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映画「エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス」感想

 一言で、今流行りのマルチバース作品ですが、超B級破茶滅茶映画でした。終始意味不明すぎ、また某国への「忖度」が目立ち、オスカー作品賞受賞作品でも、私には全く合いませんでした。

評価「E」

※以降はネタバレ含みます。尚キャプションより、100%愚痴で全く褒めてないので、好きな方は絶対に読まないでください!

 本作は、『スイス・アーミー・マン』など、破茶滅茶展開を得意とするダン・クワン監督最新作品です。
 第95回アカデミー賞に11部門でノミネートされ、ミシェル・ヨーがアジア人女性初の主演女優賞を受賞し、その他作品賞、監督賞、助演男優賞、助演女優賞、脚本賞、編集賞の計7部門で受賞しました。

 尚、演技部門における「三冠達成」は、1951年の『欲望という名の電車』と1976年の『ネットワーク』に次いで、3度目となります。

 この受賞数は、『ロード・オブ・ザ・リング/王の帰還』(2003年)を上回り、史上最も多くの賞を獲得した映画となりました。また、アカデミー作品賞を受賞した初めてのSF映画となりました。

 また配給のA24は、映画で使われた衣装や小道具をチャリティーとしてオークションに出品し、収益の100%はランドリーワーカー支援団体、アジア系のためのメンタルヘルス・プロジェクト、そしてトランスジェンダー支援団体に寄付されました。

・主なあらすじ

 コインランドリーや家族の問題と、トラブルを抱え、うだつの上がらない毎日を悶々と過ごしていたエヴリン・ワン・クワン。
 店の経営難から、確定申告で「とあるインチキ小細工」をします。しかし監査にて、それがIRSの監察官にバレてしまい、何とかしてその場をやり過ごそうと、アチコチ逃げ回るエブリン、そんな中彼女の目の前に、突然「夫に乗り移った"別の宇宙の夫"」が現れ、何故か「全宇宙の命運を託されて」しまいました。
 そして彼女はマルチバースに飛び込み、カンフーの達人の「別の宇宙のエヴリン」の力を得て、マルチバースの脅威「ジョブ・トゥパキ」と戦うこととなりますが…。

・主な登場人物

・エヴリン・ワン・クワン 演 - ミシェル・ヨー

 本作の主人公。コインランドリーを経営する中国系アメリカ人女性。本作のドタバタの張本人。
 マルチバースの他のバースでは、「カンフーの達人」・「芸能人」・「シェフ」など、様々なバージョンの彼女が存在します。
 尚、映画本編では明言されていませんが、「注意欠陥・多動性障害(ADHD)」を持つ設定になっています。

・ジョイ・ワン / ジョブ・トゥパキ 演 - ステファニー・スー
 エヴリンとウェイモンドの娘。エヴリンからはいつも「太り過ぎ」と注意を受け、祖父からは自分のアイデンティティーを認めてもらえず、家族関係はギクシャクしています。でもその正体は…

・ウェイモンド・ワン 演 - キー・ホイ・クァン
 エヴリンの夫。エヴリンとは過去、駆け落ちして結婚しました。間が抜けたところがありますが、善良で優しい性格です。IRSを訪れた際に、「別の宇宙の夫」を名乗り、エヴリンを導きますが…

・ゴンゴン 演 - ジェームズ・ホン
 エヴリンの父親。厳しい性格で、前時代的な考えを持っています。普段は車椅子移動。

・ディアドラ・ボーベアドラ 演 - ジェイミー・リー・カーティス
 IRSの監察官。不正を見抜くことが評価され、いくつも表彰されています。  
 別のバースでは、何故かエヴリンとパートナーになっています。

・ベッキー・スリガー 演 - タリー・メデル
 ジョイのガールフレンド。ゴンゴンの世話を買って出ます。

・デビー・ザ・ドッグ・マム / ビッグ・ノーズ 
演 - ジェニー・スレイト

 コインランドリーの女性顧客。愛犬はポメラニアン。尚、キャラクターの元の名前(「ビッグ・ノーズ」)は、ユダヤ人のステレオタイプ(英語版)との関連性から、デジタルリリース時に変更されました。 

