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映画「ラーゲリより愛を込めて」感想

 一言で、山本幡男さんの半生映画としては良く、家族愛は伝わりましたが、戦争映画としては「簡単化」しすぎていて、泣けませんでした。やはり、実際に自分の目で見て聞いて勉強することが大事ですね。

評価「B-」

※以降はネタバレを含みますので、未視聴の方は閲覧注意です。後は、戦争物故の残酷な表現がありますので、閲覧にはご注意ください。

 本作は、辺見じゅん氏著のノンフィクション小説『収容所(ラーゲリ)から来た遺書』を映画化した作品です。    
 実在の人物である山本幡男氏の半生を通して、第二次世界大戦敗戦後の旧日本軍のシベリアでの労働や抑留生活の悲惨さや、それでも生きることを諦めなかった強さを訴えた内容が高く評価されています。
 小説は、1989年に文藝春秋より出版、1992年に文庫化され、ロングセラーとして長く読み継がれています。 
 メディアミックスとしては、1993年にテレビドラマ化、1997年と2021年に漫画化となり、2022年に初の映画化となりました。
 本作の監督は『64-ロクヨン』・『友罪』・『護られなかった者たちへ』などの瀬々敬久氏、脚本は『永遠の0』・『護られなかった者たちへ』などの林民夫氏が務めています。

・主なあらすじ

 第二次世界大戦後の1945年、零下40度の厳冬の世界シベリアにて、約60万人の日本兵がラーゲリ(強制収容所)にて抑留され、寒さと飢えと重労働による残酷な環境に苦しんでいました。
 身に覚えのないスパイ容疑で収容された山本幡男は、必死で耐え続け、仲間を励ましました。やがてその行動は凍っていた抑留兵達の心を溶かしていきます。
 終戦から8年後、妻から山本宛の1通の葉書が届きます。帰国(ダモイ)の日を待ち、日本にいる妻と4人の子供達とまた会えると信じていた山本でしたが…

・主な登場人物

・山本幡男:二宮和也
 本作の主人公。1945年(昭和20年)にハルビン特務機関に配属されるも、第二次世界大戦での日本の降伏後にソ連に抑留され、ソ連西部のスヴェルドロフスク収容所へ入れられ、強制労働させられました。
 その後、「帰国(ダモイ)」の通達があったものの、「とある理由」からそれは叶わず、ソ連極東部のハバロフスクの収容所にてさらに25年もの労働を命じられます。
 ロシア語を得意とし、ソ連軍と日本兵達の通訳を担います。厳しい環境下でもいつも希望を失わず、頼りがいがある性格から皆に慕われています。妻子を深く愛し、絶対に帰国すると約束するも…

・山本モジミ:北川景子 
 幡男の妻で、4人の子供の母。遠くシベリアの地にて帰ってこれない夫の身を案じつつも、また会えると強く願います。

・松田研三:松坂桃李
 本作のナレーション。戦渦で友人を見捨てた自分を「卑怯者」と称し、前半は「傍観者」の立ち位置にいるも、彼が後半に取った「ある行動」が「奇跡」を起こします。

・新谷健雄:中島健人
 明るい純朴な青年。無学で片足が不自由な故に徴兵されませんでしたが、漁の最中にソ連軍に連行されました。山本からは読み書きを教わり、犬のクロを拾って可愛がります。

・相沢光男:桐谷健太
 階級は軍曹。戦争が終わったラーゲリ内でも、その階級に拘り、山本ら下級兵たちを見下します。しかし、葉書にて身重の妻を亡くしたことを知り…

・原幸彦:安田顕
 山本にロシア文学の素晴らしさを教え、彼のキャリアに大きな影響を与えた同郷の先輩。ラーゲリで追い詰められた上に、「ある行動」を取ってしまい…

・山本顕一(壮年期):寺尾聰 / (青年期):奥智哉
 山本とモジミの長男。母や他の兄弟と同じく、父の帰りを待ち続けます。
 ※寺尾聰さんは1993年に放送されたテレビドラマ『収容所(ラーゲリ)から来た遺書』にて山本幡男さんを演じました。

 まず本作について、「良作」だとは思いますが、「絶賛」はしていないので、読む際はお気を付けください。
 端的な感想を述べると、「山本幡男さんの半生映画」としては○、一方で「戦争映画」としては△から✕でした。 

