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寄り添うたべもの

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ご飯のとても短いおはなし
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#小説

チキンナンバン(下)

チキンナンバン(下)

わいわいとにぎやかな店内に入っていく。
「おおっ、きたきた!珍しいやつ。」
「ひさしぶりぃ。」
「何年ぶりや〜。」
みんなが物珍しそうな顔をして自分を見ている。奥の方を見ると、昨日隣りにいたあの人がお酒を飲みながら手をふっていた。「仲良かったよな。」とみんなが気を遣ってくれたのか席を近くにしてくれた。少し安心した。
「よっ。」
「昨日ぶり。」
お互いにみんなの輪に入りすぎることもなく、だからといっ

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朝ごはん

朝ごはん

カーテンの外はもう明るい。
目覚ましが鳴っている。
起きていない脳みそのまま手を伸ばし、けたたましく鳴り響くそれを勢いよく叩いた。音は鳴り止んだが春になりたての朝はまだ肌寒く、故にしばらく布団の中でぬくもりを感じなくては起きることができない。もぞもぞと動く。しかしそんな自分でも起きなくてはいけない理由があるのだ。
「ごはん!」
そう、"ごはん"だ。
冷たい部屋の空気を吸い込むと一気に立ち上がった。

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