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映画「バッドガイズ」感想

 一言で、アウトロー達が主役の痛快アクション作品です。日本や海外アニメのオマージュが多く、話の先が読めると思っていたら二転三転して、最後までハラハラドキドキして楽しめました。果たして彼らが「善人に改心」したのか、貴方はどう思いますか?

評価「B」

※以降はネタバレを含みますので、未視聴の方は閲覧注意です。

 本作は、『シュレック』・『マダガスカル』・『ボス・ベイビー』などの人気アニメーションを手掛けるドリームワークスアニメーション社の作品で、ピエール・ペリフェル監督作品です。
 尚、原作はアーロン・ブレイビー氏による同名の児童文学です。

・主なあらすじ

 「ワルをやるなら思いきり」を合言葉に、次々とハデな盗みを成功させてきた怪盗集団<バッドガイズ>。ウルフ・スネーク・シャーク・ピラニア・タランチュラ、お尋ね者の5人組が次に狙うのは、名立たる強盗たちも奪えなかった伝説のお宝《黄金のイルカ》。
 しかし、あと一歩のところで大失敗し、逮捕されてしまいます。彼らは街の名士マーマレード教授の更生プログラムを受けることになるも、ノったフリしてウラをかき、史上最大の犯罪をもくろみます。しかし彼らの知らないところで、さらなる巨悪が密かに動き始めていました…。(公式サイトより引用)

・主な登場人物

・バッドガイズ

 主に銀行強盗など犯罪を繰り返す「アウトロー集団」。彼らの絆は固く結ばれており、今まで犯罪の「失敗」はありませんでした。

・ウルフ(声- サム・ロックウェル / 尾上松也)
 チームのカリスマ的リーダー。特技は“天才的スリ”。得意のハニトラアプローチで心を相手を懐柔しますが、目標は外しません。

・スネーク(声- マーク・マロン / 安田顕)
 特技は“金庫破り”。蛇の体を活かして狭い所へ侵入・脱皮し、ピッキング行為を働きます。とある理由から、「誕生日」を嫌っています。

・シャーク(声- クレイグ・ロビンソン / 長田庄平)
 特技は“変装の達人”。老若男女いろんな人間に化け、見た目で相手を欺きます。ホホジロザメらしく体は大きいのに、実は「繊細」な性格の持ち主です。

・ピラニア(声- アンソニー・ラモス / 河合郁人)
 特技は“肉体派”と"歌"。小柄な体格ながら、格闘技で相手を圧倒します。一方で、お腹が弱く、一度「やらかす」と、敵味方関係なく共倒れになります。

・タランチュラ(声- オークワフィナ / ファーストサマーウイカ)
 特技は“天才ハッカー"。インターネットに強く、チーム唯一の紅一点でかなりの毒舌です。

・その他

・ダイアン・フォクシントン(声- ザジー・ビーツ / 甲斐田裕子)
 アカギツネの女性知事。バッドガイズに厳しく、彼らに対して「時代遅れ」という意識を持ち、民衆に強く伝えています。しかし、その正体は…?

・ルパート・マーマレード教授(声- リチャード・アイオアディ / 山口勝平)
 街に落ちた隕石からエネルギーが流れているのを発見し、また数々の善行が高く評価されて、「良き隣人賞」として街から表彰されたモルモットの名士。本来なら、パーティーにて《黄金のイルカ》のトロフィーを授与される予定でした。しかし、ひょんなことからウルフの提案により、「バッドガイズをグッドガイズにする」実験を行うことになりますが…

・ミスティー・ラギンズ警察署長(声- アレックス・ボーダスティン / 斉藤貴美子)
 大柄でゴリマッチョな婦人警官。毎回バッドガイズ達を追うも、あと一歩で取り逃がします。そのため、何としても彼らを逮捕し、警察での地位を上げようと、躍起になります。