 本作、映画としての出来は決して悪くありません。事実、感動・感涙した方が沢山いらっしゃるのはわかります。ただ、思ったよりも「引っかかった点」が多くて、前評判ほど「泣けて泣けてしょうがない」というような作品ではなかったです。ちょっと期待しすぎたのかもしれませんが…

1. 「山本幡男さんの半生映画」としては良く出来ている。

 本作の一つ目のテーマは、山本幡男さんの半生です。
 前述より、山本幡男さんは南満州鉄道調査部での北方調査やハルビン特務機関でソ連の新聞や雑誌の翻訳を行っていました。
 特にロシア語に長けており、『北東アジアの諸民族』(中央公論社)などソ連の社会、経済、軍事などに関する書を執筆して高い評価を受けました。それ故に、第二次世界大戦前後の国際情勢に詳しく、当時の平均的な日本人と異なり、日本の軍国主義を厳しく批判していました。

 しかし、敗戦後、これらの活動はソ連に対する「スパイ行為」と見なされ、戦犯としてソ連の国内法(刑法第58条第6項)によりラーゲリ(収容所)にて、重労働20年の刑を下されました。(彼は軍人としては一兵卒でしたが、この刑期は軍の司令官や大将にも匹敵します。)※彼がこれほどの重い刑となった理由については諸説ありますが、ソ連のスパイとなることを強要されたがそれを断ったため、または戦争の影響で正式な裁判が行われなかったため、というのが有力なようです。

 以後、冬には零下数十度となる厳しい気候、粗末な食事をはじめとする劣悪な環境のもと、長年にわたって重労働を強いられることとなりました。
 やがて寒さと重労働による疲労、ストレスから体調を崩し、咽頭癌が発覚して入院するも、日本への帰国は叶わず、ハバロフスクにて45年の生涯を閉じました。しかし、彼を慕う兵士達(本映画では4人)が「持ち帰った」遺書により、家族への愛情が伝えられました。

 本作は、史実を元に制作されていますが、山本幡男さんが敗戦や重労働の刑罰よりソ連を憎しみ、家族と突然離れて会えないことを悲しみ、それでも仲間と励まし合いながらも楽しみを見つけて一生懸命生き抜いた半生の描写としては良かったと思います。

2. シベリア抑留に関する、歴史の勉強のきっかけにはなる。

 本作の二つ目のテーマは、シベリア抑留です。第二次世界大戦敗戦後の「シベリア抑留」という言葉も、「満州引き揚げ」という言葉も知らない今の人達にも、これらの理不尽さや過酷さを気付かせてくれたと思います。扱っている題材はセンシティブなので、決して低評価するような作品ではないです。(正直、第二次世界大戦敗戦後の歴史は、中高時代はじっくり勉強した記憶はあまりなかったです…お恥ずかしながら。)

  あの極寒の中でよく生き耐えたられた方がいらした事には驚くとともに、胸が締め付けられました。一方で、寒さと飢えから亡くなった兵士も多かったです。ただ、その数が多いため、一人一人に墓を作ってやることが叶わず、何十人もの遺体を一度に埋めるシーンは、悲しいしゾッとしました。ガリガリに痩せこけた体が痛々しかったし、もはや人間には見えませんでした。また、逃亡を企てた兵士が、ソ連の監視兵に狙撃されて死亡した描写もありました。
 これらは理不尽な酷い扱いです。しかし、ソ連人に限らず、日本人だって同じ事をして来たのが戦争です。「人が人を殺すと言う事の正当化が国全体でまかり通った」、というのは恐ろしい時代です。  
 それでも、これは「過去の出来事」ではなく、「今でもそんなことは続いている」というのも恐ろしいです。

3. やはり二宮和也さんは昭和の男が合ってる。

 二宮和也さん出演の戦争映画というと、クリント・イーストウッド監督の『硫黄島からの手紙』を思い出します。あの作品でも、二宮さんが坊主頭だったのを思い出しました。
 彼の小柄で細身な体格は、当時の日本人に近そうです。だから、「昭和の男」役は合っているのかもしれません。ただ、地声が高いので、あんまり軍人としての強さは出せてないかもしれません。

 本作の山本さんの丸眼鏡で坊主頭、ロシア語が堪能な点は、何となく、『ゴールデンカムイ』の長谷川幸一時代の鶴見中尉と重なります。ちなみに、『浅田家!』ではカメラを構えていたから、長谷川幸一役も行けそうです。最も、「実写映画」でそこまでやるのかはわかりませんが…

