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岩波少年文庫を全部読む。(76)ストイックな職人になる以前の、シズル感溢れるエンタテイナーとしての顔! メアリ・ノートン『空とぶベッドと魔法のほうき』

『空とぶベッドと魔法のほうき』猪熊葉子訳、岩波少年文庫)は、メアリ・ノートンのデビュー作『魔法のベッド南の島へ』(1945)と、その続篇『魔法のベッド過去の国へ』(1947)の2部作を合本にした2in1です。

岩波少年文庫創刊70年記念復刊第2弾(2020年秋)の1冊でした。

復刊記念カヴァーはこちら。

魔法レスファンタジーの大家のデビュー作は魔法がテーマ!

メアリ・ノートンといえば《小人の冒険》シリーズで、魔法がまったく出てこないファンタジーを書いた人です。

だから、そのデビュー作と第2作が魔法そのものを主題にした作品であることに、意外の感を抱く人もいるかもしれません。

1作目『空とぶベッドと魔法のほうき』は、第2次世界大戦終結と前後して出版されました。最初に米国で出版されたそうです。英国本国では紙が足りなかったのかもしれません。

チャーミングなコメディセンス

後年の《小人の冒険》は全般に表面温度の低い、渋くて落ち着いた作風シリーズです。そこにはいぶし銀のようなユーモアのセンスもありました。
いっぽう、こちらの『空とぶベッドと魔法のほうき』にあるのは、

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