「答え合わせ」の旅㉒
緻密で無理難題な旅程の5日目
今日は大移動日。
アムステルダムからロッテルダムへ。
なんで初めての海外一人旅でこんなタフな旅にしてしまったのかと言うと、明日の夜サッカーを観に行く予定でして。
オランダ旅行を行くにあたって、オランダ代表戦に被る期間に設定。しかし試合が20:45開始となっている。
はて。日本と違いすぎる。遅すぎない?
私の知ってるサッカーは90分。ロスタイムやら前半終了の休憩など入れるとキックオフから約2時間後に終了なはず。これは国際ルールでもそうなはず。
つーことは22:45にスタジアムを出ることになる。
遅っ。危なすぎだろ。ってことにまず気付く。
治安のことを差し引いても、次なる懸念点は帰る手段あるの?って終電の有無。異国の終電は何時なのかとか調べるのってなかなか難しい。そもそも出歩くこと推奨されてないし。
場所はSTADION FEIJENOORDらしい。この表示を見て3秒。あぁフェイエノールトかと読めた私はやっぱり相当なオランダフリークだと思う。
かと言ってフェイエノールトがオランダのどこらへんのなのかは知らない。アムステルダムからどのくらいかかるのかと調べたらなんと1時間。危険フラグ。
もっと調査を進めるとどうもフェイエノールトはロッテルダムの駅に近いらしい。ということは。うむ。これは宿を移した方が良さそうだ、という結論に至る。
これに気付けたのが、オランダ旅行決済前。
アムステルダムに4泊、そしてロッテルダムに2泊で帰国する旅程に変更した。往復航空券+アムステルダム4泊は旅行会社サイトから。ロッテルダム2泊は自分でホテルサイトで予約した。
これもいま書いてみて振り返ると、自分の調査力と緻密な計画性にちょっと鳥肌立つレベル。この女やはりすごい。
そんなこんなでここから旅程組み立て。
この3月下旬に行きたかった理由のもう一つにKeukenhofがある。
キューケンホフ公園は世界最大の花の公園とも言われ、オランダの有名観光スポットの一つ。
ここが年がら年中空いてるってわけでなく、3月下旬から5月中旬の日本ならGWが終わったちょっと後までしか開園してない。
オランダのガイドブックに絶対かいてある場所。もしかしたら一生で最初で最後の訪問かもしれないのに、ここをすっ飛ばせる勇気はなかった。
てことでこの旅行日程と言うのは、キューケンホフ公園の今年の開催期間を調べ、サッカーオランダ代表戦も見れる日程で組んでたってわけだ。
キューケンホフ公園は少し郊外にあるため、何個かの駅及び今や因縁のスキポール空港からバスが出ている。空港発のバスで行った旅行記が多く、先人たちの知恵にあやかり、空港から行きたいと思っていた。
このスキポール空港、調べるとなんとアムステルダムとロッテルダムの中間ぐらいに位置していた。頭に豆電球ピン。本日のルートが完成した。
アムステルダム→スキポール空港→キューケンホフ公園→スキポール空港→ロッテルダム
移動日にキューケンホフ公園をぶち込む。よしこれだ。我ながら惚れ惚れする素晴らしい行程だ。
完璧な行程ではあるが実行するこちらは大変。いやどっちも同一人物なんだけど。
こんなハードな行程組みやがって。うまくいかなかったらどうしてくれんだ。企画側は好き勝手注文つけてくるとよく言うが、いつだって現場の人間は大変だ。
そんな5日目の本日はいそいそと起き、朝食会場に。
給仕係の彼の「You enjoy~」を最後に聞けて良かった。新しい街でもenjoyしてくるね。
甘いクロワッサン。固くて青臭いトマト。キュウリ、ハム、チーズの最高の組み合わせ。ダノンに似たヨーグルト。オレンジジュース。君たちとも今日でお別れだ。
部屋に戻り、めずらしくパッパと仕度を済ませ次々とバッグやスーツケースに放り込む。最後の部屋点検。チップを置いて。よし行くか。
フロントにカードキーを返却し、部屋番号を聞かれ答える。笑顔で見送られた。出発していいらしい。
相変わらずのノンバリアフリーの入口の階段。ひいこらとスーツケースとボストンバッグと手持ちのバッグを持ち上げて降りる。Museumpleinへ。
