『ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語』水溜りの上に立つ人、その鏡

■ Watching:『ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語』

- 私の『若草物語』

幼い頃夢中になって読んだ本を思い出すとき、『若草物語』は間違いなくその筆頭に挙げられる。兄弟姉妹のいなかった私は、それぞれに個性の異なる4人のお姉さんたちに、そして四姉妹の関係性に憧れた。

当時、好きだったキャラクターはベスだった。心優しく、音楽の才能に溢れ、人形を友達にしている、病弱な三女。

『ストーリー・オブ・マイライフ』を見た今考えるに、自分と一番性格が違うのがベスだ。一番共感し、憧れの気持ちを抱いたのはジョーだ。でも実際のところ、自分に一番似ているのはエイミーかもしれない。

- ジョーとエイミーの対称性、対照性

水溜りの上に立つ人とその鏡のようだと思った。一方が天に向かって伸びるとき、他方は同じ分だけ地に向かって伸びる。

ジョーが作家として自らお金を稼ごうとするとき、エイミーは絵の道を諦め資産家に嫁ごうとする。ジョーが自分に好意を寄せていたローリーに向き合おうとするとき、エイミーは自らは仄かな好意を寄せつつもそのような関係にはなり得ないと思われたローリーからの求婚を受ける。

2人はこんなにも似たもの同士だったのか。それでいて、2人が歩みを進めるのはほとんど真逆とも言える方向になっていくのか。

たしかに2人がよくいがみ合っていたという記憶は朧げながらあるものの、このように対称的であり、なおかつ対照的だとは認識していなかった。

- 「誰も書かないからそう思うのよ」

思わず泣いたシーンが1つある。ジョーとエイミーとメグが、ジョーの執筆中の作品(『若草物語』)について話すシーンだ。

ジョー:書き始めたけどたぶんダメ
エイミー:絶対に面白い
ジョー:どうかな
メグ:聞かせて
ジョー:私たちの話なの
エイミー:それで?
ジョー:家族の揉め事や幸せなんて誰が読みたい?つまらないことよ
エイミー:誰も書かないからそう思うのよ
ジョー:小説の素材として小さすぎる
エイミー:書いてこそその重要性に気づくのよ

ジョー:こんなに賢かった?
エイミー:姉さんは欠点ばかり探すから
ジョー:欠点ナシよね?

絵を道を志しながら、そこから降りた、降りざるを得なかったエイミー。世間から才能を認められ、女性でありながら作家として生計を立てようとするジョーに対して、複雑な思いが全くないはずはない。

エイミーがジョーの才能を正面から認め、信じている。エイミーが夢を諦め、しかしそれでも幸せを感じながら日々を過ごせているからこそ生まれた会話なのだろうと思うと、それは少し切なくてとてもあたたかい。

エイミーが言うからこそ意味のある言葉たちだと感じた。


幼い頃読んでいたのは簡略化してあるものであったので、改めて原作を読んでみたいと思った。

また、作者ルイーザ・メイ・オルコットのフェミニストとしての側面についても知識を深めたい。

(2022.02.17)

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