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長い一日

土曜日の日記。

数日前から、この日は家に引きこもって休むぞと心に決めていた。そのために数日前から買いだめもしておいた(といってもそうめんとちょっとした野菜とホットケーキミックスくらいだけれど)。目標は舌にできた口内炎を治すこと。

ゆっくり寝ようと思ったのに、そういうときに限って早く目が覚めてしまう。6時くらいか。まだ5時間しか寝ていない。布団の中で妊娠経過アプリやマタニティ用インスタを見ながらうだうだと1時間くらい過ごす。クーラーでひんやりとした布団にくるまることに贅沢と罪悪を感じる。今年の夏は電気代は諦めた、身体優先でいこう。

待っても眠りは訪れないので仕方なくむくりと起き出す。これも数日前から心に決めていた、森永のホットケーキミックスでホットケーキづくりを始める。

と冷蔵庫を開けたら、なんと卵がない。せっかくちょっと離れたスーパーまで買い出しに行ったのに...とショックを受けつつ、「HM 卵なし 牛乳なし」で必死にググる。HM 水だけ、とあったのでそろりそろりと水を足していって不安に思いながらフライパンに流し込んだ。待つこと4分くらい、気づいたら普段と同じくらいふっくらし、色もきつね色になった。

すごいな、森永のホットケーキミックスって水だけでも美味しくなるのか。水だけならいいよね、と、普段よりたっぷりとマーガリンとケーキシロップをかける。ちなみにふっくらしたのはマヨネーズを入れたからかもしれない。なんでかは忘れたのだが、ホットケーキのふっくらに寄与してくれるらしい。

洗濯物を干そうとカゴに入れて寝室に持って行ったけれど、ふとお腹いっぱいでだるいので寝転がって図書館で借りたバーバラ・ピムの「よくできた女」を読む。そうこうしているうちに眠くなってきたので思いがけず二度寝ができた。朝ごはんのあと一眠りするのが一番気持ちいいなあ。あ、でも、昼ごはんのあとの15分昼寝とかもすごく気持ちいい。頭の中が洗濯されたみたいにすっきり真っ白になる。

シーツとバスタオル用にもう一回洗濯機を回し、掃除機をかけ、洗面台を磨き鏡も拭いた。週末のルーティン家事が終わってすっきりする。そうこうしているうちにお腹が空いてきたので昼ごはんの準備を始めた。なすをヘルシオに放り込み、トマトをざく切りにしてめんつゆ、わさび、しょうが、ごま油と和える。

そうめんを湯がいて、冷蔵庫で冷やしたつゆとトマト、焼きなすをのせる。いつも思うけれど料理するのは時間がかかるのに、食べるのは一瞬で終わる。その後に残されるのは汚れたお皿とお鍋だけ。なんか毎日キッチンでくるくる動いてるなあ、と、ふと村上春樹の「ダンス・ダンス・ダンス」を思い出す。

午後からは写真の整理をしたり、友だちがお祝いにくれた赤ちゃんのファーストブックを書いたりと机に向かう。昔からプリ帳つくるのとか、スクラップブッキングが好きだった。時間があったらもうちょっと凝りたいんだけど、仕方ないと妥協する。プリ帳って今や死語だろうな。実家に4冊くらい眠ってるけど。

おやつは余ったホットケーキミックスで焼きドーナツをしたいなあと、また水を加えてオーブンで焼いてみた。できたのは小麦粉のぱさぱさしたカタマリだった。明らかに失敗だ。お菓子づくりって目に見えて失敗を突きつけられる。残念と思いながら1、2個紅茶で胃袋に流し込んであとはゴミ箱に捨てた。

さて、面倒な月1のお金の清算と仕分け、ずっと放っておいた銀行口座の開設を始める。お金は好きだけれど、お金について考えたり計算したりプランを比較したり検討するのは好きじゃないなあ...と悲しくなる。こういうの好きな人が羨ましい。仕方ない、ある程度は自分でやるしかないのだ。

利率とか調べていたら意外に時間がかかったので慌てて晩ご飯の支度に取り掛かる。今日はよく料理するなあと我ながら思う。平日は多くて一回しかキッチンに立たない。夜ご飯の味噌汁と、味噌汁が余ってるときは一品つくる。それだけ。新婚のときはお弁当もつくったりと我ながら気合いが入っていたが、そんな気合いは果たしてどこへ行ったのか。

これも数日前から食べたかったキーマカレーをつくる。みじん切り器を実家の方へ置いてきてしまったので、仕方なく玉ねぎとにんじんを粗めに切った。にんにく、酒、ローリエ、しょうゆ、ウスターソース、ケチャップ、オニオンスープの素なんかで味付けする。こういう煮詰める系料理が一番好き。最後にカレー粉を入れる。暑いので普段より多め。炊きたてごはんの上にのせて食べたら汗をだらだらかいた。

本を集中して読みたかったので、後片付けをしてクリーニングで今更ダウンコートを出してからタリーズに向かう。休日なのにガラガラだった。東京のカフェってこんなに空くことあるんだ。チョコレートシェイクを飲みながら「小さかった女」の続きを読む。戦後ロンドンでひとり暮らしをするアラサー独身女性のなんてことない日常が綴られている。隣人の離婚騒動に巻き込まれたり、友人兄弟の結婚・同居のゴタゴタに巻き込まれたりとなんだかんだ大変そうである。

男友だちの結婚を素直に喜べなかったり、ひとりが一番、誰かと暮らすなんてまっぴらごめんと思ったり、周囲に結婚をお膳立てするのを煩わしがったり、男友だちが飲みに来てそのままにしたグラスをいらいらしながら洗ったりとなんだか共感できるというか、時代を超えてもなんだか主人公の心情や状況がわかりすぎてびっくりした。派手な小説じゃないのにすごく時代を超えた小説だな、と思う。こういうの、一言でなんていうんだっけ。あ、普遍的、か。

金〜日と夫が出張なのと明日は一日出かけるから今日は早く寝ようと準備していたら、夫から終電で帰ると連絡が入った。もうすぐ出産でそうしたらひとりの時間はめっきり減る、だから最近ひとり時間がすごく貴重に思えているのだけれど、帰ると連絡があってうきうきしている自分がいる。つくづく夫のこと好きだなあと思う。

とはいえベッドで本の続きを読んでいたら待てなくて一度寝てしまった。帰ってきた音でびっくりして起きて、そのあと目が冴えて眠れなくなる。私と入れ替わるように帰宅後早々に寝た夫を恨めしく思いながら目をつぶった。そんな土曜日だった。

なんもなかったのに、日記にしてみるとむしろ普段のnoteより文字数が多い。一日、というのは、自分が思っている一日より濃くて長いのだ。

たとえそれが、取るに足らない一日であっても。

それでは、また。


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