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『KAMARI 〜侍ウェスタン〜』第3話

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第3話シナリオ

❻…再逆転・大団円…❻ 【終章】

ローズを窓から抱きかかえて、車内にトンと下ろすカマリ。
顔には笑顔。
  カマリ「ムチャしやがって
      このオテンバ娘め……
      なんにも変わっちゃいねぇ」
  ローズ「三つ子の魂百までも……
      ってジャパンでも言うんでしょ?」
いたずらっぽく笑うローズ。

ローズに、車掌から抜いた棒手裏剣を渡すカマリ。
  カマリ「……いい腕だ。ずいぶんと稽古したのか?」
コクンとうなずくローズ。
  ローズ「これでアタシを救ってくれたんだもの」
      これを使いこなせればあなたに
      いつかまた会えるような気がしていて……」
庭の木に向かい、棒手裏剣を投げる稽古をする少女時代のローズの、回想カットを挿入。
樹の幹は、棒手裏剣を投げられ無数の穴が空き、ボロボロになった跡が大量に。

良い雰囲気のカマリとローズに対して、脇から口を挟む車掌。
皮肉な笑みを浮かべ、罵声を浴びせる。
   車掌「フフフ……列車強盗が
      何をナイト気取りしてる?
      オマエもじぶんとおなじ、
      薄汚い犯罪者だろうが!」
ローズの方にも罵声を浴びせる。
   車掌「そこの女! 新聞記者なのに
      列車強盗を見逃すのかな?
      裁判で証言してやるぜぇ〜」
車掌に毒づかれて、ハッと現実に戻るローズ。
  カマリ「良く動く口だ…な!」
カマリ、車掌の腹部に蹴りを入れ、黙らせる。

思い詰め、青ざめた表情のローズ、意を決したようにカマリに訴えかける。
  ローズ「──キクジローお願い、
      このまま自首して!」
  カマリ「ローズ……」

カマリにすがりついて、泣きながら訴えかけるローズ。
  ローズ「あなたは強盗はしても
      殺人は犯していない」
      たぶん何年か刑務所に
      行く事になるけれど……」
  カマリ「自首も刑務所もお断りだ」
ヘラヘラとした調子で言葉を遮り、ローズの真剣な願いを軽くかわしてしまうカマリ。
  ローズ「お願いキクジロー!」

涙ぐみカマリの背中にしがみつくローズ。
身長差もあり、奇妙なポーズになってしまう二人。
困った表情のカマリ。溜息をつきながら、
  カマリ「お嬢さんはこう
      言ってるんだが……
      オレはどうしたらいい?」
ローズの背後の人影に、声をかけるカマリ。
  ローズ「え?」

いつのまにか、そこにはギリアンが立っている。
ニヤニヤと笑みを浮かべるギリアン。OKポーズを指で作りながら、
 ギリアン「いいんじゃないか?
      刑務所の中もなかなか
      いい経験になるかもね〜
      ……なんならボクも
      いっしょに行こうか?」
 カマリ…「ぬかせ!
      男の同行人はいらん」
苦笑するカマリ。

頭をかきつつ、芝居がかったオーバーアクションになるギリアン。
 ギリアン「そういうわけにも
      いかないしなぁ〜
      ……うん、しょうがない、
      お嬢さんの涙を止めねば」
ギリアン、懐から紙片を取り出し、車掌に突きつける。

打って変わってキリッとした表情と態度のギリアン。
 ギリアン「ギリアン&カーク探偵社の
      マクレーン・ギリアンだ!」
   車掌「なっ!」
  ローズ「え?」
  カマリ「……」
ギョッとする車掌、ポカンとするローズ、無言のカマリ、三者三様の反応を、入れる。

