トラウマ治療で難しかった、グラウンディングというもの…
少し前のnoteで、SE(ソマティック・エクスペリエンス)というトラウマ治療の手法を受けたときのことを書きました。
とは言えこのSEも、初めから「おおお、なんか今日はいい働きかけができたな」と思えたわけではありません。
とくに私が最初に苦労していたのは「グラウンディング」というものでした。「グラウンディング」とは、私が理解できた範囲で言うと、「今、ここ」を感じるためのものです。
グラウンディングでは、足の裏が地面にしっかりとついている感覚を、ゆっくりゆっくり追っていきます。
SEを使う心理士でなくても、トラウマ治療を進める上で行うようです。ただ私がお世話になった臨床心理士の先生は、SEの中で行っていました。
※グラウンディングについては、臨床心理士のとねがわ先生のnoteに分かりやすく書いてありました。私の理解と言語能力では限界なので、参考になさってください。
1.SE(ソマティック・エクスペリエンス)でまとまったトラウマ記憶を扱うようになるまで
SEも最初から、気になる記憶や感覚を追ったわけではありません。
・じんわり感じる、
・身体の感覚を頭のてっぺんからつま先まで「スキャン」していく、
ということを、ひたすらやっていました。
私の場合は、徐々に気になる感覚を追うことで、トラウマとなっていた記憶を終わらせられる場面を出てきました。でも最初はとにかく不安でした。
私はどこに行こうとしているのか。
これ、家族に何て説明したらいいんだろう。
実際、トラウマ治療で何をやっているのかを、家族に説明できないことがほとんどでした。
あまりに初めての経験ばかりだったからです。
治療をしていた頃から数年だった今だからこそ、その頃を俯瞰して話せる面はあると思います。
2.多くのサバイバーが苦手な「グラウンディング」なるもの…
さて、本題のグラウンディング。
強引に足の裏をギュッと床に押し付けてはいけないのですよね。
身体のなかで「いい感じがするところ」に繋がりながら、ただ軽く足の裏を床に乗せます。そして
足と床が接触している感覚や、床をほんのり押している足のささやかな重みを感じていきます。
ところが足の裏がつくという感覚、カウンセリングルームにだって歩いてきたと言うのに、全くピンとこないんです。私は焦りました。
何をしているのか分からないながらに、ここを乗り越えるのが必要なステップなのは何となく分かったからです。
心理士の先生は言いました。
「グラウンディングは、サバイバーの皆さん苦手な人が多いです。みんな、すぐ逃げなきゃという構えて生きていたからかもしれませんね」
そうか…。
私だけじゃないのか…。
でもきっと、乗り越えた人たちもいるはず…。
よく分からないけど、やってみるか…。
3.1人の元患者が思う「ソマティック・エクスペリエンス(SE)のコツ
(グラウンディングをSEの範疇で語っていいのか、自信はありません。本当は小難しい分類が専門家の世界ではあるのかもしれませんが…)
SE(もしくはグラウンディング)を進めていくコツは、私の中では3つありました。(※個人の感想です)
①自分の思う『ゆっくり』の限界を超えて、ゆっくりゆっくり進めていくこと。
②頭で『こんな動きが正解なんじゃないか』と思った動きをして、身体自らが立ち上げる動きをつぶしてしまわないこと。
③身体が正解を知っていることを信じて、ゆったりと、ただ待つこと。
SEというのは、「意識にのぼっている私」よりもずっといろんなことを覚えて知恵を蓄えている「身体」を信頼して、頼れるようになる治療でもあるのかなと思います。
自我状態療法も、お互い交流もなく不具合を起こしていた小さな「自我状態」(自分の中にあるいろんなキャラクターみたいなもの)を繋げていきます。
自分の中で、自分と外の間で、トラウマによって分断していたものが再びつながっていく。
それがトラウマ治療なのかなとも思います。
4.グラウンディングを練習した成果は、治療後も…
始めたときには散々苦労したグラウンディングですが、トラウマ治療で身につけてあれこれの中では、今一番分かりやすい形で役に立っています。
noteの中でも何度か書いてきましたが、私は今でも「解離っぽい状態」になることがあります。
そうなるのは時々ですが、感覚や見え方が違ったり、ぼーっとしたりするのは不便だし、何よりも車の運転は怖いです。
そのため、なるべく早く普段の状態に戻るために使うのが「グラウンディング」なのです。じんわり足の裏を感じたり、ちょっと違うけど、ゆっくりと床や地面を足の裏全体で感じながら歩いたりします。
すると解離っぽい感覚はうすらいでいき、「今、ここ」の中にいるのを感じることができるようになります。
私の場合、トラウマ症状が完全に消えることはありせんでした。
ただ違うのは症状が出たときに、何が起きているのかわかること。無理なく「今、ここ」の感覚に戻るための工夫ができること。
トラウマって治ると言うよりは、付き合いやすくやる、扱いやすくなる、の方が感覚は近いなあ。
私はそう感じています。
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