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料理と笑い

映画や演芸は先払い。飲食店は後払い。
微妙なニュアンスの違い。

落語の「時そば」や「鰻の幇間」が先払いだと成り立たないだろうし、演芸が後払いだと苦情で暴動が起きるかもしれない。
そうかと思えば、
先払いの飲食店は後から文句が言えないように、はっきりと同じものが出来上がる。
いわばハンバーガーなどのファストフード。

でも、演芸はファストフードと似ているようでどこか違う。
笑いというはっきりしたベクトルは決まっているが、その中身は未知数で、
演者次第でハンバーガーがチーズバーガーになったり、ピクルスが山盛り、パティ抜きなんてこともあり得る。

それを苦情ではなく笑い話にする客のユーモアも必要とも言える。
次郎系の食事マナーに近い。

もちろんそれは飲食ではありえない光景だが、
演芸はどんな結果であれ納得できるように最善を尽くすのが仕事で、だからこそそこに何が起こるかわからないという価値と変わらぬ根底を求めて観に来る人がいる。

人を喜ばせるという意味で、演芸も料理も似ていて、料理は出てきた瞬間がもっともわかりやすく感動するのではないだろうか。

芸人が出てきてお辞儀をする瞬間。
ここが想像力や期待のピーク。

そこからは食べてみて、聞いてみて各々がどう思うか。
期待通り、もしくはそれ以上か。
また食べたい、観たいと思わせられるか。

料理が運ばれてきた瞬間よりも感動して、かつ、もう一度同じ内容で食べたいと思えるか。
なんならこのシェフが作る料理は、なんだって食べたいと思えるか。

写真に収めて一度きりの感動で満足するのか、それとも、贔屓にして何度も足繁く通うようになるのか。

いわば先払いで闇鍋を食う状態。
もしかしたら、笑い茸が入っているかもしれない。
怖いもの見たさでつつきたくなる。
「誰だよこんなもの入れたの」
意外なものが入っていて、どっと笑いが起こることもありえる。
もしかしたら寄席というのはそんな場所かもしれない。

本当に料理と笑いはよく似ている。
料理も笑いも
食わず嫌いが損をする。

美味しいご飯を食べます。