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「答え合わせ」の旅㉙

ロイヤルな時間

Royal Delft MUSEUM。
デルフト焼きとは白と青が基調の王家御用達の陶器。

いらっしゃいませ
ロイヤールデルフトォ~♪
(ロイヤールブレッドォ~♪風に)

ここは特に予約不要で入れる施設。
お鼻が高くて品のあるおばあさまが受付でご対応。
お馴染みの「Hi~」で挨拶。残りはジェスチャーと単語のみで頑張っている。入場券をクレジットで購入し、きっとロッカーに荷物入れてねって言われてる。スマホは?と聞くとOKと許可される。
言葉はわからないが、もう観光施設で培った経験で程なく言いたいことはわかる。経験は言語をも超える。

受付の横の壁にこれも経験済みな音声ガイドの装置。
やったね音声ガイドあるんじゃん、と日の丸を見つけニコニコ。
チケットをもらうと同時に音声ガイドを渡されるのかと思ったら、ご婦人はチケットと紙のガイドしかくれない。
んん?あれれ。壁の音声ガイドの装置を指差し、これは?私Japaneseと言う。
ガイドに載ってるQRコードを指される。え?スマホで聞けるの?え?うそだぁ。絶対違う。半信半疑どころか自分で四字熟語つくっていいなら無信全疑。でもそれしか説明してくれない。

食い下がろうとしたが、コート置いてきなと言われる。だってくれないから、ガイド。ぶー。
置いてからまた来いってことかな?とコートと荷物を置いて聞きに戻ると、またQRコードを説明してくる。
え?だってさっき明らかに違うの出たぞ。そうロッカーにいるときにQRコードを開いていた。もう忘れちゃったけどこのmuseumのHPだかが日本語で表示できるだけだった気がする。
だってこの壁の装置絶対あのピッてかざして音声聞けるやつじゃん。なんでなんでぇ。
しかも音声ガイドのストラップを下げる用のフックもさっきロッカーで見たぞ。絶対あるでしょ。

なんでぇ?別料金とか?いやでもその料金しかなかったはず。こんなに食い下がってもくれないということは、もうよくわからないけど中に入るか。
諦めなければならないこともある、と誰かが言っていた。その格言に今回は従うか。

ドアを開けると上へ上がる階段やら2つ3つのドア。あれま、これはどこから進むのだ?
鮮やかな水色のポロシャツを来たおば様がこっちよ、とモニターを指し、でもまだ待ってねと言ってくれた(ようなことは全てジェスチャーで感じ取る)。
天井に吊られたモニターがなにかカウントダウンしている。なるほど、まずはシアタールームみたいなのでムービーを見る感じね。
優しいおば様だなぁ。と思って見るとおば様の首には音声ガイドがぶら下がってる。おい。やっぱあるやないか。おば様に音声ガイド指差し、私それ持ってないと伝える。
あーら、それはインフォメーションよ。もらってきなさい。と言われる。
……ですよね?お宅のスタッフがそれを貸してくださらないんですよ、私も困っちゃいましてね、と言いたい。それをOKという単語に全部詰め込んで、I try it!と戻った。諦めることはなにも生まない。

「おいおいばあさんよぉ、やっぱりガイダンスあるんやないか、さっきあれほどワシが言ったのにばあさん渡さんかったよなぁ、どないなっとんじゃ?あぁ?!」
と言うのは心に収めまして、いや言っても伝わんないから言えば良かった。
もっかい不格好なジェスチャーで耳で受話器持ってるような仕草と音声ガイド装置の壁をチョンチョン指差す。
ここで英語(らしきもの)をしゃべったか忘れた。

ばあさんはカウンターをガサゴソとし、何事もないように音声ガイドを渡してきた。
それそれ~!ありがとね、ばあちゃん!と言いたいがもう遅い。…私を怒らせましたね。言葉通じないなら心を通わせなきゃダメでしょーが。全く、近頃の高齢者は。
もちろん大人なのでThank Youと伝え、そそくさとシアタールームへ戻る。

