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院内集会「子どもを自殺・不適切指導から守ろう!」(安全な生徒指導を考える会)へのメッセージ

 6月16日(金)、安全な生徒指導を考える会が衆議院第二議員会館で院内集会「子どもを自殺・不適切指導から守ろう!」を開催しました。

 TBS〈教員からの“不適切な指導”が原因で亡くなった遺族が集会で「再発防止のために十分な実態調査を」訴え〉などでも報じられています。教員の不適切な指導には、▼長時間の「身体的拘束」、▼複数の教員で取り囲む「圧迫」、▼事実誤認に基づく「えん罪型指導」などの複数の共通点があるという専門家の分析は、参考になります。

 先月東京で報告をした際に同会の関係者にもご参加いただき、院内集会へのメッセージをお願いされましたので、次のような内容のものを送りました。せっかくですのでこちらにも掲載しておきます。以前の投稿でも書きましたが、何か起きるたびに場当たり的な対応を繰り返すのではなく、子どもが生活したり学んだり遊んだりする施設等で起きる、あらゆる形態の身体的・精神的・心理的・性的暴力に対して統合的に対応するための方策を整備していくことが必要です。

「生徒指導提要」改訂版(2022年12月)で、教職員による不適切な指導/言動などが「部活動を含めた学校生活全体において、いかなる児童生徒に対しても決して許されない」と明記されたことは、学校における子どもへのマルトリートメント(不適切な関わり方)をなくしていくうえで大きな一歩です。「安全な生徒指導を考える会」のみなさんの粘り強い働きかけに、敬意を表します。
 けれども、これは第一歩にすぎません。児童福祉分野では、施設や里親家庭に措置された子どもに対する虐待(被措置児童等虐待)および「心身に有害な影響を及ぼす行為」が2008年12月の児童福祉法改正で禁じられ、被措置児童等虐待の通告義務等も規定されました。この改正の対象とされなかった保育所等における虐待や「不適切な保育」についても、最近このような事例が次々に明るみに出たことを受けて、こども家庭庁がガイドライン(2023年5月)を発出するとともに、児童福祉法のさらなる改正が検討されています。
 幼稚園を含む教育の現場からも子どもへのマルトリートメントをなくしていくために、たとえば学校教育法で虐待や「心身に有害な影響を及ぼす行為」を明確に禁止し、通告義務や調査義務についても規定するなどの法改正が急務です。こども家庭庁がリーダーシップを発揮し、文部科学省と連携して速やかに検討してもらいたいと思います。
 あらゆる大人によるマルトリートメントをなくしていくという観点からは、立憲民主党が先ごろ国会に提出した「地位利用第三者児童虐待防止法案」(児童虐待の防止等に関する法律の一部を改正する法律案)も検討に値するでしょう。党派の枠を超えて、すべての子どもをあらゆる形態の暴力から守るための法整備に取り組んでいただくことを期待します。
 もうひとつ強調しておきたいのは、「指導」にあたって子どもの意見や気持ちをしっかり受けとめることの重要性です。児童福祉の分野では子どもアドボケイト(意見表明等支援員)が制度化され、取り組みが始まっています。教育現場でも、子どもが自分の言い分や素直な気持ちを言えるようにするため、子どもが希望する場合には、子どもが信頼する人(子どもアドボケイトに限らず、保護者、他の教職員、友人なども含む)に立ち会ってもらって意見表明の支援を受けられるようにするべきでしょう。子どもの言い分や気持ちを的確に把握してこそ、適切な「指導」も可能になります。
 不適切な指導のために子どもが心身に深い傷を負ったり、最悪の場合には自殺したりすることは、誰も望んでいないはずです。こうした悲劇をなくすために、子どもに関わるさまざまな大人が協力していくことを望みます。

 安全な生徒指導を考える会では、5月29日、こども家庭庁と文部科学省に要望書も提出しています。毎日新聞〈教員による「不適切指導」の是正を 亡くなった生徒の遺族らが要望書〉などの記事とあわせてご参照ください。

 安全な生徒指導を考える会の要望書では、子どもの自殺の原因調査について「迅速性・中立性・客観性・透明性の保たれた第三者調査の体制を整備すること」も促されていますが、この点につき、〈国連・子どもの権利委員会、体罰事件について十分な調査を行なわなかったとしてジョージアの条約違反を認定〉も参照。子どもに対する暴力の事案については適切な専門家による迅速かつ実効的な調査が行なわれなければならず、それを怠った場合、そのこと自体が条約違反となる可能性があります。

 文部科学省や教育委員会の動きについて、弁護士ドットコムニュース〈先生の「不適切な指導」に「NO」を突きつけた文科省、自殺生徒の遺族から評価する声〉(渋井哲也)も参照。

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