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早朝、ホテルのロビーにて

ホテルの朝食を食べ終え、コーヒーを片手にロビーに点在しているソファへと腰を下ろす。

あまり天気のいい日ではないが、カーテンから透ける陽の光は白く、なんとなく神聖な、きれいなものであった。

それとは対象的なコーヒーの色合いとはあべこべにコーヒーもまた温かい。
いや、おそらくは外が寒いのだろう。

出不精を続けるホテル生活に、必要以上の上着はいらなかった。
季節感を失った私の格好はTシャツ一枚に、お気に入りのパンツ。
このままでも近くのコンビニに行ける程度の格好だ。

「観光でもすればいいではないか」
そんな誰かの言葉は耳のなかで揺れてはいるが、頭には入ってこない。
アーケードのある通りは、すでに閑古鳥が鳴いているのを知っているからだ。
人気のない、繁栄の墓地を歩いて、墓荒らしと思われるのは癪に障る。

何も知らずに、ただ外から差し込む朝に美しさを覚えているくらいが丁度いいのだ。



ふと意識が飛ぶ。
昨夜はあまり寝付けなかった。
未だにホテルの寝具に体が慣れないのだ。
偶然座ったソファの座り心地は良い。
こうした何気ないところに心地よさを覚えるのだから、私はなんて天邪鬼なのだろう。

もう一眠りでもしようか。

そう考えるもやらなければいけないことが色々と頭の中に浮かびがってくる。それらに紐でくくられてどんどん上へ上がっていく。

ソファに沈んでいた私の体も自然と腰を上げる。

美味しいご飯を食べます。