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梅雨明けの日にホタルが来た

目覚めて最初に「雲が高くなったなあ」と感じたその朝、どんどん気温が上がっていくのがわかった。朝食後、妻と草刈りを始めたもののじりじりと焼かれる音が聞こえてきそうで、早々に切り上げた。

昼前に電話した仕事先から「梅雨が明けたみたいですよ」と。外回りの仕事や買い物は、日が傾いてからでないと動き出せなかった。ひととおり済ませて帰ってきても、車から荷物を下ろすのは後回しにして室内に逃げ込む始末。

とはいうもののさすがは信州、日が落ちると涼しい風が入ってきた。そして夕食後、庭へ荷物を取りに出ると、タイヤの脇で何かがチカッと光ったように見えた。目をこらしてみると、ホタルだ。か細い青白い光がひとつ。頼りなさげで、ちょっとはかなく感じた。

玄関から声をかけると、妻も子どもも飛び出してきた。スマホで写真を撮ったり、他にもいないかと近くの用水路の方へ探しに歩いたり。

いったいどうしてこんなところまでやって来たのか…… 突然の暑さに調子が狂って迷い込んできたのか。あるいは自らの季節の終わりを悟り、遠出をしてみたのかもしれない。

風が吹いてきた。薄い雲から出た月が辺りを照らし、刈り残した草がサワサワと音を立てた。小さな光は見えづらくなり、葉っぱの下へ見え隠れして行った。ホタルを見つけた嬉しさのなかに、季節の移ろいをなんだか寂しく感じた夜だった。


今は8月末、暖まった海から水分をたっぷり吸い込んだ台風がゆっくりゆっくりやって来て、季節がもうひとコマ先へ進みそうですが、この夏は7月18日のホタルから始まったのでした。
暑い暑い夏でした。五年先の夏がもっと暑くならないように、できることは色々あるはず。秋風が吹き始めたらいつも車で行く所へ歩いてみたり、新しく買う前に家の中を見回してあるものでトライしたり、そもそも情報をちょっと絞ってなんでもかんでも欲しくならないようにしたり、いつも通りをいつも通りじゃなくしていきませんか?