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英(はな)
2023年3月31日 16:52
3 ウサギ たまたま通りかかった広場には人だかりができていて。色々な国籍、人種の人たちが輪になって何かを見ているんだ。私も最初は遠巻きにその輪の向こうから、ぼんやり何かを眺めている。ただそれは、なかなかの迫力でつい前のめりになってしまう。集まった人々もそうであったろう、それはもう熱量がすごかった。蒸しあがっているものの湯気の量がすごい。そういう熱量もすごいのだ。ウサギたちは私たちが
2023年3月25日 21:59
2 KOONI アパートの階段を降りる。雨の日はいつも憂鬱で頭の毛がまとまらなくて。いらいらする思いだ。2階に住んでいる私は、玄関にまで下りてきて傘がないことに気が付く。『傘忘れたの?』玄関の前で外を見ている赤い小鬼が訪ねてくる。「いつものことだから」そう、いつも私は傘を忘れてしまう。いつだってそれに腹が立つ。そう言って部屋に取りに帰ろうとしたところ。『これ使っていいよ
2023年3月24日 12:11
第一章 最初の週末 1 龍の髭 勢いよくトマトジュースを飲んでいる。特段これが好きなわけではないのだけれども、ただ家にそれだけがあったので。自転車を川沿いのフェンスの横に留め、春の空気を胸いっぱいに吸いながら。あたりには田植え後の緑がゆらゆらと風に揺れている。ふと空を見上げると大きな雲がのんびり動いていく。その横を優雅に泳ぐ龍。銀のリボンテープのようなものが、