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【第176回】【モデル地区紹介①】岡山県倉敷市真備町川辺地区

質問 モデル地区である岡山県倉敷市真備町川辺地区の計画づくりについて教えてください。

概要

①地区防災計画のモデル事業の歴史
②2023年度の地区防災計画学会のモデル地区
③岡山県倉敷市真備町川辺地区の地区防災計画づくり

解説

①地区防災計画のモデル事業の歴史

 地区防災計画のモデル事業としては、内閣府の地区防災計画モデル事業が先駆になります。
 2014年度から、内閣府は、地区防災計画制度を普及させるため、大学教員等の専門家をアドバイザーとして、地区防災計画づくりの対象地区に派遣する地区防災計画モデル事業を開始しており、2014~2023年度に合計87地区でモデル事業が実施されました。
 これらの事業では、大学教員等の外部資源(外部アドバイザー)の支援が、計画づくりの推進に極めて有効であることが明らかになりました。
 この事業は、大きな成果をあげましたが、行政による強いリード(行政主導型)や期間を1年に限定した支援は、住民の主体性や内発性、防災活動の継続性の点で課題がありました。地区防災計画づくりの最大の特徴は、住民を主体としたボトムアップ型の共助の仕組みで、また、継続的な防災活動を重視するからです。
 そこで、2020年度から地区防災計画学会のモデル事業が、民間資金を活用して、実施されました。
 地区防災計画学会の大学教員等の協力を得て、社会実装を重視した学術的な観点も踏まえて、地区防災計画づくりを進めることで、住民主体のボトムアップ型で、地域特性に配慮した継続的な防災活動が内発的に実施されるように配慮しました。
 その結果、2020~2023年度の4年間に全国39地区でモデル事業が実施されました。

②2023年度の地区防災計画学会のモデル地区

 地区防災計画学会の2023年度のモデル地区は6地区あります。
 具体的には、岡山県倉敷市真備町川辺地区(担当教員 磯打千雅子香川大学准教授)、神奈川県横須賀市平成町マンションソフィアステイシア(担当教員 金思穎専修大学兼任講師)、福井県南越前町赤萩地区及び大桐地区(担当教員 酒井明子福井大学名誉教授)、三重県南牟婁郡紀宝町鮒田地区(担当教員 田中耕司大阪工業大学特定研究員・竹之内健介香川大学准教授)、長野県下伊那郡泰阜村三耕地地区(担当教員 田中隆文名古屋大学准教授・山本賢一郎日本大学非常勤講師)、三重県度会郡大紀町錦地区(中世古二生 岐阜県立看護大学非常勤講師)です。

③岡山県倉敷市真備町川辺地区の地区防災計画づくり

 本稿では、岡山県倉敷市真備町川辺地区について紹介します。当該地区は2020年度から磯打千雅子香川大学准教授によって、継続して支援が続けられている地区です。川辺地区は、2019年度内閣府モデル地区でもありました。
 人口約4,000人、世帯数約1,700世帯、高齢化率約27%のこの地区は、過去にも大きな水害の経験があり、2018年西日本豪雨でも地区の大半が浸水し、7名が犠牲になりました。被災から時間が経過した現在は、地域外で避難生活をしていた住民の多くが地域に戻り、まちづくり推進協議会等の地縁的な活動が再開しています。
 想定災害は、高梁川・小田川氾濫による水害や南海トラフ地震であり、香川大学の教員や学生による西日本豪雨からの復興プロセスの中での地区防災計画づくりに関する継続的な支援が実施されています。
 特に、住民有志の組織「川辺みらいミーティング実行委員会」、まちづくり推進協議会,川辺復興プロジェクト・あるく、倉敷市防災危機管理室,国土交通省小田川緊急対策河川事務所,社会福祉協議会、医療・福祉事業者,NGO,NPO等が参画して、計画づくりを進めているのが特徴です。
 川辺地区の計画骨子づくりでは、分散避難、安否確認対策、避難判断支援等に注力しており、防災マップ、黄色いタスキを用いた安否確認訓練の成果を踏まえて、連絡体制の構築が推進されているほか、地区防災計画のための文書化が検討されています。

文献
・西澤雅道・金思穎,2024,「地区防災計画制度施行10年を迎えて―23年度モデル地区の状況―」『地区防災計画学会シンポジウム(第10回大会)基礎資料』.
・磯打千雅子,2022,「地区防災計画における文書化の意義に関する考察」『地区防災計画学会誌』(23).

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