親しみやすい水色ポロシャツおばちゃんに音声ガイドを上に掲げI get it!と笑顔で伝える。
笑顔でうんうん頷いてくれる。こちらのおばちゃんはなんて優しいことでしょう。笑顔くれるだけで嬉しいね。
ガイドが一瞬反応しなくてあの受付のババア…故障したの渡してきたか?と思ったが、おばちゃんに聞いて、もう一回ピッとやったらちゃんと作動した。ありがとう。

シアタールームは私と二人の子連れの4人家族でこじんまりと。
ムービーの内容はロイヤルデルフトの成り立ちについて。なんとそもそもは中国の陶磁器が東インド会社を通じて広まったらしい。だからか。なんだかこの陶器に落ち着く感覚があったのは。白と青の基調って日本でも見かけるもの。アジア由来なのね。
当時の明王朝の衰退によって、この陶磁器が出回らなくなった。そこで自前でつくろうと技術を磨いてできたらしい。
なんだか途中ウェッジウッドの説明も挟まれて、へー!と思った。私の薄い薄い記憶だと、あまり凝った形でなく踏襲したんだか、素材が廉価だったんだかでイギリスではその後ウェッジウッドとして広まったのだったような。。ウェッジウッドめ。と思った記憶だけある。
ウェッジウッドファンの皆様、うろ覚えなのでお気になさらず。
デルフト焼きはそのままこの文化を残そうと国が決め、その後は王家と密接な関係を続けていると。日本の伝統工芸のような感じね。なるほど。

その後は数々のデルフト焼きの展示品を見ていった。

レンブラントの夜警もデルフト焼きの陶版で

期待値が高かったが、期待通りの価値を出してくれる。なぜか遠い日本を感じる馴染みの良さ。美しい白と青。

工房の方にも足を伸ばす。
人はほぼいなく貸切状態。利発そうなおばあちゃんスタッフがいて、足を止めさせられた。陶器の型どりの流れを模型のようなもので見せてくれるらしい。
英語で話し掛けて来るが、「おーごめんね私英語ちょっとしかわからなくて(うそこけ、まったくだろ)。私日本人なの」と言うと、おばあちゃんは首を横に振り、「I don't speak Japanese.」と言ってくれた。
そりゃそうでしょうよぉ。と思ったが、なんだか嬉しかった。英語わからない→困ったね のアムステルダム方式とは違う。
日本語わからないって言い方って自分が日本語で説明できないって感じで、こっちを悪者にしてこない感じ。
さりげない温かさにちょっと嬉しくなる。

オー!とか頷きでリアクション高めにおばあちゃんの説明を聞く。ガラスの向こうで絵付けをしてる職人の説明。さっきのムービーでもあったが、絵付け段階では黒で描くらしい。焼き上がるとあの鮮やかなブルーになると。釉薬とか温度の話よね。朝ドラ「スカーレット」を見てたからわかるぜ。
間近で絵付けを見せてもらった。写真撮っていいか聞いたらどうぞどうぞと言われ、パチリ。

本物のロイヤルデルフトには、この陶器をひっくり返した底面にロイヤルデルフトのマークが描かれるのだそう。これね。

おばあちゃんにありがとう、と言って去る。受付を除きここの人は温かい。

さてさてお土産探し。
やはり本家はお高いのだが、それの廉価版と言いましょうか、大量生産ものも売っている。まぁ手は出せる価格。これにはやはり底にロイヤルマークは付与されない。

家族とかに花瓶やらなんやら買いまして、爆買い。
お土産はここに限る。

かんわいい~日本国旗持ってるよ
ミッフィーが日本でもいかに有名かを物語る

てな感じでロイヤルデルフトを去る。いやー良かった。
デルフトに来て良かったよぉと最後に一枚。この鮮やかな空もデルフトブルーと言いたいくらい。

駅へ戻る。
時の流れを忘れるようなのんびりした時間を過ごせた街、デルフト。まさにロイヤルな時間。

時刻は夕刻に近づく。
さぁ本日のメインイベント、あのオレンジ軍団を見なくてはならぬ。デン・ハーグ、デルフトと2都市も周り、最後にサッカーか。この日も詰め具合がすごすぎる。

一路ロッテルダムへ。