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次のライフイベントはお葬式(結婚式で流したい曲はないのに葬式で流してほしい曲は明確な話)

生前整理、という言葉を目にしたとき、どんなことを思うだろうか。人生の総ざらいだとか、そんな言葉が浮かぶかもしれない。かくいう私も死期を見据えた人間が身辺整理をするイメージがある。

一般的に人間の人生にはライフステージがあるとされている。就学、就職、 結婚、出産、子育て、リタイアなどのライフイベントを経て、それぞれのステージで家族構成や家計などが変わるそうだ。
『変わるそうだ』なんて他人事のように書いているのは、ぶっちゃけマジで他人事だと思っているからだ。なんてったってアロマンティックアセクシャル(ざっくり言えば恋愛感情なし・人へ向ける性欲なしヒューマンのことである)の私は『就学』『就職』以降のライフステージは空白で、あとは『リタイア』しか残ってないからだ。もっと言うと今のところ結婚する予定がないアラサー社畜の私に残されたライフイベントは自分の葬式を出すだけだ。一般的な人間に比べ積まれたタスクがだいぶ少ない。やったぜ!

これはAceであることを自認してから気づいたことだが、自分の結婚式で流したい曲は思い浮かばないのに、自分の葬式で流したい曲はあるのだ。我ながら独身者であることにあまりにも向きすぎている。文末にYoutubeリンクを貼っておくので、興味があればちょっと聞いてみてほしい。般若心経でラップするというあまりにもやべ~ことをやっているので。EVISBEATS(およびAMIDA)は作る曲全部ツボなので生涯推すと決めている。(般若心経というとめちゃくちゃ小難しいイメージがあるかもしれないが、要は楽に生きるためのライフハックを記したものなので個人的には今世でのテーマだなと思っている)

人間はどうやったって死ぬ瞬間はひとりだ。これは結婚する・しないを度外視しても避けようがない。そして、結婚することがもはや絶望的な私は高い確率で孤独死だろう。親より先に急死する可能性だってある。アロマンティック・アセクシャルを自認したてほやほやだった私もこの問題に思い至った。
すなわち『孤独死した人間の遺品整理』である。
死後の事務処理を『誰がするか』というのは一旦さておいても、当時は典型的な超絶物持ちのオタク部屋に住んでいた。服飾が好きで、本が好きで、映画も漫画も音楽も好きだった。服は推定300着超、Blu-rayは100本以上、数えるのも面倒だったので把握していない本も漫画もCDもバカでかい棚に入りきらずベッド下収納やなんなら床に置いていた。1K10畳の部屋ではモノが入りきらず、1LDKの物件に引っ越した際に引っ越し業者から「えっ、単身者なんですか?」と言われたくらいだ。一応ギリギリ汚部屋ではなかったと思いたいが、独身の人間にしては相当物持ちだったのは確かだ。後々知ったことだが、引っ越した1LDK物件の他の入居者はおそらく全員がカップルか夫婦だった。

そんな状態だったオタクがアロマンティック・アセクシャルを自認した。疫病流行の余波で現実逃避としての鎮痛剤と化していたオタ活なんてできるはずもなく、虚無状態で自分の部屋を見渡した。組み木細工のごとく縦に横に棚に詰め込まれた本やDVD、読みかけで枕元や床に積まれた本、無理やり服を詰め込んで半開きになったクローゼット…。
「いや、例えばこの部屋で死んだとして、この状態から保険証書とか銀行印探し出して遺品整理しろってマジで殺意沸くよな???(死んでるけど)」
そう思った。

そんなわけで、暇を持て余したオタクは生前整理をすることにした。これはAceを自認して人生を見直すきっかけとなったのも大きい。ちなみに、名目は断捨離というより生前整理である。
オタクなのでもちろん収集したもののすべては大事で尊い。生半可なルールではコレクションを整理することなどできない。だから、『マイ墓に入れてほしいものだけを残す』という大きな条件を設けた。(現状残している量はどう考えても墓には入らないが、まあそこは目を瞑ってほしい。できることならウィッカーマンのお供え的に遺骸と燃やしてほしいと思っている。1973年版ウィッカーマンはいいぞ!)

