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『KAMARI 〜侍ウェスタン〜』第2話

■週刊少年マガジン原作大賞 参加作品■

第2話シナリオ

➎…反撃・逆転…➎ 【結章】

●荷物室
放り込まれたカマリとローズ、ギリアンの三人。
目覚めるローズ。
  ローズ「う……うん」
  カマリ「気がついたか?」
ビクッと怯えた顔になるローズ。
身体を固くする。
  ローズ「近寄らないでよ!」
  カマリ「えらい言われようだな
      仮にも命の恩人だろ?」
苦笑するカマリ。

その言葉にハッとし、ボソボソと喋り出すローズ。
  ローズ「東洋人の列車強盗の
      噂を聞いたとき……
      信じたくなかった」
顔を上げ、カマリをジッと見つめ、訴えるローズ。
  ローズ「だから編集長に
      無理を言ってこの
      列車に乗ったのに」
  カマリ「あんた新聞記者なのか?」
  ローズ「まだ駆け出しで大した仕事は……
      でも人種差別とか反対する記事を」

ローズの言葉を、笑い声で遮るカマリ。
  カマリ「はん! それでこの国の
      何かが1インチでも
      変わったのかい?」
  ローズ「そ、それは……」
  カマリ「リンカーンが奴隷を開放してもまだ」
      この国には差別や格差は普通にある
      奴隷契約同然の年季奉公も抜け道として
      残ってるじゃないか、知らんはずないだろ?」
  ローズ「うう…くぅう……ううう」
カマリの冷た言い方に、反論できず唇を噛み、涙ぐむローズ。
ソッポを向くカマリ、小さくつぶやく。
  カマリ「やれやれ……
      予定外の行動されちゃ
      コッチの予定も大幅変更だ」

●列車の中
車掌に状況報告する、列車強盗の手下たち。
  手下1「カマリ一味の追手や伏兵は
      周囲にいないようですぜ。
      警備隊の動きもねぇし」
ニヤニヤと笑う車掌。
   車掌「内部情報を流す役目はこれで最後にして──
      金持ってトンズラするつもりだったんだが
      これで罪も被せられるとはラッキー……フフフ」
  手下2「これでもう一回だけ
      列車強盗ができる……
      ですねお頭?」

拳銃を部下に手渡す車掌。
   車掌「ではあのマヌケな二人を
      そろそろ始末してこい。
      念のための人質の役目も
      もう終わったしな」
  手下1「その前にお頭ぁ、
      背は高いがなかなか
      美人ですし……」
いやらしい笑いを浮かべる部下。

真意を読み取った車掌、無表情で答える。
   車掌「おまえの好きにしろ
      ただし声が外に漏れないようにな」
  手下1「女には猿轡をかましますんで」
   車掌「違う違う! オマエの声が…だ」
ドッと下卑た笑いが起こる車内。

●貨物室
後ろ手に縛られたカマリ、首や肩をクキクキと動かす。
  ローズ「何やってるの? 肩が痛い?」
  カマリ「フン!」
気合を入れると手首からグキッという大きな音が聞こる。

ガッチリ締めてあったはずのロープが緩み、右手をスポっと抜いてしまうカマリ。
  ローズ「な…なに?
      どうやってロープを?」
  カマリ「手首の関節を外して
      縄を緩める忍びの技さ」
ゴキゴキと音を立てて、手首の関節を自分ではめ直すカマリ。
驚きの表情で、頬を紅潮させるローズ。
  ローズ「知っています!
      忍び───日本【ジャパン】の
      スパイのことですね?」
 カマリ…「それも大学で習ったのか?」
苦笑するカマリ。

いきなりローズの前で袴の紐を解き、脱ぎ出すカマリ。
  ローズ「え…ちょっとぉ! 何を──」
思わず赤面するローズ。
脱ぐと出現する、忍者装束。
袴の紐を裂くと中から細いロープが。
  カマリ「こいつを取り上げないとは、抜けてるな」
手にした杖をブンと振ると、中から切っ先両刃造りの剣が飛び出す。

仕込杖の刃を、ローズに向けるカマリ。
  ローズ「え?」
  カマリ「動くな……よ!」
高まる緊張。
焦るローズの顔アップ。
振り下ろされる仕込杖。
  ローズ「きゃぁああッ!」

思わず目を閉じるローズ。
一振りでローズの戒めを切り落としてしまうカマリ。
  ローズ「ええ?」
驚くローズを尻目に、ギリアンの縄を切ると、パンパンとその頬を殴るカマリ。
  カマリ「起きろ、キザ男」
 ギリアン「いってぇ〜!」
  カマリ「オテンバ娘はおとなしく
      このバカとここで待ってな───」
 ローズ…「なんですってぇ?」

ムッとするローズを無視して、列車の窓ガラスをぶち破って、窓の外に飛び出すカマリ。
  ローズ「キクジロー!」
慌ててローズが体を乗り出し窓の外を見ると、サルのようにヒョイヒョイと客車の屋根に登るカマリの後ろ姿。
  ローズ「速い…し軽い!」
その身のこなしに、驚嘆するローズ。