・ティファニー・フラフィット(声- リリー・シン / 高橋真麻)
 バッドガイズの悪行をニュースで報道する女性キャスター。

1. アメリカのアニメ映画らしく、安定した面白さはある。

 まず本作は、アメリカのアニメ映画らしく、コメディーとアクション多めなので、エンタメ映画として安定した面白さがあります。
 また、獣人というキャラ属性や性格のユニークさには愛着が湧きやすいのと、二転三転して予想がつかない展開を盛り込むなど、要所要所に観客を飽きさせない工夫が凝らされているので、お子さんとも安心して楽しめます。(まぁ、アウトローに「安定・安心」というのはミスマッチな言葉ですが、「倫理的な価値観の線引きが『そこまで不自然ではない』」という意味で。)

2. 主要キャストは、本職声優ではないけど、皆さん嵌り役だった。

 本作も、最近のアニメにもれなく、主要キャストは本職声優ではないですが、皆さんとても嵌り役だったので、鑑賞中に違和感はありませんでした。
 まず、尾上さん・安田さん・ウイカさんは、舞台演劇出身の方です。やはり、歌舞伎や演劇、ミュージカルなど、舞台出身の俳優さん達は、発声の基礎がきちんと出来ている方が多いので、声優が上手い方が多いですね。
 また、芸人さんの声優起用も、最近のアニメのトレンドだと思います。長田さんは『トイ・ストーリー4』のバニー役だったのを覚えています。
 そして、個人的には、ピラニア役の河合さんの美声が聴けてGOODてした。声優初挑戦には思えない堂々とした演技力を見せつけてくれました。流石、普段から「物真似」を得意としているだけありますね(笑)
 さらに、最近のアニメらしく、歌のシーンは多めです。美声がウリのピラニアだけでなく、バッドガイズ全員のラップシーンもあるので、自然とノリノリになります。私もいつの間にかバッドガイズの仲間になったような奇妙な連帯感」が生まれました(笑)。
 ちなみに、有名アニメでは御馴染みの山口勝平さんの出演も嬉しいです。作品によって本当に声が違いすぎるので、本当に芸達者ですね。

3. 日本や海外のアニメのオマージュが多く、それを探すのが楽しかった。

 本作は、日本や海外のアニメのオマージュが多く、それを探すのも楽しかったです。
 まず、アウトローの物語としては、『ルパン三世』・『名探偵ホームズ(犬ホームズ)』・『ヤッターマン』のドロンボー一味・『キャッツ・アイ』・『クルエラ』(クルエラ、ジャスパー、ホーレスのトリオ)・『怪盗セイントテール』・『かいけつゾロリ』・『ジョジョの奇妙な冒険第6部ストーンオーシャン』からオマージュしているように思います。
 また、警官署長の破天荒ぶりは、『こちら葛飾区亀有公園前派出所』の両津勘吉みたいでした。
 そして、ケモナーアニメな点は、『マダガスカル』・『ハッピーフィート』・『ズートピア』・『ペット』・『シング』・『どうぶつの森』に似ています。
 さらに、カーチェイスやバイク走行などアクションコメディーは、アメリカアニメなら、『ミニオンズ』・『スパイダーマン: スパイダーバース』・『Mr. インクレディブル』などを、邦画アニメなら『AKIRA』・『頭文字D』などを彷彿とさせます。
 後は、モルモットの傀儡化と暴走は、『ポケットモンスター ミューツーの逆襲』・『PUIPUIモルカー』みたいでした。
 個人的に好きなシーンは、バッドガイズ達が絶海の孤島の刑務所に収監されたとき、名札を持たされて顔写真を撮られるシーンです。ここは『ストーンオーシャン』の序盤そのもので、思わず噴き出しました(笑)。

4. 動物の特徴を適材適所として活かす演出が面白い!

