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短編『何も気にならなくなる薬』その75

「新幹線」

「ケータイ」

「成功報酬」

今回はこの3つ。
成功報酬と最近あまり聞かない言葉というよりか、身近な言葉ではないのかもしれない。
どことなく映画の中でしか聞かないような気がする。
そもそも失敗したら労力虚しく収入がゼロな訳だから、よっぽど稼げる仕事じゃないと割に合わないし、そもそもそんな言い回しをしないのかもしれない。

そんなわけで調べてみると

成功報酬は最終的な結果に基づいて計算される報酬で、成約件数や売上実績に対しての報酬が主な考え方。 

一方で成果報酬は最終的な結果に基づかない場合でも発生する報酬。どういうことかというと、アポイント設定数や開拓件数、架電数や宣伝数など、中間プロセスの件数や実績に応じて報酬が支払われるとのこと。

成果報酬は途中の頑張りも評価されるといった具合か。


「今回のターゲットGは新幹線での移動を利用することがわかった。そこで、Gのケータイをこちらのダミーとすり替えてもらいたい」
「その中に例のデータが」
「そうだ。なるべく早く頼みたい。感づかれてはならない。例のデータが世間に見られたら困る」
「失敗したら」
「今回は成功報酬だ。ターゲットの顔写真は資料のとおりだタバコを吸うだろうから喫煙所で待ち構えれば会えるだろう。良い結果を待っている」
「まさかの成功報酬か、まいったな、今月は厳しいのに」
「すみません、お兄さん」
「はい、何でしょう」
「電話を貸していただけませんかね」
「電話ですか?公衆電話があるでしょう」
「いやね、最近の新幹線は公衆電話が置いていないんだよ。ほら、あそこ張り紙があるだろう」
「あぁ、本当だ。ではどうぞお使いください」
「ありがとう。ではお借りするよ。……あぁ、ワシだがケータイを忘れてな、今、新幹線の中で優しい方にお借りしてな、済まないがもう古いのでな、適当に処分しといてくれ、うん、向こうで新しいのを買うからな、はいはい、でわまた……いやお兄さんありがとう。お陰で助かりました」
「いえ、大したことでは」
「お兄さんタバコは吸うかい?気に入るかどうか分からないが、一箱あげるよ」
「あ、有難うございます……変わった人だったな。さて、今回のターゲットはって、あっ!あの爺さんがターゲットだったのか!? 通話履歴は……ない、まさか」
『まもなくドアが閉まります。ご注意ください』
「孫に伝えときな。あの頃の可愛らしい写真はたしかに結婚式で使わせてもらうとな」
「してやられた、これじゃあ御祝儀で大赤字だ」

美味しいご飯を食べます。