・チャド 演 - ハリー・シャム・ジュニア
 別のバースでエヴリンと一緒に働く鉄板焼きシェフ。優秀なシェフでしたが、その器用さには秘密が…。

1. 賛否両論なのはわかってたけど、今迄観た全作品で一番観るのが辛かった。

 本作、率直に申し上げると、今迄観た全作品で一番観るのが辛かったです。ぶっちぎり「ワースト1位」です、ごめんなさい。

 まず、予告編や皆様のレビューより、「賛否両論」だということは知っていましたが、それでも観たのを後悔しました。 改めて、本作のような「B級シュール系ブラックギャグコメディー」は本当に観る人を選ぶなぁと思いました。単に「ブラックコメディー」映画であれば、高評価作品は他にもありますが、本作はB級・闇鍋化し過ぎたせいで、全く乗れませんでした。

 また、よく映像表現は良くても脚本がイマイチ、または音楽だけは良いみたいな、評価が偏る作品は他にもありますが、本作は本当に良い点が見つかりませんでした。

  そして、本作を端的に説明すると、「クワン家の破茶滅茶ホームビデオ+マルチバースもの」なのですが、とにかく終始煩くて落ち着きがなく、要所要所の表現で腹が立ちました。

 さらに、テーマも盛り込みすぎですね。夫婦愛・親子愛・ジェンダー・世界は考え方次第というのが、かなり不可解な形で描かれていました。間違いなく、家族の内輪ネタを引っ張りすぎだし、宇宙や世界の話については蛇足感が否めませんでした。

 うーん、どうも制作者が悦に入っている自己満足映画、しょうもなさすぎるおバカ映画としか思えませんでした。コメディーなのに映画館、誰も笑ってなかったですw。

2. ハリウッド的中国人の描き方がステレオタイプだし、あまりにも下品すぎ。

 まず本作は、冒頭から人種マイノリティ、同性愛、ハリウッド的中国人のステレオタイプでスタートします。
 エブリンが生まれたときの「残念ながら女の子です。」の言葉など、中華文化の封建的な所をクローズアップさせていましたね。 結局良いのはアメリカ的個人主義的で「皆違って皆良い」、でももう回り道しすぎ、140分かけるのは長過ぎです。とにかく、中身がないのをふざけて誤魔化してるようにしか見えませんでした。

 また、とにかく至る所で下品さが爆発していました!口紅モグモグ・大人の玩具・ソーセージ・ケツの穴・お漏らし・下半身の露出(モザイク付き)・嘔吐など、スクリーンで見るに堪えない物が目白押しでした。
 これ、何故レーティングは「G」指定なのでしょうか?せめて「PG-12」にしてほしかったです。ちなみに、「R15+」の『ブレット・トレイン』と違うのは、話のメインが「殺し合い」ではないからでしょうか?

3. 主人公の現実逃避による「もしも…」思考、妄想爆発は見てて恥ずかしくなる。

 本作は、エブリンがマルチバースへ飛び、色んな世界の「自分」に成り代わります。
 前述より、他のバースでは、「カンフーの達人」・「歌手」、「シェフ」など、様々なバージョンの彼女が存在します。ウェイモンドと一緒にならず、コインランドリーも経営してなかった違う世界の「自分」が。
 これって、「もしこの選択肢を選んでなかったら、この未来はなかったんじゃないか?もっと幸せになれたかもしれないのに…」なんてウダウダしてる妄想Ifストーリーですよね。何か見てて恥ずかしくなりました。

4. 画面の質やカメラワークが下手すぎる。

 そして本作、画面の質やカメラワークが下手すぎです。

 まず、画面の明暗をうまく使えてないのでチカチカしすぎていて、目が痛くなりました。

 また、カメラワークも下手なので、主人公のアップが異常に多く、違和感しかなかったです。

 そして、カメラのブレが酷く、映像酔いしました。これは『カメラを止めるな!』以来かな。

5. 身体的特徴をネタにするのは如何なものか?