 本作は、バッドガイズ達が任務を遂行する際に、動物の特徴を適材適所として活かす演出が面白かったです。
 例えば、スネークが脱皮しながら侵入し、しかも脱皮した皮をダミーにした点は知恵と工夫の活用が感じられました。また、タランチュラがパソコンをいじるとき、全ての足で対応できるよう、8個分のキーボードが出てきたのは、思わず感心しました。
 一方で、シャークの変装レベルで、周囲の人間が簡単に騙されるのには笑いました。

5. 前半、先は読めるなぁと思っていたら、後半で結構話が二転三転したのは驚いた。

 本作、前半の時点では、先は読めるなぁと思っていました。しかし、後半で話が二転三転したのは驚きました。 

 私にとっては、マーマレードがヴィランなのは「想定の範囲内」でした。もともとマーマレードは「絵に描いたようなイイ人」すぎて、却って胡散臭い感じがしたので。

 一方で、私が予想がつかなかったのは、スネークの心情でした。なぜ彼は「誕生日が嫌い」なのか?それは、「生まれたことを祝福されたことがないから」だと。
 それでも、今まで仲間とやってきたことや、(アイスキャンディーの下りから)相手に分け与える思いが生まれたことで、彼の「何か」が変わったのです。
 だから、スネークがバッドガイズの4人と別れてから、彼ははどちらの味方なんだろう?ってずっと考えていました。元々皆ワルだし、1人くらい「こっち側」でも仕方ないかなと思ってたら…マーマレードに魂まで売ってなくて良かったです。

6. 相手を判断するのは、果たして見た目なのか中身なのか?

 本作のテーマの一つに、「相手への判断基準は見た目か中身か?」があります。
 バッドガイズが作中にてワルになっていたのは、フィクションや実際の事件・事故においてイメージの悪い、所謂「嫌われやすい」動物達故に、「見た目」の印象も良くなかった→人間によく思われないことが続いて次第にグレたのかなと思います。(勿論、それが彼らの行いを肯定するものではありません。)
 でも、そんな「悪い」イメージを彼らに持っているのは、我々人間かもしれません。

 色々と思うことはありますが、バッドガイズにとっては、本作の出来事が彼らの心の中身の一つである「良心」を引き出したけれど、同時に「良心」だけが心の内側に有るわけではない、ポジティブな感情もネガティブな感情も、色んなものを受容することが大事だよと言うことでしょうかね。まぁ、彼らの「中身」が群衆に伝わるのには、まだ時間がかかると思います。
 最も、そこまで難しい話ではなく、単純にあの世界での「悪」を可視化するために、敢えて獣人として描いたのかな?とも思いますが。

7. 世間で所謂「良い人」でいることが、その人にとって「良い」とは限らないってこと?

 作中では、マーマレードが彼らを「矯正」し、「良い人(グッドガイズ)」にしようと躍起になっていました。
 特にウルフは、一番最初に目をつけられていました。「老女」や仔猫を助けたたことで、真っ先にマーマレードの「手の内」に落ちていたのです。
 それにしても、バッドガイズの皆が「良いこと」をすると、自然と皆の尻尾やお尻がフリフリするのには笑いました。

 一方で、「良き隣人」なんて、如何にも胡散臭い名前ですね。ここは、キリスト教の『善きサマリア人の法』・『隣人愛』から取っているのかもしれません。

 作中では、バッドガイズ(と一部のキャラ)以外は、誰もマーマレードの胡散臭さに気づいていませんでした。結局、人間は「良い顔」している人を「良い人」だと勘違いするし、自分の信じたことを「正しい」と思ってしまう確証バイアスを持っているんだなぁと実感しました。

 ちなみに、ラストから思うのは、バッドガイズは出所しても、別に「良い人」になった訳ではないということです。世間一般、所謂外側から見て「良い人」でいたとしても、その人にとって「良い」こととは限らない、内側は違うかもしれないってことですかね?

