九官鳥(2)

二十一日目(間抜けが居る風景)

「あたしの名前なんて言うのはお前さん方からしたら、まるっきりさっぱりどうでも良い事でしょうよ」あたしは完全に拒否をする。
そうはいっても実のところあたしは自分の名前をあまり気に行ってなかったのでね。
言いたくなかったのが本当のところだ。
子供の頃、この名前でよーくいじめられたもの。
それにしても人間というのは余計なことを根掘り葉掘りと聞いてくる。
あたしはそんなことを言うためにここにやって来たわけでも、飛んできたわけでも無いのにさ。
奴らは肝心な話を私がしていても、まるっきり聞きやしない。
こいつらはきまって私の話に「ほぉ」っと、相槌を一つ打つと、ニヤニヤしている。
挙句の果てにはどうでも良い事を聞きたがる。
この間なんかはさ、夜中に白いのを着た二人組がやって来たかと思うと(もちろんあたしは寝ていたのだけれども)あたしのいる鳥かごを杖だか棒だかでうちつけて。
「とりっ!おまえは、雄なのか雌なのかはたまた中間なのか?どんな手品で話をしているのか?どんなんだ!」顔を赤色に染め上げた白い服が聞いてくる。あたしはがっかりするのを通り越してあきれたよ。
「お前は本当にくだらなくて下品で、あきれますね」正直に思ったことを伝えると、赤色に染まっていたはずの顔が、みるみる黒くなっていってね。(顔の色を赤だか黄色だか黒だとか、変色動物の様で気味が悪かったよ)
「このやろう」とかって言葉をわめいてあたしの鳥かごは倒すは、手足をバタバタさせて暴れていたね。
それを見ていたもう一人は顔を青くして、暴れている黒顔を羽交い絞めにして大声で他の人間を呼んだのだ。
そのおかげで私は殺されなくて済んだのか?まぁ死にやしないけれどね。
きっと。
でもね、この一件以来あたしは、こいつらの事がさっぱり理解できずにいたよ。
こいつらは凶暴だしね。
本当にくだらない。
あたしはここに来るまで、この人間と言うのを知らなくてね。
仲間にこいつらの事を色々聞いていたのだけど、あまりと言うか、まったくもっていい話の一つも聞くことはなかったよ。
緑色の物知りの猫に聞いたら、
「あいつらは、自分が食べる以上の狩りをするのです。それをこいつらは蓄えって言葉でごまかす」
本当に賢い動物なのだろうか?
頭に花の咲いた鳥に聞いたら
「あやつらは、順番をつけるのが大好きで、仲間の間でも順番をつけたがる。そのためには同族殺しもやるのだよ」
本当に利口な生き物なのだろうか?
魚の子供に聞いたらさ
「あれらは、全部が自分のものだと思っているんだ。自然も生き物も。川の流れを変えて、森を荒らしてほかの星にまで手をだして。挙句の果てには毒をまく」
本当に知恵のある生命なのだろうか?
こいつらにはもれなくピンチが迫ってきている。
あたしはそれを教えにここにきている。
こいつらはあたしの言葉を聞くことはない。
何度も何度も訴えているのに。
それは私の他にも訴えていた事でしょう。
彼らの都合の悪い言葉は彼らの耳には届かない。
本当にこいつらはまがぬけている。

実は私の名前は[まぬけ]と言うのだけれどもね。
こいつらには絶対に内緒だ。




ひとまずストックがなくなりましたので これにて少しお休みいたします。 また書き貯まったら帰ってきます。 ぜひ他の物語も読んでもらえると嬉しいです。 よろしくお願いいたします。 わんわん