見出し画像

ももこ、28歳の夏(1)

電話機をガラステーブルに置いて、善ちゃんの電話番号をプッシュする。
「あ、俺だ、俺、吉田だよ。
なぁ、昨夜、久々に大学の同期と集まって、
石神井公園の居酒屋で飲んだんだよな?」
「そうだよ、飲み足らないって言って、石神井の駅までの間で、
3軒梯子して、それから四人で新宿のパラダイスで飲んでいただろう?」
「いや、新宿の記憶が全くないなぁ。
それもだけど、ベッドに女が寝ているんだ?」
「はぁ?いい女か?」
ベッドの夏掛けがずれてすらりとした足があらわになる。
「なぁ、お前知らないか?」
「そう言えば、後から来た女の子のグループと意気投合して、
鉄に紹介するとか何と言っていたが、俺は先に帰ったから、
その後はどうなったか知らねーよ。」
「ほうか、仕方がないなぁ。
起きたようなので、また電話するわ。」
そう言い、電話を切ると、おんなが伸びをしながら、
周りを見回しびっくりする。
「あなた!誰?」
「俺か、俺な、吉田っうモンだ。」
「どうして、ここにいるの?」
「ここは俺の部屋、お前こそ誰だ?」
「えっ?なんでパジャマ?」
下着を確認すると、ブラジャーをしていない事に気が付き
「スケベ!何かいやらしいことをしたんでしょう!」
「そんことするかいな。」
パジャマのズボンを下げてパンツを確認しながら、
「ほれ、パンツもはいてるし。」
玄関の方を見ると短い廊下に、女物の上着にスカートや
シャツやブラジャーが転がっているのに気が付き、
「お前が、勝手に脱いで、俺のパジャマの上を取ったくせに、
何を言うんじゃ。」
「いやらしい!」と言いながら、慌てて洋服やブラジャーを取って、
ベッドの方に逃げ、背を向けて着替え始める。
少し思い出してきたようで、
「ええか? 昨晩、新宿のパラダイスで飲んでいて、
送れと言って送って部屋の前まで来たら、
部屋の鍵がないって騒いで、じゃぁ、うちに泊まると
言ったのは自分の方じゃ。」
「いやらしい!あたし、帰る!」そう言ってももこは着替えて、
部屋を出て行く。
「大っ嫌い!」
「ほな、さいなら。」
アパートのドアをばたんと大きな音をさせて出て行く。

呆然としながらも、財布を確認して、お金もカードもある、
見たことが無い名刺が4枚あり、
そこには、雑誌記者 志摩ももこ の名前があった。


ももこと吉田の出会いは最悪だった。

・・・
これは創作で、主人公に似た名前の人もフィクションです。    
実在の人物や団体などとは関係ありません。 
あくまで、妄想ですので事実と誤認しないようにお願いいたします。
・・・

うめこさんの青春時代をももこさんと言う名前で、妄想していることは
内緒ですが、ももまろさんの公認を得ました。
つたない文章ですが、
ももこさんの青春時代の恋愛模様を書けたらよいなぁと思っています。

Previous:メイと呼ばせる女(1)→   Next:Coming Soon →

この記事が参加している募集

#一度は行きたいあの場所

51,981件

#この街がすき

43,597件

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?