他人は思い通りにならない

不愉快なので歌うのやめてもらっていいですか?みたいなニュアンスの事をたった一度だけ言われたことがある。10年歌手活動をして、一度だけ。その時は動揺して何も言い返せなかった。というか返す言葉が見つからなかったというのが正しい。しかし冷静になって今考えると、その人の要求、凄くないか?お前誰だよ、と思う。

その人は中年くらいの人だった。性別はこの話には関係がないから伏せておこうと思う。直接言われたわけではない。会ったこともない。インターネットで書いてあったのを事故というのが相応しいような形で見せられただけだ。しかしながらきっとその人は、面と向かって私には何も言えないだろうなと推測する。普通に知っているライブハウスにもお客さんとして出入りしてる人のようなので何かの間違いでどこかで会うこともあるだろう。でもきっと何も言わないんだろうな、ということだけは何となくわかる。それは別に面と向かって言う程のことではないから。その人にとってはただの憂さ晴らしで暇つぶしで邪魔な存在でちょっとむかついたから叩いてやろうみたいな本当に軽はずみな書き込みだったと予想できる。

そのことがあって私も色々考えこうして文章にするネタの一つになっているのだから、別に今は恨んでも悲しくもなっていない。だが、やはりどうしても考えても考えても分からないのだ。一体なぜその要求が通ると思ったのだろう。自分たった一人が何か特別な感情や理由があり私の存在を不愉快に思ったとしても、私の歌を気に入ってくれている人たちがいるのは間違いなく事実であり、その人一人がやめてくれと言ったところで止めるはずがないのだ。大体私には音楽をやめるやめないの概念がない。生きている間ずっと音楽と共にいるのだから。だとしたらその人の私に無理な要求をしたりイライラと私について考えるその時間は果てしなく無駄な時間だということが分かる。人生はあっという間でとても短い。まして何かをやり遂げようとしている人にとってはいつだって夢中で全力に取り組む為、日々時間が足りないのだ。

意味のない事をする意味を考えた。そこにはもしかしたら寂しさや虚しさが隣り合わせにあるのかも知れないと思った。もしかしたらその人は誰かに構って欲しかったのかも知れないし、自分の意見を主張する事で自分の存在価値のようなものを確かめたかったのかも知れない。嫌な事を書くことによって自分は消費者でいつだってジャッジをして選ぶ方の立場ですよという事を主張したかったのかも知れない。まあ所詮私は他人なので、全然その人の本当の意図が分からない。はたまた意味なんてなくただ憂さ晴らしで書いたのかも知れない。しかし私に考えさせることには成功しているからもし私に構って欲しかったという理由なら、まあまあ成功しているとは思った。でもきっとこの理由ではない。私のことはただ何となくむかつくし目障りだから気に食わなかっただけで、多分それ以上の納得できるような理由なんて初めから一つもないのだ。

今回のことは単純に私の歌や曲に対するアンチでは無かった。詳しい内容は書かないけれど、間にもう一人関わっている人がいてその人と私は友人で仲が良かったことがただただ気に食わなかったのだと思う。なるほど、そういう時もあるよね。とは全く思わない。私が誰と仲良くしようが私の勝手である。例えば今物凄く大好きな人がいたとして、もしその人に私の人間関係をこうして欲しいといった形で言及されたところで付き合う人間を変える気は全くないし変わることもないだろう。私の人生ですから。まして全く知らない赤の他人に何か言われたところで、もちろん少しも変える気はない。お前誰だよって思うだけ。そう、これらのことから人を自分の思い通りにしようなんて初めから思わない方が身のためである。言うだけ無駄。無駄はなるべく減らす方がいい。人にはそれぞれに価値観があり、物差しがある。他人を自分の物差しで測ってはいけない。そのような事を平気でしようとする人は、ナンセンス大賞受賞である。全くおめでたくもないね。お疲れ様です。

考えることが好きなのでこの件に関しては新鮮さを感じながら時間をかけて思考した。知らない事を知るのは面白いし、自分からは一生関わることのないタイプの人のことを考えるのも勉強になったと思う。ただやっぱり言いたいのは、人はあなたの思い通りになんて絶対ならないよということ。特に私みたいな人間は絶対思い通りにはならない。人を変えたいなら自分が先に変わるしかない。もっと頭を使って、計算して行動したらまた何か違った結果になったのかも知れないが。

一生懸命何かを追いかけてる人や努力を続けている人は時間が足りない。自分とそれから自分にとっての大切な人にたくさんの時間を注ぐべきだと言うことを知っているから、嫌いなものやどうでもいいものに時間を割かないのだ。好きなことをして音楽を作って仕事を頑張って子育てやダイエットをして本を読んで絵を描いて勉強をして…などなど、私の周りの最高にイケてる人間たちは皆それぞれに自分の事と自分の好きなものに対していつもキラキラと忙しくしている。人生は短いって分かっているから。毎日充実の海を泳いでいるのだ。

逆に嫌いなもののことを考えている時間はおぞましい。すごく無駄であり、気持ちが萎えるしなんかむかついて体調も悪くなるしやる気も起きないし全然楽しくない。だって嫌いなことで頭がいっぱいだから。モヤモヤするし最悪である。そんな時間はなるべく避けた方が本当に身のためなのだ。誰もが、あっという間に歳を取る。

冒頭で記述したように他人は自分の思い通りになどならない。つまりあなたの嫌いな私もずっと私のままなのだ。

嫌いなものからはそっと距離を置いて、見ないようにしたり自分の人生からデリートするのが一番手っ取り早い。あなたはあなたの世界で、私は私の世界で、お互い何にも知らぬまま楽しく暮らしていきましょう。

でも一つだけ思ったことがある。この人がもし万が一この先どこかで私の歌を直接聴いたら、絶対私の歌を好きになるという何とも変な自信がある。刺さると思う。その時は怒らないからライブいっぱいきていいよ。

おしまい





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