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「子どもの権利の主流化」に関する国連事務総長のガイダンスノート(全訳)

「子どもの権利の主流化」に関する国連事務総長のガイダンスノートPDF)が、7月12日に事務総長執行委員会によって承認され、8月17日に公表されました。Child Rights Connect のサイトからダウンロードできます。

 ガイダンスノートのうち「指導原則」については先日の投稿に日本語訳を掲載しておきましたが、全訳も終わりましたので、公開します。以下よりダウンロードしてください。

 ガイダンスノートの構成は次のとおりです。

1.はじめに
2.指導原則
先日の投稿参照)
3.国連の行動の枠組み
 A.国連の対外的な政策、アドボカシーおよびプログラム
 -国連の対外的な政策および戦略的計画
 -アドボカシーおよびコミュニケーション
 -カントリープログラム
 -データ収集・管理
 -子どもの権利への影響の事前・事後評価
 -国連人権・アカウンタビリティ機構
 B.対内的/業務上の政策および実務
 -内部のアカウンタビリティ、デューディリジェンスおよび子どもの安全確保
 -子ども参加
 -子どもの権利のための予算
 -能力開発
略語

 本ガイダンスノートは国連のシステム/諸機関を対象とするものであり、国連が組織的にこのようなコミットメントを表明したことは、子どもの権利の保護・促進にとって大きな意味があります。当然、日本に事務所や代表を置いている国連機関にも、このガイダンスノートを踏まえた取り組みが求められます。

 また、本ガイダンスノートは各国の行政機関や自治体にとっても参考になる内容です。「指導原則」はもとより、とくに▽データ収集・管理、▽子どもの権利への影響の事前・事後評価、▽子ども参加の項目で書かれていることも参考にしながら、取り組みを進めていくことが必要です。

 なお、草案公開時にも指摘しておきましたが、指導原則の3(子どもは、固有の諸権利を持った特有の権利保有者である)で次のように指摘されていることの重要性をあらためて強調しておきたいと思います。この点には、8月20日~23日にかけてマニラ(フィリピン)で開催された第8回APPM(子どもの権利連合/ネットワーク・アジア太平洋パートナーシップ会合)でも、OHCHR(国連人権高等弁務官事務所)の担当者(オンライン参加)がとくに言及していました。

……関連するすべての国連の戦略、計画、文書および通信において、関連性があるたびに子どもへの明示的な言及が行なわれ、かつ子どもの固有の権利が明確な形で反映されるべきであって、「若者」('youth' or 'young people')など他の異なる集団に埋没させられるべきではない。……同様に、女子(girls)も女性と一括りにされることが多いものの、実際には特有の権利保有者集団として認識されるべきである。

 本ガイダンスノートの実施の調整は、ユニセフとOHCHRが、子どもに対する暴力に関する事務総長特別代表事務所および子どもと武力紛争に関する事務総長特別代表事務所の支援を得ながら、共同で進めていくことになっています。来年(2024年)3月の国連人権理事会第55会期に、本ガイダンスノートの実施に関する国連人権高等弁務官の報告書が提出され、討議が行なわれる予定です。

 本ガイダンスノートの作成に至る経緯について、これまでの投稿も参照。

-〈国連事務総長室が国連システムにおける「子どもの権利の主流化」への意欲を表明〉(2021年11月23日)
-〈国連「子どもの権利の主流化に関するガイダンスノート」作成に向けた動き〉(2022年9月19日)
-〈国連「子どもの権利の主流化に関するガイダンスノート」の草案が公開される〉(2023年2月22日)

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