プロローグ(13)〜明日からは新しい人生が始まる

2019年2月14日

今日は昼から大学病院へ。

検査結果の告知は土壇場でキャンセルされてしまったのだけど、告知の時間の前に胃カメラの検査予約も入れていて、そちらはキャンセルしそびれていたので仕方なく電車に揺られて病院まで向かう。

到着して受付を済まし、検査をおこなう消化器外科へ向かう。
でも待てよ。受付の対応が何かちょっとおかしいことに気がつく。

実際に名前を呼ばれて診察室に入室。

その段階で初めて知ったのだけど、今日は胃カメラの検査を行う日なのではなく、胃カメラの検査を行う日程を決めるために呼ばれたらしい。

前回確かに「胃カメラを撮影するのでその日を決めましょう、同じ14日でいいですか?」というやり取りをした覚えがあるのだけど、俺の記憶違いなのか?

なんだよこの無駄な展開は。
こっちはわざわざ昼飯抜きで来たってのに。

そうは言っても撮らないものは仕方がない。胃カメラの予約を来週の水曜日に決めて早々に帰路へ着こうとしたのだけど、受付の看護婦さんから頭頸部外科へ向かうよう指示が出る。

頭頸部外科の告知予約は延期になったはずなんですけど。その旨を伝えて断ろうとするも、いいえ予約はそのまま入ってますよ、との返事。

何が何だかわからない。昨日延期の電話を掛けてきたのはなんだったんだ?ひょっとして大病院なだけに情報共有が疎かになっているのか?訝しげな気持ちを抑えつつ、どうせ時間もあることだし確認だけでもしておこうかと頭頸部外科の窓口へと足を運ぶ。

窓口にカルテを提出して看護師さんにその旨を話すと、また少しお待ちください、とのことで先生のもとへ。
しばらく経つと戻ってきて、今朝ちょうど検査結果のデータが届いたみたいです、告知できるそうなので名前を呼ばれたら入室してください、とのこと。

おいおいマジかよ、そんなこといきなり言われても、こっちはすっかり告知されないモードで来てるのに心の準備が、それに今日は妻も来てないし、なんて混乱している間に名前を呼ばれる。早えよ。

妻へ急に告知されることになった旨をラインでサクッと伝えたのちに診察室へ。

座っていたのは前回とは違う先生。
なんというか、自信にあふれたベテランな印象。

唐突に「では告知を始めます」とのことで伝えられた内容はこんな感じ。

・病名は中咽頭がん。
・リンパ節への転移もあり。
・ステージ2。その中でも比較的早期の状態。
・HPV検査は陽性。ウイルス由来のがんで、通常のがんに比べて治りが早くて予後も良好、再発も起きにくい。
・治療は放射線と抗がん剤。HPV陽性のタイプは放射線が効果が高い。
・期間は3ヶ月。3月からスタート。
・抗がん剤は計4回。強いタイプを使うので投与の際に4日間入院が必要。
・3週間おきに抗がん剤を投与。3週間おきに4日入院を繰り返す。
・放射線の副作用で口腔内や首筋がただれることはある。
・仕事との両立は一応可能。
・治療の前半は普段と変わらず生活できると思うけど、後半は体力的にきついかも?とのこと。

とりあえず上記のような内容を伝えられた後、具体的なスケジュールは胃カメラの検査結果が出た後にあらためて決めるとのこと。胃カメラの結果、食道や胃に転移が見つかったらまた話が変わってくるからだそうな、恐ろしい。ひとまず次回の診察予約を2月28日に決めて部屋を出る。

実際は5分くらいだったのかな?
でもすごく長い時間だったようにも思う。

まあ、ガンの告知を受けたというのは確かにショックなのだけど。
しかし意外と冷静に、そして前向きに受け止めることができているのに我ながらびっくり。

むしろ告知を受けたこの瞬間よりも、初めの検査で「多分癌ですね」と中途半端に言われてから今日までずっと、何も解らない、誰にも相談できない状態が続いていたわけで、その期間の方がはるかに不安で辛かったのは間違いない。

少なくとも今回の告知で自分の身体に何がおきているのか、そのことは明確になった訳で、それだけで霧が晴れたというか、ものすごくスッキリした気分になった。

現状を受け入れることがさえできればあとは対処していくだけだ。完治を目指してしっかり向き合っていこう、という気持ちが芽生えてきた。
我ながらこのポジティブさはなんだろうね。自覚症状がないだけまだ実感できてないだけかもしれないけれど。

しかし今日が間違い無く俺の人生の分水嶺。
明日からは新しい人生が始まる。それくらいの気持ちで取り組んでいこうと思う。


家に帰って妻に報告。今後のことなど色々と話し合う。
病気だからしょうがないとは言え、妻には迷惑かけっ放しで本当に申し訳ない限り。
しっかり完治させて挽回しないといかん。

美味しい食べ物とか、子供達へのおみやげとか、少しでもハッピーな気持ちで治療を受ける足しにできれば嬉しいです。