政府の委任状のアップに被せて、冷静に話すギリアン。。
 ギリアン「連邦政府の要請により
      我が社は極秘裏に列車強盗の
      潜入調査を行なっていた───
      キサマの身柄は州政府に受け渡す
      弁護士は私選でも国選でも選べ」
 車掌……「まさか」
 ローズ…「えええ〜ッ!?」
口をポカンと開ける車掌。
目を丸くするローズ。
背を向けてクスクス笑い、肩が小刻みに震えるカマリ。

当時のアメリカの探偵社の位置づけを説明するナレーション挿入。ピンカートン探偵社と探偵のイメージカットに重ねて。
    N『リンカーン大統領暗殺計画を
      未然に防ぎ一躍有名人となった
      警備員のアラン・ピンカートンが、
      シカゴの弁護士エドワード・ラッカーと共に、
      北西警察事務所を設立したのが1850年代
      これが後にピンカートン探偵社となる』
    N『組織的な力が弱かったアメリカ司法省は
      ピンカートン探偵社を下請けとして利用し、
      最盛期には数百人規模の探偵を
      動員できるほどに探偵社は繁盛した
      これをまねて全米各地に私立探偵社が
      設立されたのである───』

力が抜け、その場にヘナヘナとへたり込むローズ。
  ローズ「そん…な……」
 ギリアン「列車強盗には常に
      内部から手引きをしている
      存在が疑われていた」
説明を始めるギリアン。
 ギリアン「だからウチの探偵社の
      メンバーを動員して
      ニセの強盗団を組織、
      内部呼応者が出るように
      この列車の情報ををわざと……」

説明するギリアンを無視して、へたりこんだローズの横にしゃがみこむカマリ。
  ローズ「キクジロー……」
  カマリ「あの時もキミは
      行動力がありすぎて
      周囲をヒヤヒヤさせた」
スッと手を差し出すカマリ。
  カマリ「だがそういう行動力、
      オレは嫌いじゃない」
 ギリアン「ボクも同意だよ〜」
軽い調子で横からチャチャを入れるギリアン。

まだ呆然とした表情のローズ。
  ローズ「あ…ああ……キクジ……
      やっぱりあなたは
      あたしのヒーローのままだわ」
ローズの耳元に、そっと囁くカマリ。
  カマリ「一ヶ月前に載った
      署名記事──市庁舎の
      不正入札の記事…な」
  ローズ「え?」
 カマリ…「細かい内部情報や背景まで
      よく調べてあっていい記事だったよ」

カマリの言葉に、ハッとなるローズ。
うれしさがこみ上げ、涙がにじむ。
  ローズ「読んで……くれたの?」
  カマリ「ローズ・ジェライザ……
      って名前を思い出してな
      まさかあのときの当人とは
      思わなかったがね」
にやりと笑うカマリ、自分の義指の手を顔の横に持ってきて、車掌に見せつけた時と同じポーズのカマリ。
だが、今度はうれしさが滲む表情。対称的表現
  ローズ「キクジロー!」

カマリに抱きつくローズ。
  ローズ「ゴメ…ゴメンナサイ
      あの時も今日もアタシ
      あなたの邪魔ばかり……」
  カマリ「そんなコトはないさローズ
      キミがあの時の棒手裏剣をずっと」
      持っていてくれたおかげでオレは
      助かったんだからな」
  ローズ「でも……またケガを」
  カマリ「もういいって」
  ローズ「でも…でも!」

なおも詫びを言おうとするローズに、そっと唇を重ねるカマリ。
驚きで言葉を失うローズ。
苦笑するギリアン、口笛を吹く。
 ギリアン「ヒュ〜♪」

離れる唇。
潤んだ目でカマリを見つめるローズ。
  ローズ「キクジロー……」
  カマリ「それより今回の事件、
      いい記事になるかな?」
ローズ、涙をグイッと袖で拭う。
  ローズ「もちろんッ!」
弾けるような笑顔のローズ(菊次郎と出会ったときの表情と重なる)のアップで物語は終わり。

■KAMARI/第1話 終わり■

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