8. 暴走モルモットのシーン、集合体恐怖症の人は要注意。

 後半、マーマレードが仕掛けた策略によって、研究所からモルモットが集団で逃げ出すところは、おびただしい数のモルモットが出てくるので、集合体恐怖症の人は要注意だと思います。(私も、あれは結構気持ち悪かったです…モルモットは可愛いですけどね。)ここは、同じ会社のアニメ『ボス・ベイビー』の子犬の群れを思い出しました。

 ていうか、マーマレード、「同族」を利用しましたよね?ここは、実験動物に対する懐疑的視点を取り入れたのでしょうか?
 だから、彼と他のモルモットの違いを考えると、結構謎なんです。所謂、ポケモンのロケット団のニャースと他のニャース的な感じでしょうか?それにしても、操られてロボット化・ゾンビ化したモルモットは、『ミューツーの逆襲』のコピーポケモンみたいな怖さがありました。

9. 人の善意につけこむ犯罪はいけません。

 本作のマーマレードの「悪事」は、現実世界でも通じる所があります。
 寄付金詐欺や、集めたお金を独り占めする問題は、今もありますよね。これらの問題は、人の善意につけこむが故に、本当に質(たち)が悪いと思います。しかも、こういう詐欺は一人一人が出す金額は少量なことが多いので、中々ダメージを受けにくいのも問題です。本作からこれを学ぶとすれば、寄付の発信元が有名人だからと、すぐに信じるのではなく、必ず情報の出処を調べましょうという教訓だと思います。

10. 脚本・展開にツッコミどころは多いけど、コメディーの許容範囲だと思う。

 本作は、コメディー色が強く、物語の進行がとても速いため、脚本・展開にツッコミどころは多いです。そのため、「全く粗が無いわけではない」けれど、そこは「許容範囲」であり、それらが作品の質を落とす程ではないと思います。
 一部のレビューに、「幼稚」や「物足りない」という意見がありました。確かに、その考えもわからなくはないです。本作は、夕方ゴールデンタイムまたはニチアサのアニメのレベルなら全然アリだと思いますが、「それ以上を求める」と、そういうご感想になるかもしれません。

 私が、ツッコミどころと思ったのは、以下の点です。

・人間と獣人が混ざった世界、お互いの割合はどうなのかしら?

・人間たちは、警察署長以外とマーマレードの部下以外はほぼモブ。それにしても、ニュースやSNSの情報にすぐに惑わされる群衆たちが多すぎる!だからマーマレードにも騙された。

・ハートの隕石、最後は壊したのかい!まぁ、盛大に爆発させたがるのは、アメリカ映画の特徴だよね。

・最後のオチ、マーマレードの悪事は「バレてない」と思ってたら…ダイヤモンドの窃盗罪に問われてて草でした。
 確かに、マーマレードは「世間的には」良い人で通っていました。しかし、やはり「李下に冠を正さず」、自分の行動は常に用心深くし、疑われるようなことをしてはならない、ってことかな。※まぁ、メタ的には、バッドガイズだけが罪に問われるのは釈然としないからこうなったのかもしれないけれど。

・「自首」して、ちゃんと刑務所に入るバッドガイズには草でした。模範囚なのも(笑)。

・ダイアン、知事は辞めたのかな?それとも続けてるの?結局、正体バレはしなかったってこと?言おうとしたら、ウルフが止めたから。

 最後に、本作を観て「ウルフの夢男子・夢女子」が増えそうです(笑)こういうイケメン&スカシキャラに人気が出るのは、『ズートピア』のニックで証明済みなので。
 それにしてもウルフ、トロフィー授賞式のダンスのとき、既にダイアンと恋に落ちてたでしょ。「ヤツはとんでもないものを盗んでいきました…。あなたの心です」なのは、正に『ルパン三世カリオストロの城』でしたね(笑)。

出典: 
・映画「バッドガイズ」公式サイトhttps://gaga.ne.jp/badguys/

・映画「バッドガイズ」公式パンフレット

・「バッドガイズ」Wikipediaページhttps://ja.m.wikipedia.org/wiki/%E3%83%90%E3%83%83%E3%83%89%E3%82%AC%E3%82%A4%E3%82%BA

・シネマトゥデイ「バッドガイズ」https://www.cinematoday.jp/movie/T0027287
※ヘッダーはここから引用。

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