さんは何だかかっこよかったよ。
チリチさんの[メロン殺し特選]を忘れたふりしておいて行ったんだもの。

僕らはそのやり取りを終えた後、マイタケ達の待つ[イマ・市]の黄色い街はずれにある森にやって来たんだ。
穴を掘り終えたマイタケ隊長は、号令をかけるように言う。
「では諸君、タクトを穴の中に降ろして」って、そんな風に明るくする気持ちが僕には何だかくみ取れた。
本当のお別れではないけれど、友達を穴の中に埋めるのは何だか悲しい気分になってくる。
なんだか涙があふれだす。
みんなの顔を見ても同じようだった。
明るくふるまっているマイタケだって半べそだ。
チリチさんも堪えられずにこぼしている。
「なんだお前ら辛気臭いなぁ。本当に死んでしまったわけではないんだぞ。お前らがそんな顔してたら、元気な奴だって倒れちまうよ」突然モグラのお父さんが言い出したのだ。
それにはモグラの子供が驚いていてね。
「すいません。な、何も知らないのに勝手なことを言って…」そう言いながら頭を下げる。
けれども、モグラのお父さんの言っていることはもっともだったし、心に刺さった。
チリチさんも、マイタケも同じ思いだったのだろう。背筋をピンとのばしてね。涙をぬぐったんだ。


ひとまずストックがなくなりましたので これにて少しお休みいたします。 また書き貯まったら帰ってきます。 ぜひ他の物語も読んでもらえると嬉しいです。 よろしくお願いいたします。 わんわん