4. ドキュメンタリータッチとヒューマンドラマの切り替え、色んな作品の「オマージュ」は感じられた。

 本作は、山本幡男さんの生涯を、一兵士の松田のナレーションを挟みながら進行していくため、前半は淡々としたドキュメンタリーを観ているかのようでした。しかし、後半からはグッと盛り上げてヒューマンドラマとなっていきます。ここで作風をガラッと切り替えて来たので、150分の長い上映時間でありながら、最後まで観ることは出来ました。

 また、これは制作陣が意図したのかはわかりませんが、色んな作品の「オマージュ」を感じました。
 辛い中でも希望を失わずに生きようとする話は、『ショーシャンクの空に』、山本幡男さんが白スーツ白ハット、モジミさんが女学生の袴姿での海辺のデートは、『風立ちぬ』での堀越二郎と里見菜穂子を彷彿とさせました。

5. 一方で「戦争映画」としては△から✕、泣けなかった。

 一方で「戦争映画」としては、うーん、正直引っかかる点が多くて泣けませんでした。
 映画館でもそこら中ですすり泣きが上がっていましたが、どうもノレず。こんなことを言うと、「冷たい人」と思われそうですが。
 所謂、「一昔前の感動映画」だと思います。妙にモヤる点は多かったです。『永遠の0』でモヤる人は本作もモヤるかもしれません。※実際、同じ脚本家の作品なので。勿論、あちらは「架空の人物」、こちらは「実在の人物」という違いはありますが。

 最近でも戦争における真実にこだわった映画は洋画邦画問わず多くありますが、『永遠の0』も本作も、現代人の私達が感情移入しやすいように「異物は全て取り除いて」いるように感じました。戦争を題材にはしているけど、歴史へのこだわりやリスペクトよりも、「娯楽大作」としての要素が強かったです。
 まず、登場人物については、現代の私達にもわかりやすくしたかったのか、とても「今風な」アレンジでした。とにかく思ったことは全て口にするし、手紙を読んで悲しかったらすぐ泣く。人間の感情ってもっと複雑だと思います。まして、あの「過酷な状況」なら尚更。

 また、本作はとにかく色んな話を詰め込みすぎて、何が言いたいのかぼやけてしまった感じがします。シベリアの厳しい収容生活を描きたかったのか、「共産主義への洗脳」の恐ろしさを描きたかったのか、収容生活でも生きる楽しみを見つけたかったのか、山本幡男さんを何としても助けたかったのか、彼の遺書を妻に届けて涙を誘いたかったのか、現代の顕一を見せて山本幡男さんの子孫が生きていることを示したかったのか…提示されたテーマが多すぎて、全体的にまとまりが無くなってしまったように感じます。

 後は、ナレーションの松田役の松坂桃李さんも、ちょっと存在感が薄かったです。彼が「卑怯者」を脱却する描写が足りないですね。後半にストライキを起こすまでは、割と傍観者の立ち位置だったし。

6. リアリティーが弱く、色んな厳しさが伝わってきづらい。

 まず、本作は非常に「リアリティさ」を欠いているように感じました。映像にある山々は青々としすぎだし、生えている木々が広葉樹林なので、「シベリア感」が今一つ伝わってきませんでした。
 エンドロールやパンフレットより、実際は新潟でのロケだったようですね。流石にロシアロケは無理でも、せめてCGで被せられなかったのかな?

 また、シベリアはツンドラ地帯で、永久凍土の地です。その厳しすぎる寒さ故に、鉄道のレールに触れようものなら皮膚がくっついてしまい皮膚ごと剥がすしか無かったり、収容所は凍える程寒く最低限の着物で充分な睡眠もとれず、凍傷で手足の指等を切断した者が多かったり、遺体埋葬時も、地面が硬すぎて土がツルハシで掘り出せずに遺体に砂をかけただけの埋葬もあったり、飢えにより自分の糞から未消化の固形物をまさぐり食べたり、人肉を食べたり、といった話もあったとか。
 後は、収容兵の歯が白過ぎる、といった意見も散見されました。言われればそうかも。

 つまり、当時あの地にいた日本兵たちは、「明日生きているか解らない」と命の危機感を抱かれていたはずですが、本作では犬のクロや俳句や草野球や川での水泳などのエピソードが多く、やや「平和ボケ」している感じも否めませんでした。(勿論、苦しいときも希望を持つというエピソード自体は悪くないけれど。)

 そして、山本幡男さんの妻であるモジミさんは4人の子持ちであり、夫と離別して悲しみをこらえつつも、逞しく暮らしていますが、北川景子さんでは綺麗すぎました。肝っ玉母さん感が全然無かったですね。