これを基に整理を始めると、徐々に物が減り始め、興が乗ると勢いがつき爆速で片付き始めた。そして、モノより余白が多くなった自宅が『居心地がいい』と感じた。これは10年以上一人暮らしをしていて初めての経験で、私は視覚情報が多いとノイズに感じる性質だとこのあたりで判明した。
結果的に、部屋が余ったので1LDKの物件から7畳1Kに引っ越した。以前より家賃が安くなり、支出が減って貯金額がすこし増えた。思わぬ副産物だった。

片付け法に関しては検索すれば無限に出てくるので、適宜自分に合うものを実践していけばいいし知りたい人はさほどいないと思うが、メモとして私が整理をする上でやったことを以下に記しておく。
私の場合はわりと視覚情報が多いとノイズに感じる性質なのでなるべく隠す収納にすることと、リバウンドしないよう『やる理由』を明確にすることにした。

・床掃除したくないので、ロボット掃除機が稼働しやすい導線の部屋にする
・趣味モノはジャンル分けしたボックスに。なるべくそれに入りきらない量を持たないようにする(例:『Blu-ray・CD』『漫画』『小説』『映画パンフ・画集・写真集』の4種)
・洗濯物をしまうのが面倒なので、極力ハンガー収納にするため服は70着前後を目安にする
・引っ越し・処分しやすいよう、家具は基本的に折りたたみできるものに
・リモートワークする際気が散るので、視覚情報を極力なくす

目指すところは生活感のないオシャレな部屋だったが、実家の親や友人を部屋に招いた際、「独房みたい」「最終的に手りゅう弾で始末するタイプのスパイのセーフハウス」とボロクソ言われた。正直否定できなかった。なぜかって、省スペース化に重点をおいたためベッドも処分しまったので。
ベッドが与える生活感への影響がかなり大きいことを処分してから知った。ベッド、お前だったのか。人が生活してる感出してたのは。
とはいえ、リモートワーク主体になった今オンオフがつけやすい今の独房生活はかなり快適なのだ。決して強がりなどではなく、これはマジである。

ある程度部屋が片付くと、今度は情報の整理を始めることにした。
親より先に死んだ際に起こりがちな卒業文集に載ってる人間への訃報絨毯爆撃が恐ろしすぎるからだ。そこで、死んだときに知らせてほしい人間のリストを筆頭に、契約しているサブスク・クレジットカードや銀行の情報等をドキュメント化し、PCに明るくない親が見てもいいようプリントアウトして貴重品類とまとめた上で、親へ『ここに死んだときにいりそうなものをまとめてるから』と話をした。めっちゃラフに話した。なぜかって、順当にいけば先に亡くなるのは親なので、親にも生前整理をしてほしかったからだ。軽いテンションが功を奏したのか、母も普通に「そうねえ、私たちも生前整理しないと」と言ってくれた。まだ明確な実行には至っていないようだが、以前の私と負けず劣らず物の多い実家も牛歩ではあるが徐々に整理がはじまっている。

生前整理というと重く考えがちだとは思うが、いつか必ず来る終わりのために、やっておきたいことや、やらなければならないことは意外とたくさんある。少し調べてみてほしいが、人間が死んだあとにする手続きの煩雑さはなかなかすごい。生きるのも大変だが、死ぬのもまた大変だ。は~めちゃくちゃめんどくさいな人間…来世があったら絶対に人間だけは避けよう。今世での学びである。
このへんの話題はカレー沢薫先生の『ひとりでしにたい』を参照してほしい。面白い上にためになるのでお勧めだ。


超絶せっかちヒューマンはタスクが山積みだと焦ってめちゃくちゃ生き急いでしまうし、そもそも『これをやってないからまだ死ねない』に縛られるのがきついので、『タスクはほぼ終わってるしいつ死んでもまあいいか』と思えていた方が精神衛生上楽なのだ。

何事にもいつか終わりは来る。苦しみにも、悲しみにも、そして人生にも。だから、適度に気負わず生きて気負わず死にたい。それが実践できたなら、いつ終わったっていい感じの充足感を得て最後のライフイベントが開催できるだろう。…多分。
余談だが、般若心経は結構この思想ドンピシャなのだ。悟りに至るライフハックを276文字に凝縮してるとか超すごい。やばい。語彙力がないのは自覚してるから許してほしい。あと三蔵法師ありがとう。(一説によると般若心経は三蔵法師がインドから中国へ持ち帰った「大般若経」が原書とされており、漢語に訳したそれは600巻あったそうだ)
いや、600巻の特大巨編を276字に圧縮するとかすごすぎない????ド有能すぎないか誰がやったん???????????

そんな般若心経の教えを聞きながら、ま、気楽に生きて気楽に死のう、どうせ人生なんか死ぬまでの暇つぶしだし。悲観的でもなければ楽観的でもない、フラットな状態でそんな風に思っている。もちろんやりたきゃ人生に意味を見出したっていいし、意味を見出さないこともまた自由なのだ。

ではここで般若心経ラップを聞きながらお別れしましょう。
それでは。


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