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【第65回】揺れが小さくても大津波発生【明治三陸津波】

質問 地震が小さくても大津波が発生するんですか。

概要

 ①明治三陸津波では揺れが小さくても大津波が発生
 ②地震が小さいと避難しなかった住民が被害
 ③チリ地震では揺れがない中で遠地津波が襲来

解説

①明治三陸津波では揺れが小さくても大津波が発生

 2011年の東日本大震災では、最大震度7の大地震が発生した後、大津波が発生し、大きな被害を出しました。そのため、大地震が発生したら、それをスイッチ(避難の契機)として避難を考えている方も多いようです。
 しかし、揺れが小さくても大津波が発生する場合があります。以下、三陸地方を襲った大津波を例に整理します。
 地震が小さいにもかかわらず、大津波が発生した例としては、例えば、三陸地方で、震度2~3程度の地震によって津波が発生し、最大30m以上の高さにまで津波が駆け上り、約2万2,000人の死者・行方不明者を出した1896年6月15日の明治三陸津波があります。
 震度だけ比較すると、明治三陸津波の契機となった地震は、東日本大震災の場合よりも、ずっと小さな地震でしたが、大津波が発生しました。これは、明治三陸津波の場合は、陸から200kmも離れた深海で地震が起きたため、地上では大きな揺れにならなかったためです。

②地震が小さいと避難しなかった住民が被害

 この明治三陸津波の際には、地震が小さかったので、住民はいつものことだと思って気にしませんでした。そのため、避難しなかった多くの住民が、津波に巻き込まれて亡くなりました。
 通常、大津波発生の場合は、大きな揺れが影響を与えています。しかし、明治三陸津波では、稀に見られる「津波地震」という特殊なメカニズムによって、プレートの比較的柔らかい部分が、ゆっくり大きく動き、大きな揺れがないのに、大津波が発生しました。なお、このような場合は、揺れが小さいため、迅速な津波警報を出すことは難しいのです。

③チリ地震では揺れがない中で遠地津波が襲来

 津波発生のメカニズムは多様で、十分に解明されていない部分もあり、その前兆も多様です。
 1960年5月23日のチリ地震のように、チリでの地震によって発生した津波が、22時間半後に日本に到達し、三陸海岸で8mを超える大津波となりました。そして、日本では139名が亡くなりました。このような強い振動が感じられず、到達まで長い時間がかかる「遠地津波」は、揺れがないのに突然津波がくるという印象になるでしょう。
 小さい地震だから津波は来ないという思い込みが、多くの人の命を奪った明治三陸津波、遠くの地震だから津波の来襲を予想していなかったチリ地震での津波等の教訓を踏まえ、地震の大小や発生場所に関係なく、必要があるときは早期に避難する生活習慣・生活様式を形成することが重要です。
 なお、1933年の昭和三陸地震では、最大震度は震度5でしたが、30m近い大津波が襲来し、3000人以上の死者・行方不明者を出しました。

文献
・内閣府,2005,「災害教訓の継承に関する専門調査会報告書 1896 明治三陸地震津波」.

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