空港までのバス乗り場で1人待つ。時刻も8時前で日曜日。人通りも少ない。しばらく本当にバスが来るのか不安で時刻表と時刻を交互に見て過ごした。
するとバックパッカーのような荷物多めの男性が現れ、一緒に待ち始めた。バスがちゃんと来ますように、と私とその男2人分の願いを込めて待つ。
チャコールグレーのバスが現れ一安心。すでに買っていたチケットをかざし、乗る。よし順調だ。
言わなくてもいいんだが、この日に時代劇風に言うと「月のもの」が来た。
この旅中に来ることはわかっていたが、よりによってこの移動日。空気が読めないにもほどがある。
しかしここで来たことにより、帰国後アラームのように「あぁオランダからもう1ヶ月か…」と感慨深くなる機会をくれた。これはこれで良かったこと。
因縁のスキポール空港に到着。
よぉ。久々だな、と声をかけたい。しかし、もう君を恨んではいない。私はここまで難なく来れたのだ。成長しただろ。和解をしようじゃないか。
このあとスキポールと写真を撮り直す。到着直後の偽の笑顔とは大違い。次から次なる壁をよじよじと乗り越え、自信をつけた笑顔だった。
早めに出たおかげで9時ちょい前に着けた。キューケンホフ公園までのバスは11:00の便で予約している。なんて優等生なのだろう。
しかし、旅程の企画部からこの空港でもう一つ指令を出されていた。空港で大きい荷物を預けなければならないというミッション。
また難題を。本当に企画のやつらは現場の気持ちがわかっていない。
荷物預け場と言う場所があるらしい。イラストとstorageの文字を見つけそこへ向かう。地下にあるのでバカでかく無機質なエレベーターで下がる。
誰もいなくシーンとしてる。キョロキョロすると窓口を見つけた。
下を見てスマホをいじっている係員に「Hi」と声を掛けた。係員は少し驚いた顔をする。「○×△☆♯♭●□▲★※○×△☆♯♭●□▲★※」と言って笑ってきた。
相変わらずわからなくて「ん?」と首を傾げて返す。
通じないことが分かったのか、あーなんでもないよ、みたいなことを言われ、国を聞かれた。「I’m Japanese」おーそうかと頷かれる。
そこらへんで壊れかけの脳内翻訳機が遅れて作動する。
うわっ。さっきのって「君の足音静かすぎて気付かなかったよ、ハハッ」って話か!ポンコツ翻訳機め。
ボケ潰し。こうやって知識のないことが人を傷つけるんだ。愚か者。
「さっきのってこんなこと言ってたのね!そう私は忍者の国Japanから来たから足音ぐらい消せるのよっ!ウフフ」ってぐらいユーモアな返しをしてあげたい。けど無理だ。おじさんごめん。
「two」と言ってスーツケースとボストンバッグを差し出し、預けることができた。
どうだ企画部。ここまで順調に進めたぞ。
あとはキューケンホフ行きのバスに乗るだけ。バス乗り場の案内もあるし大丈夫そうだな。因縁のスキポールでもぶらぶらするか。
そろそろバス乗り場に向かうか。
通り道の催事スペースの男性店員に声を掛けられた。化粧品のブランドかな?日本でもよくある角質ジェルのようなサンプルをくれた。
Thank youと伝えたが、流れるような手際で左手の甲を人質にとられ捕まってしまった。彼の指がくるくると左手にジェルを馴染ませる。こんな見ず知らずの人の手を取るなんて、コロナが明けたんだなぁとしみじみ思う。
どこから来たの?と聞かれ、From Japanと返す。Oh,Japan!どこから?東京よ。東京!僕は大阪に行ったことがあるよ!
大阪に来てたとはいいやつじゃん。いい国だろ日本は。
角質を水で流され、右手と明るさが変わった。それでは、と去ろうとしたが、さぁ次は顔だ、と。おいおい顔は勘弁してくれ。これでも化粧してるんだ。
というかもう時間が怖い。私はこのバスを乗り逃したら死ぬ。I'll go Keukenhof!!と言って逃げた。多分発音が悪くて伝わってはいない。
なかなか遠い。やっと係員を見つけ、QRコードを見せる。しばらく待合場所で待ってるとバスがやってきた。
乗り込む。
さぁ花の楽園、キューケンホフへ。
ずっと見ていたガイドブックの場所。