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「用度部門」は、戦略性と生産性を持つ部門に改造することで、売上アップ&利益アップの重要な役割を果たすようになる。

 仕入れ戦略を見事に成功させているホテルがある。それは、高レベルの実戦部隊「用度部門」を有しているホテルである。しかし、「用度部門」が旧態依然としたシステムで、機能不全となっているホテルは、日々仕入れに頭を痛めるだけで、粗悪な食材の仕入れ、歩留まり率も悪く、自分の首を絞めている。

 原価(仕入れ価格)を極端に下げれば、食材の質が落ちる。食材の質が落ちれば、料金を据え置きにしても、料理が不味くなり、客は逃げる。結局、売上もダウン、利益もガタ落ちとなる訳だ。そういった、負のスパイラルに直面している、ホテルや旅館がありはしないか。目の前の、原価操作ばかりに傾注していると、後々、迷走するばかりで収拾がつかなくなってしまう。

 時には、業者側と「用度部門」や厨房責任者間で、「リベート」の不正な遣り取り(横領)が発覚することもある。業者側が「リベート」を支払ってでも契約を続行したいのならば、ホテル側はその「リベート」を個人の懐に入れさせず、公然と会社の利益としてプール(公開)するガラス張りの仕組みを作る必要がある。

 公然の「リベート」とすることで、従来の不正という悪き慣習ではなく、堂々とした生産性のある取引に切り替わる。

 また、地産地消のための「契約農家制度」や安定供給できる遠隔地からの「直接仕入れ」の仕組みを作ることは、無駄無理のない仕入れを可能にしてくれる。肉や魚、酒、リネンなどについても、定期的に全て数社から相見積もりを取ることで、フェアな競争環境下における取引を可能とする。

 そもそも、長年の付き合いであるところとは、大抵の場合、親し過ぎるが故の「癒着」という魔物が潜んでおり、袖の下は意外に多く存在している。よって、早期に「用度部門」の全面的な見直しを行い、透明性を確保した上で、戦略性及び生産性のある部門として大改造されることをオススメしたい。

 「用度部門」は、上述のようにホテルや旅館に限らず、灯台下暗しとなりがちな地味な部門ではあるが、どのような業種業態であろうが、今一度、検証の余地はありはしないかと考える次第。

 余談だが、ふと思い出したのは、他県の某名門ホテルのフレンチレストランでは、「契約農家制度」を30年以上も続けており、瑞々しく美味しい野菜を、安定供給させているところがあった。

 更に、合鴨農法を行う農家の鴨が育てば、それをフレンチレストランのメインディッシュへと、既に、最近話題のSDGsのお手本のような仕組みを、30年以上も前に構築していたのである。

 因みに、この「契約農家制度」は、初代総料理長の発案であったが、他の若手料理人たちがデイオフに生産農家を訪れ、農園の草むしりやフレンチの試食会を開催し、素晴らしいコミュニケーションを続けている。

▼料理写真はイメージ


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