意を決した表情のローズ、仁王立ち。
スカートの裾を、ブーツに隠した小型ナイフで、膝のあたりでザクザクと切って破き始めるローズ。
  ローズ「待ってろと言われて
      ハイそうですかと答える
      しおらしい女じゃ……」
突然の行動に、戸惑うギリアン。たさ、ナマ足にちょっと嬉しそう。
 ギリアン「ちょ…ちょいとお嬢さん、いった何を!?」
 ローズ…「ないの……よッ!」

窓枠から外に身を乗り出し、屋根によじ登ろうとするローズ。
  ローズ「ちょっとアンタ!
      ボォ〜としてないで
      踏み台になりなさいよ」
 ギリアン「は……はいいぃ〜!」
ローズの剣幕に押されたギリアン、四つん這い時なる。
ギリアンの頭を踏みつけにして、列車の天井によじ登るローズ。
 ギリアン「ムギュ〜」

屋根にはうように登ったローズ、顔を上げるとその遥か先、車掌達が陣取る車両の上に、ピョンピョンと飛んで進むカマリ。
 ローズ…「待ってなさいよキクジロー…
      産婆の顎を蹴飛ばしてから
      ずっとオテンバやってんだから
      年季が違うのよ!」
決意のローズ、アップで宣言。

●列車の上
屋根の上のカマリ。
忍者装束の隠しポケットから取り出した鉤縄を、進行方向左側の窓を突き破る形で投げつけるカマリ。
ガシャン! とガラスを突き破り飛び込む鉤縄の鈎。
  手下1「なんだぁ!?」

鉤縄を軽く引っ張って、窓枠にフックする手応えを感じたカマリ、
 カマリ…「───おしッ」
進行方向右側にジャンプし、窓を突き破り飛び込むカマリ。
鉤縄に気を取られていた列車強盗グループ、反対側から飛び込んだカマリに驚く。
  手下1「キサマぁ〜!」
  手下2「うわっぷ!」
指に挟んだ煙玉三個を、投げつけるカマリ。

煙玉の爆発音と閃光、白煙!
視界が遮られる強盗団。
  カマリ「ヌンッ!」
カマリ、仕込杖で一瞬にして一味の銃を持った右腕を切断!
  手下3「うがぁあ…っらったぁあ〜!」
手首から先がなくなった自分の手を見て、絶叫する強盗団の男。
  カマリ「ハァアッ!」
棒手裏剣を同時に5本投げつけるカマリ。
車掌の部下の手に次々と刺さる棒手裏剣。

一瞬の出来事に、呆然とする車掌。
  車掌「クッ!」
慌てて、カマリから奪った拳銃を構える車掌。
だが、投げられた棒手裏剣で、飛ばされる車掌の拳銃。
  カマリ「ッっしゃあああ!」
仕込杖で斬りかかるカマリ!
響く銃声。
驚いた顔のカマリのアップ。
薄ら笑いの車掌アップ。
硝煙が流れる銃口アップ。

カメラが引くと、ローズから奪ったダブルデリンジャーの銃を構える車掌と、膝を着くカマリのロング・ショット。
腹部に弾丸を受けたカマリ。
ガクッと膝をつく。
  カマリ「ぬが……ああ」
   車掌「この銃はどうも引き金が
      硬くてイカンなぁ〜」
薄ら笑いの車掌。
   車掌「おかげで狙いが外れたな」

ダブルデリンジャーを、ペロリと舐める車掌。
   車掌「だが隠し持つには
      確かに良い銃……
      アンタもそう思うだろ?」
  カマリ「同意……だな
      どうもオレは英雄に
      なれないタイプらしい」
   車掌「リンカーン大統領は
      死んで英雄になったが……
      人生は生きて楽しんでこそ
      英雄になる価値がある
      ───そう思わないか?」
  カマリ「悔しいが、これまた同意だ」
  車掌「では……逝け!」

デリンジャーの残りの一発を撃とうとする車掌!
その手の甲に、どこからか飛んできた棒手裏剣、真横から刺さる。
   車掌「なッ……」
カマリ、そのスキに左手の義指の人差し指にガッと噛み付く。
首を振ると指がスポっと抜ける。
  カマリ「ムンガァッ!
強く義指を噛むと中から発射された弾丸、車掌の右肩に命中!
   車掌「バカ…な……指に弾丸が?」

義指をペッと吐き出すカマリ。
  カマリ「日本製の仕込み筒さ〜。
      一発しか撃てないがな」
にやりと笑うカマリ、自分の義指の手を顔の横に持ってきて、車掌に見せつける。

車掌の手の甲に刺さった棒手裏剣を、慎重に引きぬくカマリ。
  カマリ「ありがとよ、お嬢ちゃん」
視線を窓の方にずらすと、窓の外でカマリのロープに掴まり、棒手裏剣を投げた姿勢のローズ。
  ローズ「おおいに感謝しなさい」
どや顔のローズ、アップで。

■KAMARI/第2話 終わり■

第3話に続く

https://note.com/chinatsu_tkmr/n/n51e05db9725e

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