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岩波少年文庫を全部読む。(77)人間の成長や改心は段階的なものではなく、一度懲りてもまた似たような逸脱をやらかしてしまう。 カルロ・コッローディ『ピノッキオの冒険』

カルロ・コッローディ『ピノッキオの冒険』(1883。杉浦明平訳、岩波少年文庫)はイタリアの国民文学で、ディズニーのヒットコンテンツの原作で、「人形文学」の巨星です。

大工のジェッペットは「だくだく」の八五郎か?

大工のアントニオ親方は、赤鼻なのでサクランボ親方マストロ・チリェージャと呼ばれています。ある日1本の材木が喋りはじめ、怖くなって同業者のおかゆじじいポレンディーナことジェッペットにその木切れを譲ると、木切れは激しく動いてジェッペットの向こう脛に当たります。
ここでおかしいのがジェッペットの貧乏エピソード。

ジェッペットの家は階段の下から明かりのはいってくる地下室でした。〔…〕奥の壁かべには火のもえている小さなストーヴがありました。がその火は絵なのです。そして火のそばには、ぐつぐつと煮えたぎって、ほんものの煙そっくりの湯気をふいている鍋がひとつかいてありました。

カルロ・コッローディ『ピノッキオの冒険』(1883)
杉浦明平訳、岩波少年文庫、25頁。

落語「だくだく」(上方の「書割盗人ぬすと)か!


ジェッペットはその木切れで人形を彫り、ピノッキオと命名します。ピノッキオは悪戯好きで、すぐに街へと飛び出してしまいます。追いかけたジェッペットは逆に、児童虐待の冤罪で投獄されてしまうのです。

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