7. 出来事やリアクション、演出がテンプレ、予定調和のベタな佳作。

 前述より、本作はドキュメンタリータッチで描いていると言いましたが、それにしても、出来事やリアクション、演出がテンプレ過ぎて、予想外の驚きがなかったです。

  まず、山本幡男さんの功績と、周りから慕われ愛されるに至った描写が少なく感じました。映画だけでは、なぜ日本兵だけでなくソ連兵までもが、命を懸けてあそこまで山本さんのために動いたのかというのが分かりづらかったです。勿論、ロシア語が堪能というのは、彼のアドバンテージではあると思いますが、それだけではソ連兵は動かないでしょう。

 また、彼がしきりに咳をしていたシーンから、この後病気になるのも予想できました。病名は咽頭がんだったんですね、結核ではなかったのでここは予想外でしたが。

 そして、何もかも没収されてる割に彼の入院中にはノートも鉛筆も支給し放題で、あんな手厚く入院させてもらえてたり、クロまで呑気に野球ボール咥えたりして、いまいち厳しいのか厳しくないのかその辺りが曖昧で腑に落ちませんでした。

 さらに、「遺書を書け」は、いかにもその後の展開が予想できてしまいました。その後の「遺書記憶リレー」も…全体的には、いかにも涙を誘う安っぽい演出になっていました。

 後、山本さんもモジミさんも、英語の歌『いとしのクレメンタイン』を大きな声で歌ってたら、怒鳴られたり、石を投げられたりはしないのかな?戦後であっても、あの頃なら「鬼畜米英」の考えの人は多かったと思いますが。

8. 犬を使えば、そりゃ泣くよ。実話とのことですが。

 犬のクロ可愛かったですね。私も実家に犬がいるし、犬を扱った作品は当たりが多いので、泣ける人がいるのはわかります。
 パンフレットを読んだところ、ここは史実だったんですね。しかし、よくクロ死ななかったですね。ソ連兵としては、物品は没収するけど、犬は良いのかしら?
 最も、戦時中では、動物が日本軍に強制的に軍用品として押収されたり、動物園の動物が毒殺されたりしているのに。クロは悪くはないけれど、何か「モヤッと」しました。
 特に、船を追いかけて氷の上をクロが走るシーンは、「某映画」を彷彿させました(笑)。

9. シベリア抑留への過程と共産主義への視点が弱い。

 本作は「シベリア抑留」という難しい内容を扱っています。戦争は本で想像するのも難しいのに、映像化するのは尚更難しくて、その時点でかなり高いリアリティーラインを求められます。
 しかもシベリア抑留は「日本の戦後処理の負の歴史」です。本作でも、日本兵達は「ダモイ(帰国)」を果たそうと奮闘しますが、これは日本人同士が密告しあい、かつ共産主義に盲目的に教化されたものです。正直、本作のスターリンの肖像画と吊し上げだけでは描写が弱いです。もっと日本兵同士も、ドロドロと血生臭くなると思いますが。

 また、抑留者たちの中で、先に帰国した人達と、11年も残された人達が分かれましたが、その理由が今一つわかりませんでした。
 調べたところ、あれは、「赤思想教育」に合格した人(共産主義思想に転向したフリができた人)と、不合格になった人の選別のようです。
 ソ連側は、日本兵達にシベリア鉄道敷設のために働かせ、日本を共産主義化させようとしていました。(最も、ロシア語ができた人は、共産主義化のフリができたとか、できなかったとかに関係なく、スパイ扱いされて過酷な扱いになったことは本当のようです。)

 また、山本さんが所属していた満鉄の不遇を描くのであれば、関東軍の存在も欠かせませんが、この辺りの検証は映画ではすっ飛んでいます。

 つまり、テーマが難しいゆえに易しく描きすぎているように感じます。皆にわかりやすくするのは良いけれど、ちょっと「簡単化」しすぎではないでしょうか?

10. 長男の顕一の心情をもっと掘り下げても良かったのでは?

