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国連「子どもの権利の主流化に関するガイダンスノート」作成に向けた動き

 Facebookでとりいそぎ報告しておきましたが、9月8日、国連総会(第76会期)本会議で「国連ユース事務所(UN Youth Office)の設置」に関する決議A/RES/76/306)が無投票で採択されました。

 新たな事務所は、既存のユース担当国連事務総長特使事務所を統合する形で、国連事務局内に設置されます。国連システムにおける若者関連の問題の主流化と若者参加の進展が期待されます(なお、国連では通常、15~24歳の年齢層を若者と位置づけています)。事務所代表等の選任はこれからですが、35歳未満の適格者が望ましいと注文されています(決議パラ2)。なお、決議の採択に際しては日本政府代表も賛成演説を行ないました(英文原稿)。

 一方、国連システム全体における子どもの権利の主流化を進めていく手段のひとつとして2021年10月に構想がうちだされた「ガイダンスノート」の作成も進行中です(2021年11月23日投稿〈国連事務総長室が国連システムにおける「子どもの権利の主流化」への意欲を表明〉参照)。現在、市民社会向けのアンケート(回答期限:9月21日)と子ども向けアンケート(回答期限:9月30日)がオンラインで実施されています。

 ガイダンスノートの作成は、OHCHR(国連人権高等弁務官事務所)、ユニセフ(国連児童基金)、子どもに対する暴力に関する国連事務総長特別代表および子どもと武力紛争に関する国連事務総長特別代表が中心となって進められています。今後については、10月に素案を公表し、地域協議を経て12月に草案を公表したうえで、2023年に完成させることを目指しているとのことです。

 子ども向けアンケートのページで、子どもの権利の主流化とガイダンスノートの意義について簡潔に説明されているので、訳出しておきます(太字は原文ママ;以前の投稿で紹介したポジションペーパーのチャイルドフレンドリー版〔英語版PDF〕も参照)。

子どもの権利の主流化とは何? 国連の新しいガイダンスノートって? 私には何ができる?
● 子どもの権利の主流化とは、あらゆる行動・決定全体を通じて、すべての子どもの権利が考慮されるようになることです。これは、実際には次のようなことを意味します。
 〇 子どもたちが自分の権利を知り、行使し、享受できる。
 〇 子どもたちが、権利を持つ人々の特別な集団として、社会で尊重される。
 〇 子どもたちが、子どもであるという理由で認められる追加的な権利を持った、市民社会の主要なアクターとして尊重される。
 また、各国政府(国連加盟国)が、国連・子どもの権利条約(UNCRC)に基づいて行なった約束を実行に移していくということも意味します。
● 子どもの権利が主流化されなければ、子どもの権利の一部が無視されたり取り上げられたりするでしょう。とくに、子どもの人権擁護者として保護され、エンパワーされる権利を知らない子どもは少なくありません
● 優れた実践がいくつかあるとはいえ、それでも、子どもの権利と子ども参加は国連全体でまだまだ知られておらず、当たり前のものになって――つまり主流化されて――いません
(中略)
● 国連のガイダンスノートとは、国連が何かを知り、実行に移すようにするものです。国連として、このトピックにいっそうの注意を向け、より多くの時間とお金をかけることもできるようになります。そのおかげで、国連は各国が約束を果たすのを支援することもできるのです。
● 国連は、ガイダンスノート作成のためにあなたの助けを必要としています! あなたの経験、提案、勧告を知る必要があるのです!

 子ども向けアンケートの回答期限(9月30日)まであまり時間がありませんが、子どもの権利や国連の活動に関する認知度を測る設問がメインになっていますので(質問内容はこちらのPDFで把握できます)、関心のありそうな子が周囲にいれば声をかけてみてください。

 素案や草案が公表されれば、またその概要等をお知らせします。

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