知念大地から見た、地を這う前衛・田中泯

知念大地から見た、地を這う前衛・田中泯

わたしの踊りはそれぞれをそれぞれにするが
彼の踊りは他者を束ねる。
わたしの踊りは空間をほどくが
彼の踊りは空間を支配・制圧する。

わたしの踊りは存在の全てをその瞬間において肯定するが
彼の踊りは選別する。
わたしの踊りは存在たちを誇り高くさせるが
彼の踊りは踏みにじる。

場で踊るのではなく、場を踊ると言った彼の踊りに路上の風は感じられない。
彼の踊りに、世界との本当の交わりを見ない。
わたしはわたしを脱ぎ世界を紹介するが
彼は肉を着て世界での経験を売りさばく。

わたしは唯存在を分かち合う踊手で
彼は説得力のある肉体と生活と、かつての経験と知性ある言葉により、他者に沈黙を強いる踊手だ。

彼は路上を、芸術の為に利用した。
わたしは路上を愛した。そこで闘い、そこに救われ、そこで学び、そこと在った。

手を上げれば風が吹く路上を彼は知らない。

かつて彼は「芸術」を否定しながら、芸術関係者や活動家たちに守られ、路上に立った。 彼は一度も《ひとり》で路上に立たなかった。
警察に捕まった時、彼を助けたのは見ず知らずの通行人ではなく、活動に関わる人だった。
目の前に痛んだ人間がきっと歩いていただろうが、彼は目の前を見なかった。
それについて痛まなかった。それと共に在らなかった。
だから彼に路上の風は吹かない。

彼は踊りのために、自然すら利用した。
わたしは舞を山にすがり追い出された。
何処にも居場所が無い時のみ、山がわたしを呼ぶようになった。
そうやってわたしは自然と友だちになった。

自然を利用する彼に、自然は微笑まない。

彼は自然を神にする。遠いものにし所有する。

わたしは自然そのものだ。
無防備だから笑われて、命だから小さくて 生きてるそのまま踊るのだ。
コンビニおにぎり美味しいぞ。たまに畑楽しいぞ。
あるがままは吹雪だよ。
生ぬるさだって踊りだよ。
彼より尖った風吹くぞ。

わたしは後ろ楯なき生命から
今、崇められ続ける彼の踊りとその取りまきを否定する。

「あなたの踊りは偽物だ」

踊りが無いからあなたは生きた。
誰もあなた程生きれないから
様々な花たちは萎んでしまった。

その権力性をあなたは脱がなかった。

今、あなたは探求者ではなく、要求者だ。
間違いなく、ダンサーでなく、支配者だ。

わたしはその先に行った。
わたしは生きざまを脱いだ。
わたしはわたしを脱いだ。
そこに踊りがあった。


踊りを見つけました。

人間が夢見た踊りです。

愛し
それぞれの眼に還ってゆく、そんな踊りです。




2023.9.4 知念大地





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