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24時間の船旅

小笠原への唯一交通手段

小笠原へは東京・竹芝港から出航する24時間の船、小笠原海運の「おがさわら丸」でしか行くことができない。

小笠原はその不便さがあるからこそ守られている自然があり、その不便さと時間をかけてもいとわないという人のみが来ることができる秘境の地なのである。

私は行きと帰りに一回ずつ乗ったが、やはりこの船旅が他の旅行とは違う特別感を醸し出す鍵なのだと感じた。

小笠原諸島全体では約30の島で成り立つ諸島だが、現在実際に人が生活しているのは父島と母島だけである。(激戦地で有名な硫黄島も有人島ではあるが、今は出入りが米軍と自衛隊に限られている)

おがさわら丸「おが丸」は東京と父島を結ぶ定期便で基本的に1週間に1便のペースで運航している。
母島へは父島から約2時間のははじま丸によってアクセスすることができる。

船旅の様子

4/9 私はおがさわら丸に乗るため、竹芝に到着した。
(実は前日にも竹芝に来たのだが: 島のコロナ対策として乗船代を払っていると無料でPCR検査を受けることができるので、前日に唾液検体を提出しに来て、無事陰性だった)

伊豆大島以来の竹芝客船ターミナルだったが、大島の時乗った小型ジェット船ではなく、目の前には青と赤のボーダーの煙突が特徴的な大型客船が待っていた。

カーゴで荷物の積み入れをしてるおが丸

24時間の船旅に少し緊張しながら、乗船した。各種等級の部屋が用意されていて、寝台式の個室やベッド付きの客室もあるが、私は1番安い二等和室(学生料金で片道2万円前後)。

二頭和室レディースルーム

一つの大きな部屋に布団を敷いて雑魚寝するような部屋で、ひとりずつ寝転がった時の頭の仕切りだけあるという感じ。廊下を隔てて部屋の反対側にはトイレとシャワーがある。
雑魚寝する部屋となると、女性の一人旅客は少し不安になるので、レディースルームが用意されている。コロナ対策で船全体の乗客数定員を半分に絞っている影響もあり、本来はひと部屋に18人用のブースがあるものの、レディースルームはmax5人の利用に留めていた。そのため、スペースを広々と使うことができたので、快適だった。
少し不便なのが一部屋にコンセントが1箇所、1番奥の壁際に4口しかないこと。幸いにも、行きの船では壁際の方が延長コードを貸してくださったので、遠慮なく使わせてもらった。

二等和室には窓がついてないので、外の景色を見るには甲板に出ないといけない。とりあえず部屋に荷物を置き甲板に出た。

出航

乗船後しばらくしてから出港の汽笛蒸気とともに、船が竹芝桟橋から離れていった。桟橋から手を振ってくれている人たちに手を振り、船がゆっくり東京から離れていくのを眺めていた。この景色を5ヶ月も見ないことになるとも知らず、レインボーブリッジ下を通り、お台場を通り、羽田空港と横浜を右手に見ながらだんだんと都会の景色が遠くなっていく。

遠ざかる東京の景色とかもめ

私が乗った時のおが丸がたまたま神奈川県久里浜にも寄港する便であったこともあり、久里浜まで甲板でぼーっとしながら東京湾クルーズを楽しんだ。

強制的なデジタルデトックス

いよいよ東京湾を出る頃には、ほとんど電波が届かなくなり、インターネットが使えなくなった(そもそも二等和室は電波が届きにくい)。
以前からデジタルデトックスを好んでやっていた私は特に不便だと思うこともなく、インターネットから離れる時間として本を読んだり、書き物をしたり、あらかじめダウンロードした映画を見て過ごした。
部屋にいるのが飽きると、また甲板に出て、周りに陸地のない広い海の遠い地平線を眺めに行ったり。

船内には売店やレストランもあり、食べるものには困らない。
時折、「〇〇島を通過しました」という案内が入り、伊豆諸島の島々を通過して南下していくのがわかる。
部屋にいると窓がないから、昼夜がわからなくなるため、日没の時間にサンセットを拝みに行ったり、夜は星を見に行ったり、たまに外に行って体内時計を整えた。

波に揺られておやすみなさい

夜10時頃に消灯のアナウンスが入り、部屋が暗くなり、就寝準備に入った。波も激しくなく、気持ちいい程度に波に揺られている感覚で眠りにつくのは極上の睡眠だった。

朝日を見るために5時代に起きるか迷いながら寝たものの、奇跡的にちょうど良い時間に目が覚め、甲板に出てみることに。相変わらず何もない広い海をただひたすら進む船。

厚い雲がかかっていたが、ちょうど水平線と雲の隙間から太陽が昇るのが見えた。

売店でパンとコーヒーを買って甲板で食べながら朝ごはんを済ませてから、またゴロゴロしに部屋に戻った。
同じ部屋にはやはり一人旅の女性客が多く、少しお話をして仲良くなることができた。ご主人を亡くされた後にひとり旅を満喫しているというおばあさんや、コロナで海外旅行に行けなくなった代わりに日本各地を旅するようになった方。お互い初小笠原旅行に胸を弾ませているという話をしながら、しばらく部屋で過ごした。

到着

竹芝出港から24時間弱が経ち、ようやく下船準備をする時間に。荷物整理が終わった後に甲板に出てみると久しぶりに陸地を見ることができた。海は東京湾の暗めの色とは違い、透き通るような深青色。

船が父島二見港に着岸すると、港は出迎えの人たちで賑わっていた。
私もボランティア施設の迎えのスタッフと合流した。少し湿った生暖かい気候に、色鮮やかな街並み。規模は違えど、第一印象はハワイ島のカイルアコナの街に似てるなと思った。

新鮮な気持ちで新天地に足を踏み入れ、私の島滞在がスタートしたのである。

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