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バレンタインだからいいじゃない、

近所、といっても歩いて15分くらい、息子を抱いてだと20分くらいはかかる小さなパン屋さんに行ってきた。カラカラと引き戸を開けて、今日はバレンタインだからと奮発して、お気に入りのチョコチップクッキーをふた袋と、明日の朝用にと、小さめのいちじくのカンパーニュをトレイに載せてレジに持っていった。財布から小銭を取り出しているあいだ、店主さんがふと、いつの間にかお生まれになったんですね、と話しかけてきた。どうやら、妊娠中にウォーキングがてらちょいちょい買いにきてたのを覚えててくれたらしい。

嬉しくなって、そうなんですよ、もう3か月で、とか、最近散歩が楽しいみたいで、とか、大きくなってきて重くて、とか、聞かれてもいないのに息子のことをしゃべり、なんとなく断れなくてスタンプカードもつくってもらった。たぶんいつもひとりでパンを焼いている店主さんで、こういうこぢんまりした個人経営の店主さんを見るたび、来る日も来る日も同じものを同じ時間帯に、同じ美味しさでつくるってすごいなあ、と尊敬してしまう。

帰り道、さっきまで黒々とした瞳をちからいっぱい見開いてまわりをみていた息子はうとうとし始めて、やがて白目をむいて、そして本格的に寝はじめた。首がかくって倒れちゃうので右手で支えながら帰った。クッキーはその後ひとふくろひとりで平らげてちょっと気持ち悪くなった。

それでは、また。

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