 夫婦が離れる原因となってしまった長男の顕一、もしかしたらずっと罪悪感を抱えていたかもしれません。勿論、両親はそう思ってないにせよ。
 引揚船を待つときに、「もう探すのやめたい」と一言ありましたが、あれにどれだけの思いがこめられていたのか。モジミさんは「大丈夫よ、あの人は生きているから」と言って、彼は納得しますが、もっと二人の言い合いや気持ちのぶつかり合いがあっても良かったのではないかと思います。正直、彼の気持ちの葛藤描写が弱かったです。もう少し、他の兄弟と「差別化」しても良かったのではないかと思います。

 また、夫を待ち続けるモジミさんに対し、周囲が再婚を勧めるも、本人が断る描写があったほうが、夫への愛情が伝わりますね。

11. レビューでは「ソ連は酷い、悪」という感想が散見されるけど、ここにはどうも違和感が。

 本作のレビューを読んでいると、「ソ連(ロシア)が憎くて嫌いになった」と言った感想が散見されましたが、正直、これには違和感を覚えました。

 本作では、ソ連が強で悪で、人間の心を持たない「鬼」のような描写、ラーゲリにて立場の弱い日本兵はそれに虐げられたように描かれています。勿論、「嘘」ではないし、言いたいことはわからなくはないけれど、これは単純すぎませんか?

 勿論、捕虜として不当に長く抑留させられたのは本当に気の毒です。しかし、満州は日本が植民地にするために進出した所で、日本が仕掛けた戦争で敗戦した結果です。「徴兵された一般市民の現実として、戦争を二度と起こしてはならない」というメッセージとしては良いのですが、決して「ソ連が一方的に悪者で日本は被害者ではない」んですよね。

 今の日本は、憲法をいじったり、また軍拡しようとしていますが同じことをしないようにしないといけません。
 まぁ、色んな意味で「今の時代だからこそ刺さる」のかもしれませんが。

12. 演出がベタすぎて、メロドラマと化している。

 本作、「泣ける」演出は多いのですが、それがベタすぎて、泣けませんでした。正直、メロドラマと化していて冷めました。

 残念なことに、山本さんは病状が悪化してハバロフスクの病院で亡くなり、帰国は叶いませんでした。そこで、松田・新谷・相沢・原の4人は、彼の遺書を何とかして届けようと、ソ連の検閲や没収の目を掻い潜り、遺書の内容を「暗記」して、モジミさんの家に行って内容を伝えます。
 日本帰国後に4人がバラバラの時系列で来て、その内容を伝えるので、モジミさんと子供達はその度に泣くのです。勿論、本当にそうだったのはわかるのですが、4回も同じ演出を見るのはちょっとクドいなと思いました。
 しかも、最後に家族が急に空を見上げてみたりして、演出がベタすぎます。

 終盤の現代の結婚式の顕一のスピーチは、恐らく序盤のハルビンでの結婚式のリフレイン的に挿入したのでしょう。悪くはないけれど、ここまで描くと、やはりメロドラマになってしまうなぁ。

13. やっぱり邦画の戦争作品は主人公を死なせるものが多い。

 本作に限らず、やはり邦画の戦争作品は主人公を死なせるものが多いですね。だから、正直本作が従来の作品を超えたとは言えないです。

 一方で、海外の戦争映画は、「生き延びる」ことに執着し、何とかしようともがく話が多いと思います。ここはお国柄なんですかね?
 勿論、日本にも生き延びて帰国した人の話もありますが、やはりそういう話よりも、亡くなる話の方が「受けやすい」からでしょうか?

 ちなみに、戦後も日本兵が生き延びる話だと、フィリピンで30年以上潜伏し続けた小野田寛郎少尉の映画『ONODA 一万夜を越えて』がありました。これは、フランス人の監督が作った作品です。ちなみに、あちらは本当に俳優達がガリガリに痩せこけてましたので、本作よりはリアリティーは高かったと思います。

 エンディングのMrs. GREEN APPLEの曲『Soranji』も、ポップス調が軽くて作品の雰囲気に合ってないです。曲自体は良いんですが。ここは重々しくインストロメンタルだけでも良かったのでは?

 やはり、一本の映画で描けることには限界があると思います。だから、本作を見て感動するのは良いけれど、やはり自分でも勉強しましょう、ということだと思います。例えば、生存者の方の話を聞く、資料館に行くなど、自分で足を運び、学ぶことでよりリアルに感じられるのだと思います。

出典:

・映画「ラーゲリより愛を込めて」公式サイト

・映画「ラーゲリより愛を込めて」公式パンフレット

・映画「ラーゲリより愛を込めて」Wikipediaページ

・「収容所から来た遺書」Wikipediaページ

・山本幡男 Wikipediaページ

・北川景子が二宮和也の最愛の妻に『ラーゲリより愛を込めて』特報映像が公開

https://www.cinematoday.jp/news/N0130390

※ヘッダーはここから引用。


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