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読まず嫌いが世界〈文學〉を読んでみた

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『読まず嫌い。』(角川書店)の増補「解体」版。 筋金入りの読まず嫌いが体を張って世界の〈文學〉と、それを読むための「補助線」になってくれる本を読みます。 有料マガジン「文学理論ノ… もっと読む
書籍『読まず嫌い。』の本体価格と同価格(一括)で、同書の内容を再構成したもの+〈文學〉についての有… もっと詳しく
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2022年3月の記事一覧

岩波少年文庫を全部読む。(79)石井桃子さんが〈コケモモ〉と訳したのは何ベリー? アリソン・アトリー『西風のくれた鍵』

『西風のくれた鍵』(石井桃子+中川李枝子訳、岩波少年文庫)は、アリソン・アトリーの短篇集『幻のスパイス売り』(1944)所収の14篇から、表題作を含む6篇を訳し、そのうちの1篇を新たに表題にした作品集です。 シリーズものではない短篇集 アトリーの石井桃子+中川李枝子訳には、すでに長期シリーズ《グレイ・ラビット》ものの最初の4作を訳した『グレイ・ラビットのおはなし』(岩波少年文庫)がありました。 今回の本はシリーズものではなく、それぞれ独立した短篇です。いずれも民話的な設

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岩波少年文庫を全部読む。(77)人間の成長や改心は段階的なものではなく、一度懲りてもまた似たような逸脱をやらかしてしまう。 カルロ・コッローディ『ピノッキオの冒険』

カルロ・コッローディの『ピノッキオの冒険』(1883。杉浦明平訳、岩波少年文庫)はイタリアの国民文学で、ディズニーのヒットコンテンツの原作で、「人形文学」の巨星です。 大工のジェッペットは「だくだく」の八五郎か? 大工のアントニオ親方は、赤鼻なのでサクランボ親方と呼ばれています。ある日1本の材木が喋りはじめ、怖くなって同業者のおかゆじじいことジェッペットにその木切れを譲ると、木切れは激しく動いてジェッペットの向こう脛に当たります。 ここでおかしいのがジェッペットの貧乏エピ

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岩波少年文庫を全部読む。(76)ストイックな職人になる以前の、シズル感溢れるエンタテイナーとしての顔! メアリ・ノートン『空とぶベッドと魔法のほうき』

『空とぶベッドと魔法のほうき』(猪熊葉子訳、岩波少年文庫)は、メアリ・ノートンのデビュー作『魔法のベッド南の島へ』(1945)と、その続篇『魔法のベッド過去の国へ』(1947)の2部作を合本にした2in1です。 岩波少年文庫創刊70年記念復刊第2弾(2020年秋)の1冊でした。 復刊記念カヴァーはこちら。 魔法レスファンタジーの大家のデビュー作は魔法がテーマ! メアリ・ノートンといえば《小人の冒険》シリーズで、魔法がまったく出てこないファンタジーを書いた人です。 だ

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岩波少年文庫を全部読む。(75)最高。これは夢オチではない。クリスマスストーリーですらない。 エルンスト・テオドール・アマデウス・ホフマン『クルミわりとネズミの王さま』

ホフマンの『クルミわりとネズミの王様』(1816。上田真而子訳、岩波少年文庫)を改めて読み直してみて、思った以上に不可思議なお話だなと思いました。 出会いはチャイコフスキー チャイコフスキーのバレエ音楽のダイジェスト版である組曲は、子どものころに聴いていました。 クラシック音楽の音盤にはライナーノーツがあり、バレエや歌劇などの劇伴音楽のばあいは芝居の筋も要約してあります。だからそこで僕は(あくまでチャイコフスキーのバレエのですが)筋を知った気になっていました。 じっさい

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岩波少年文庫を全部読む。(74)ユダヤの与太郎、パラレルワールドに迷いこむ? アイザック・バシェヴィス・シンガー『まぬけなワルシャワ旅行』

シュレミールはユダヤの与太郎 8篇を収録した短篇集『まぬけなワルシャワ旅行』(1968。工藤幸雄訳、岩波少年文庫)の原題は、最後に収録された「シュレミールがワルシャワに行った話」でした。 シュレミールという名前は、日本ではアーデルベルト・フォン・シャミッソーのドタバタファンタジー『影をなくした男』(1814)の原題『ペーター・シュレミールの不思議な物語』で知られているかもしれません。 シャミッソーは東欧・中欧ユダヤの民話やジョークに登場する「ぼんくら」です。 世渡り下手

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