 本作、不快な点は前述より山程あるのですが、特に地雷だったのは、身体的特徴をネタにしたことです。

 大鼻(白人女性)・太り過ぎ(娘)・ソーセージ化した手指・足指で何かを行う・何故か猿化してる、これは何かの「障害」のメタファーですか?
 こういう身体的特徴をネタにして笑うことって、表現が子供のイジメのレベルに落ちてるように思いました。

 まぁこの辺は、最近の作品にありがちなポリコレ要素を取り入れた結果なのでしょうが、こういうのはやめて欲しいです。

6. 散々観客を振り回しておいて、結局は緩い、薄い家族愛で締めててズッコケた。

 このように本作は色んな意味で観客を振り回しているのですが、結局は緩い、薄い家族愛でハッピーエンドに締めていたので、ズッコケました。

 エブリンがカラオケセットをコインランドリーの経費に紛れ込もうとさせるの、実に狡猾だと思います。不正経費でやらかすの、某議員か!しかもバレたら逆ギレして暴力を行使し、それを無理矢理笑いに持ってったのには驚愕しました。

 そんなこんなあって、娘が「闇堕ち」して、他のバースにおいて、マルチバースへの脅威となる「ジョブ・トゥパキ」として母親を終始圧倒します。ある意味、「ラスボス」でした。

 このマルチバース問題、実に意味不明なんですが、結局は「母と娘・父と娘・祖父と孫娘・夫婦の問題が『ブラックホールや宇宙の歪み』を生んで、本作の一連の出来事の原因になった」、ということなんでしょう。
 でも、それにしても引っ張りすぎだし、全体的にダサかったです。いや、「エブリンが最初からきちんと確定申告やってれば済んだ話でしょ」と突っ込みたくなりました。

 そして、祖父と孫娘についても、前時代的な祖父や家父長制に対する「反駁」があるのかと思いきや、娘の「恋人」を最後まで「ガールフレンド」と濁し、祖父世代と孫世代でもきちんと話し合えてないのが消化不良でした。

 さらに、これだけ色々と皆を引っ掻き回しておきながら、ワン夫婦は離婚しない、良き夫婦・良き母親になってたのには開いた口が塞がらなかったです。

7. いろんな映画のオマージュ?パクリ?はあったけど、全体的にショボいしダサい!

 本作は、いろんな映画をオマージュ?パクって?はいましたが、全体的にショボいしダサかったです。全てをを闇鍋化しすぎて正に「混沌」でした。

 全体的なレベルとしては、週刊少年ジャンプ・コロコロコミッククラスですね。(いや、引き合いに出すのも良くないかも。)

・中国系移民の話は、『私ときどきレッサーパンダ』、『クレイジー・リッチ』ですね。

・ループ・平行世界・マルチバース・SF映画ものとしては、日本の漫画やアニメ、MARVELやDC作品でしょうか。
・『時をかける少女』
・『うる星やつらビューティフル・ドリーマー』
・劇場版『ドラえもん』
・『STEINS;GATE』
・『ジョジョの奇妙な冒険第4部ダイヤモンドは砕けない』吉良吉影のバイツァ・ダスト
・『ジョジョの奇妙な冒険第7部Steel Ball Run』ファニー・ヴァレンタイン大統領のD4C
・『打ち上げ花火、下から見るか、横から見るか』
・『東京卍リベンジャーズ』
・『ジェミニマン』
・『スパイダーマン・ノーウェイホーム』
・『ドクター・ストレンジ・マルチバースオブマッドネス』
・『マトリックス』

・世界観やキャラが独特すぎてぶっ飛んでる作品 

・『スイス・アーミー・マン』
・『パプリカ』
・『チャージマン研』
・『ポプテピピック』
・『絶体絶命でんじゃらすじーさん』
・『ボボボーボ・ボーボボ』
・『涼宮ハルヒの憂鬱』

・下ネタがある漫画・映画
・『おそ松さん』
・『銀魂』
・『クレヨンしんちゃん』
・『ソーセージ・パーティー』

・動物がテーマ、または擬人化させた作品
・『猿の惑星』
・『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』・『あらいぐまラスカル』
・『レミーのおいしいレストラン』

