虹、消えて、またかかる、柏原新道 (北アルプス爺ヶ岳)
(2020年9月、17年ぶりに冷池山荘へ向かったときのこと)
どんより小雨、つづら折りを登っていく。
いくつもの角を曲がって、また曲がって。
と、向きを変えた瞬間、視界の左端に光がっ。
「あっ、 虹だっ」
2020年9月17日、北アルプス柏原新道、
爺ケ岳を越え冷池山荘に向けて、午前6時前に登り始めてすぐに雨具を出さなきゃならなかった。どんより空の下、小雨に濡れながら、稜線までの半分くらいまで登った頃だった。
と、まもなく、虹は消えた。
冷池山荘の建て替えの年にバイトしてから、すっかり月日が経ってしまった。今日1日の休みに、山荘まで往復したいとやってきたけど、たどり着けるやろか?
(登山計画は11時間、こんなに長いの久しぶりなので)
そういえば、柏原新道について、
「種池山荘が見えてからが長いよね」
人から聞いたか、自分で言ったかすら忘れたが、そんな言葉があったような。
だいぶ登ったなあ。でもまだ、まだ、登りは続く。
徐々に太ももに疲れが溜まり、息もハアハア。
そしたら、また、虹が、かかった。
今度は、しばらくそのまま。虹の色を数えた。いち、にい、さん……
虹が出たのは雨のおかげ、小雨に濡れながら登ったからこそなのでしょうね。
雨もええやんか。
だんだん空が明るくなってきた。
稜線は晴れているかな。
[記録ノート]
この日、一人で道直しに向かうオーナーの柏原一正さんにも、また昔の仲間(BさんやHさん)にも会えたし、(Mさんは残念、お休みで下っていた)どっぷり工事に携わった冷池山荘建て替えの仕上がりを見れた。(柔和なKさんが教えてくれました)
剱を望める展望コーナーができていて、ガラス越しにゆったり山と対話できそうだった。
ただし、コロナ感染対策のため、そのコーナーの一角は使用済みシーツ置き場となっていた。
それにしても、冷池山荘でのもろもろの作業の経験が、ぼくのその後の小屋番・管理人の大きな礎です。そのような感謝の気持ちを、あらためて一正さんにお伝えできてよかった。
そして大切なこと、長い道のりを暗くなるまでに下りてこれたのは、柏原新道の登山道整備のおかげなり。
ドンッという大きい段差だと膝につらいな、と思うような箇所にちょっとした石でステップをこしらえてありました。
おかげで疲労の蓄積が和らげられました。
翌年の「山と溪谷2021年8月号」「[ルポ]爺ヶ岳・種池山荘&冷池山荘『やさしい道』を守る人」で柏原さんが登場します。