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中国メーカーBYD、研究開発費を倍増、販売好調も苦情も殺到?

この記事は、今やスズキを抜き、世界トップ10に入る自動車会社、中国の新エネルギー車(NEV)専業メーカーであるBYDの最新情報、月刊BYD2024年3月号でです。これを読めば、BYDがどのような規模の会社で、どのような製品をラインナップし、その状況はどうなのか、日本ではあまり報じられないBYDの本質がつかめます。


BYDの2023年業績

BYDの2023年業績が発表されました。それによると、売上高は前年比40%ほど伸びて6000億元(約12兆円)に到達しています。

前年の2022年の売上高は、その前年比倍増近くを達成しているので、伸び率としては低減しましたが、40%増収は堅調さを示しています。

最終利益は同70%増の300億元(約6000億円)。これは市場予測に届かなかった、と、株売り情報としてとらえられました。

しかしやはり前年の2022年の最終利益は、その前年比4倍増以上を達成しており、その上での2023年の70%増益なので、しっかりとした成長と言えそうです。

研究開発費は2023年、400億元(約8000億円)近くに達しました。こちらは2年連続で倍増以上を記録しています。

トヨタの研究開発費が1兆円前後と考えると、BYDの研究開発費もその水準にだいぶ近づいてきました。

自動車会社らしくなる

BYDの売上高に占める自動車部門の比率が8割を超えました。「えっ、BYDって自動車以外のこともやっているの?」

はい、やっています。主にスマートフォンの代理製造です。「ファーウェイのスマホはうちが作っている」とBYDトップが発言していました。

2010年代後半、実はBYDの売上高は自動車分野が50%前後、スマホ製造などが50%前後というような比率であり、自動車会社とも、そうではないとも言える状況でした。

2022年になって自動車比率が急上昇、その傾向は2023年も続き、ようやく自動車会社らしくなってきましたが、依然2割ほどはスマホ製造に依存しています。

BYD各ブランドの最近の動き

超高級ブランド「仰望」、その初弾となったフルサイズSU PHEV「U8」が132日で5000台目の納車を達成しました。日本円にして2000万円を遥かに超える車です。

また、第二弾として用意されているスーパーBEV、日本円で3200万円以上となる「U9」をタイのモーターショーに出展しました。

高級PHEVブランド「方程豹」、今回は実際のオーナーが初弾「豹5」をどのように、具体的に活用しているのかの紹介に注力していました。

高級ブランド「DENZA」は、主力のミニバン「D9」の24年グレードを発表しました。また、SUV「N7」の新型の発表も行っています。

BYD本体ですが、王朝シリーズ、海洋シリーズいずれも、前月に続き各車に栄耀グレードを設定、実質的な値下げを断行し続けています。

ただ、この大幅な値下げ(約20~40万円)について、それ以前にBYD車を購入したオーナーからの苦情が殺到しています。

2024年3月販売の全体像

BYDの2024年3月販売は、約30万台です。これは2023年12月に記録した過去最高の月販に次ぐ多さになります。販売では値下げが奏功したようです。

海外への輸出も過去最高を記録、4万台近くに達しています。ただし、販売そのものが増加したため、販売に占める輸出の比率は前月と比べて急減。ただそれでも12%以上を記録しています。

2024年3月販売の約30万台は前年同月比43%増となっています。王朝・海洋の両シリーズが成長をけん引、一方で、各高級ブランドは伸び悩みました。

2024年1-3月の販売台数は60万台を超えました。これは前年同期比13%増です。ただし、中国国内販売は3%増程度にとどまり、輸出が150%以上、つまり2.5倍になって、この成長を支えています。

2024年3月販売におけるパワートレイン比率は、明確にBEVよりもBYDがDMと呼ぶPHEVの方が上回りました。

もともとBYDはDMの方に強みがあり、BEVよりもPHEVの方が人気になることが多かったですが、今回は中国でもBEV人気衰退の影響もあり、大きくPHEVに偏ったようです。

BYD主力の販売状況

2024年3月販売でのモデル別でみていくと、王朝シリーズのコンパクトセダン「秦」(BEV、PHEV双方あり)シリーズと、海洋シリーズのコンパクトSUV「宋PLUS」(BEV、PHEV双方あり)がそれぞれ4万台以上を販売、引き続き主力となっています。

ただし、「秦」も「宋」も前年同月比では伸び悩むか、マイナスになっていたりします。そもそもの母数が大きいので、これ以上の成長はなかなか厳しい面がありそうです。

王朝シリーズの「宋」シリーズも同月の販売台数で3.5万台を超えました。中型SU BEV「宋L」が人気のようです。

「宋」が王朝にも海洋にも存在するのは、もともと王朝・海洋はシリーズというよりは、販売店の系列を示すもので、海洋(旧eネット)系列の販売店で「宋PLUS」が販売され続けていた名残と思われます。

上述のように海洋「宋PLUS」は成長に伸び悩みが見られますが、王朝「宋」シリーズは前年同月比350%増と急増しています。

もともとBYDで言う「宋」は、ほぼほぼ海洋「宋PLUS」のことを指してきましたが、今回の王朝「宋」シリーズの急成長は、最近リリースされた王朝「宋L」の効果だと思われます。カニバリ的な側面もありそうです。

BYDでもBEV人気衰退顕著

BYDのBEVをけん引してきた、「イルカ(ドルフィン)」、「カモメ(シーガル)」という小型HB BEVも伸び悩んでいます。

「イルカ」は2万台を少し超える程度、「カモメ」は3.5万台弱です。やはり中国でもPHEVへの人気が高まっている証拠だと思われます。

「イルカ」に関しては、2ヶ月連続マイナス成長になっています。後からリリースされた「カモメ」に販売を持って行かれている状況とも言えます。

販売急増と苦情殺到「駆逐艦05」

最も特徴的だったのは、海洋シリーズのコンパクトセダンPHEV「駆逐艦05」です。前年同月比で実に600%以上も成長しています。

もともとは王朝シリーズの「秦」の姉妹版として誕生した「駆逐艦05」ですが、上述したBYDへの苦情殺到で、その中でも特に多くの苦情が寄せられているのが、この「駆逐艦05」です。

2022年グレードはエントリー12.18万元(約240万円)、2023年グレードはエントリー10.18万元(約200万円)だった「駆逐艦05」は、2024年に設定された栄耀グレードからエントリー7.98万元(約160万円)となりました。

そのおかげか、販売自体は急激に伸びましたが、2022年グレード、あるいは2023年グレードを購入した従来オーナーはたまったものではありません。これが「駆逐艦05」の苦情急増の要因になっています。

【月刊BYD】2024年3月号

以上のように、あまり日本では紹介されないデータを含めて、「月刊BYD」として毎月まとめています。

以上の各種データを見える化し、BYDのその月の主な動きや写真なども掲載しています。もちろん、各モデルの詳細な販売状況もグラフ化しています。

ご興味のある方は、マガジンを購入していただけますとPDFの「月刊BYD」をダウンロードしていただけます。

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