・香港カンフー映画
・『燃えよドラゴン』
・ブルース・リー、ジャッキー・チェン作品

・ハチャメチャB級映画
・『カメラを止めるな!』
・『翔んで埼玉』
・『ブレット・トレイン』
・松本人志監督作品

 他にも、レディ・ガガのファッションやメイクの真似、肩車で走るのは『RRR』でした。

8. 俳優で話題をかっさらったのかな?でも、内容が酷いので、それを引き上げるにも至ってない。

 本作、俳優陣は豪華なので、ゴールデン・グローブ賞でもアカデミー賞でも大変話題にはなっていました。 うーん、でも内容が酷いので、ミシェル・ヨーもキー・ホイ・クァンも一体どんな気持ちで出演したんだろう…?と終始首を傾げてしまいました。

 ミシェル・ヨーは、演技自体は悪くはなかったですが、役としては正直好きになれなかったです。(勿論、役と本人は切り離しているので、御本人に対するマイナスイメージはありません。)

 ステファニー・スーは、大坂なおみと渡辺直美を足して2で割ったような見た目で、インパクトがありました。ただ、あんなにダサい、一昔前のギャルみたいな変装とメイクは見てて辛かったです。もしかしたら、本作をきっかけに売れるかもしれないので、次は全く違う役が見たいです。

 キー・ホイ・クァンは常に誰かに似てるな~と思って観てました。ジャッキー・チェン、アンジャッシュの柴田英嗣さん、堺雅人さん、ウッチャンナンチャンの内村光良さん、野比のび太あたりでしょうか(笑)『インディー・ジョーンズ』繋がりでハリソン・フォードとの再会が話題になっていました。

9. 動物好きな人は要注意!特に愛犬家さんは。

 本作、動物に対する扱い(特に犬)が酷かったです。実家で犬を飼ってるので、これは受け付けられなかったです。

 作中、飼い主であるデビーが、エブリンと戦う際に、愛犬のポメラニアンをリード付けたまま冷蔵庫に閉じ込めたり、ヌンチャクにしてぶん投げたりしていました。これ自体は、「動物虐待」ですが、本作には「色んな価値観を受け容れる」意味があるようで、その一つとして挿入されたそうです。だから、「下半身露出」や「大人の玩具」も「性癖や価値観の一つ」として捉えられているとか。

10. レビューサイトによって、「組織票」入ってません?

 本作、日本のレビュー評価を見ていると、Yahoo!映画は2.8、映画.comは3.1、オスカー受賞作品でこれはヤバいと思います。「途中退席した」というレビューがあったのも納得でした。

 しかし、何故かFilmarksは3.9。これ、何か「組織票」みたいなの入ってませんか?※こういう疑いは良くないのは承知の上で。2022年5月の時点の話です。また評価は変わるかもしれません。

 しかも、こういう作品のファンの方は熱心なのか、やたらSNSやレビューでバズらせようとするので、余計にたちが悪いんですよね。(好きな方への否定ではありません!)

11. オスカーではなく、いっそ、「ラジー賞」なら潔かった。

 本作について、最初に発表を聞いたとき、「オスカー?いや、ラジー賞じゃないの?」と耳を疑いました。

 本作、作風は完全にB級なので、所謂「B級映画好き」には堪らないのかもしれません。ただ、「B級がB級として突き進む」ならまだしも、「B級が無理矢理A級になろう」とするのが鼻につきました。

 だから、これが「オスカー総ナメ状態クラス」なのか?と考えると、終始首を傾げてしまいました。とにかく、骨の髄までぶっ飛んでいるんだから、いっそ「ラジー賞なら潔かった」とさえ思いました。

 最後に、今までも「B級映画」にはチャレンジしてきましたが、期待値よりも笑えた作品が本当に少ないので、私にとっては「鬼門・地雷」なのかもしれません。本作については、もう観た記憶を消したい、いや消します。

出典: 

・映画「エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス」公式サイト

・映画「エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス」Wikipediaページhttps://ja.m.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A8%E3%83%96%E3%83%AA%E3%82%B7%E3%83%B3%E3%82%B0%E3%83%BB%E3%82%A8%E3%83%96%E3%83%AA%E3%82%A6%E3%82%A7%E3%82%A2%E3%83%BB%E3%82%AA%E3%83%BC%E3%83%AB%E3%83%BB%E3%82%A2%E3%83%83%E3%83%88%E3%83%BB%E3%83%AF%E3%83%B3%E3%82%B9


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