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○曜サスペンス

※出血が苦手な方は閲覧注意!
※若かりし頃のバイト当直での話。
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早朝に、玄関で転んで頭から大量出血しちゃった患者さん。しばらくそこから動けなかったけど、なんとか自力で救急車を呼んで、病院に到着。

救急隊がタオルで圧迫止血しながら運んでくるが、タオルも患者さんの服も真っ赤に染まっている。

出血点の確認を…と、圧迫の手を外してもらうとピューッピューッと拍動性に血が噴き出してくる。私の白衣にも血しぶきが飛び散る。
私「これ、動脈いっちゃってるわ…」

さぁどうする!?

じわじわ出てくるぐらいの出血なら、ステープラー(医療用ホチキス)で傷を閉じてしまえば血も止まる。
でもこれは無理。ペアンで咬んで結紮(けっさつ=糸で血管を縛ること)する?電メスで焼いたほうが早い?
とりあえず手は患者さんの頭の傷を圧迫止血しながら、一瞬でぐるぐるといろんなことを考える。

私「この病院、電気メスありますよね?」
看護師「あります!オペ室から持ってきます!」
私「お願いします。それと、今すぐ来てもらえる外科の先生っていますか?」
看護師「連絡します!来てもらえると思います!」
私「○○さん、気分悪くないですか?」
患者さん「大丈夫です。先生、すまんねぇ…」

救急外来に電気メスが届く。
この頃まだペーペーだった私はこれを一人で使ったことはない。
うーん、なんとかなるかな。やるしかないよな…

と思っていたら、外科の先生到着!
私「先生、お休みのところすみません。かくかくしかじかで…」
外科医先生「あーなるほどー。オペ室から電メス持ってきてー。」
看護師「用意できてます」
外科医先生「え?あ、じゃあやろう。」

外科の先生が鮮やかに止血して、縫合して、無事に終了。
ここ、ドラマだったら鮮やかに止血するのは主人公である私なんだろうけど、現実はこんなもんです。
でも、逆に自分の力量をわかってて早々に外科の先生を呼んでおいたこの時の私、我ながらグッジョブだったと思う。
自分でやってみた→ダメだった→外科の先生に助けを求めるだと、その間に出血性ショックになっちゃってたかも。

患者さんはそのまま入院に。
全てが終わった救急外来は○曜サスペンスの殺人現場のようになっていた。
そして私には「スプラッターもろち」というあだ名がついたのだった。

…と、ここで終わらずに、この話にはもう少しだけ続きがあって。

実はその方、もともと透析を受けていて、週3回決まった時間にタクシーが自宅に迎えに来てくれることになっていた。その日は透析日だったので、いつも通りタクシーが迎えに来たが、ピンポン鳴らしても出てこない。運転手さんが玄関を開けてみたら、そこは血の海!でも誰もいない。

運転手さんはびっくりして慌てて消防に電話をかけた。「ものすごい出血だけど、本人が見当たらない!」と。そして、「その方は先ほど救急車で病院に運ばれましたよ」と説明されて、一件落着(?)というお話。

本人いないのに救急車を呼ぼうとした運転手さん、相当動揺してたんだろうな、って。まぁ確かにびっくりするよね…救急隊の話だと玄関で500ml以上は出てただろうってことだったので。
電話したのが消防だったからあっさり解決したけど、事件⁉︎と思って警察に電話してたら医療ドラマじゃなくて刑事ドラマになるところだった(なりません)。

#何科医もろちのカルテ

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