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短編『何も気にならなくなる薬』その39

日々、何かしら刺激があるものだとばかり思っていたが、実際にはそこまで簡単じゃない。
最近、棚からぼた餅を待つような生活になっていることに気づく。
読書が好きだらかと言って、毎日読んでいるわけではない。
読みたいと思ったときに読む。
好きで読んでいるのだから、誰かに強要されることもない。
かといって、積極的にならないと物事は動かない。
ケチだと経験できないこともある。
同時に、なにかに夢中になっていると、物事に対して関心が薄れる。
「何処かにいいネタ落ちていないかな」
そう思いながら、道行く人を眺める。
外部にネタを求めているあたりからして、私の中のひらめきは今や空っぽなのだと情けなくなる。


お腹がぽっこりしてきた。
というのは、今に始まったことではない。
言うなれば、今まで目をそらしていただけなのだ。
毎年、それを気にしていながら、来年に繰り越す。
いわばこの贅肉は今までは後回しにしてきた私の惰性が積み重ねた利子だ。
なんの説得力もないが、早めに対処するに越したことはない。

他の人のお腹周りを気にして見てみる。
なんとなくこうなりたいというビジョンがある方が頑張れる気がするからだ。
どういう生活をしているのか想像してみる。
スラッとしてるとこう、姿勢がよく見えるし、大食いもしないだろうし、
なんかこう、印象がいい。

今の私の生活を考えてみると、主だった運動は通勤の徒歩くらいなものか。
移動中にできる呼吸法などを取り入れてみたが、どうだろう。
借金もちゃんと働かなきゃ返せないのだから、
この脂肪もまた、ちゃんとやらないと落ちないのは言うまでもないか。


仕事で東北の仙台へ、
旅先というのは否が応でも刺激というのが溢れている。と思うが、
旅の醍醐味はやはり食事か。
普段の生活の中で必要なのだから、食指が動くエネルギー量は計り知れない。
これだから痩せられないのか……
とはいえ、今だからこその経験なのだから食べる他ない。

これが、前借りというやつなのか。

美味しいご飯を食べます。