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【第99回】山梨県西桂町下暮地地区の地区防災計画づくり

質問 山梨県西桂町下暮地地区の地区防災計画づくりについて教えてください。

概要

 ①西桂町下暮地区の特徴
 ②地区の地域活動
 ③特徴のある地区防災計画づくり

解説

①西桂町下暮地区の特徴

 山梨県都留郡西桂町にある下暮地地区は、約330世帯、人口約900人の地区で、2020~2022年度の地区防災計画モデル事業のモデル地区であり、担当教員の鈴木猛康山梨大学名誉教授が、5年前から支援されています。
 一級河川である柄杓流川(しゃくながれがわ)上流の扇状地に形成された集落で、土砂災害警戒区域に指定されている地域が多く、一部は土砂災害特別警戒区域に指定されています。
 1966年9月の台風26号では、豪雨により、柄杓流川等が増水したほか、土砂災害が発生し、床下・床上浸水10棟の被害が発生しました。また、1991年8月の台風12号では、土砂が崩れ、床上浸水3棟、床下浸水19棟の被害が出ました。そのため、住民は、当該地区の地形に起因する土砂災害や水害を懸念してきました。

②地区の地域活動

 下暮地地区には、育成会、神輿(しんよ)会、寿学級、鈴の音会(高齢者福祉のための会)、町をきれいにする会、川浚い、秋葉講(火防で有名な静岡県袋井市の秋葉大権現への参拝組織)、春・秋例大会等の地域活動が実施されています。
 しかし、近年は、新興住宅に移住してきた住民が、町外へ通勤していることもあり、地域活動が疎かになっています。
 地区でアンケート調査とワークショップを実施し、地区の土砂災害警戒避難体制の構築を準備する中で、鈴の音会が、避難行動要支援者の避難支援に、川浚いが、地区住民に物事を伝達する機会になることが判明しました。

③特徴のある地区防災計画づくり

 下暮地地区のリーダーは、大企業の従業員の方で、危機管理能力に優れた方です。また、地区の役員の一人は、町の総務課長経験者で現在は避難所運営の担当である福祉保健課長を務めています。
 これらのリーダーの活躍もあり、モデル事業を通して、地区の中の組の中に、組長のほかに、防災担当を設置し、コミュニティの組織を強化しました。そして、雨量情報を避難開始のタイミングである「避難スイッチ」にした「リアルタイム逃げどきチャート」を採用したほか、5つのグループ単位で避難開始の順序と避難先に応じた経路を決め、統制のとれた避難を行うことが決定され、地区防災計画の素案としてまとめられました。住民説明会開催後に、西桂町防災会議へ地区防災計画の素案が提出される予定です。

文献 
・鈴木猛康(山梨大学)ほか「土砂災害警戒区域の地区防災計画「命を大切に!まずは逃げましょう」―山梨県南都留郡西桂町下暮地地区―」『地区防災計画学会誌』第24号.

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