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偏見という名の松明

偏見というのは暗闇に灯す松明みたいなものなのではないかと思う

知らない場所
知らない人
知らない言葉
知らない匂い

見えてるのに聞こえてるのに
意味が分からなければそこはまるで漆黒の闇
前後左右も分からない、出口も入り口もない洞窟に迷い混んだような気持ちになる

そんな時
私は心に松明を灯す

足がすくみ、体が、心が固まる前に
闇の中で自分の姿を見失わないように

松明は、今までの私がかき集め積み上げた
知識や経験やスキルや処世術や世間の風潮を粉々にして混ぜ合わせたものを燃料にした灯りだ

その偏見という名の松明を燃やし、自分とは違う受け入れがたい、時には自分を攻撃してくるかもしれない他人から、身を守ろうと虚勢を張りバリケードだらけにしようとする

けど到底、いつだって私は、無いよりはマシなくらいの、ちっぽけで頼りない火しか燃やせない

そんな松明で見えるのはせいぜい、今自分が出してるのが右足か左足かくらいだ

恐る恐る、頼りない灯を手に前に進むしかない

時々、どこかからか突風が吹いては松明が消えかけてしまう

もっと、もっともっともっと
松明が大きければ
煌々と自分の行く先がすべて見えるくらいの大きな火を燃やせれば
この恐怖から逃れられるのか?

そう思い、手の中の灯りばかりを見つめてしまう

そして私は、そう思えば思うほど、自分の灯りの小ささと、暗闇の深さに落胆し、周りを見ないようにしてしまう
立ち止まって
うずくまって
火が消えてしまうのを待ちたくなる

消えてしまえばどこにも行けないのに

本当は分かってる
暗闇の中は、本当は自分一人ではなくて、たくさんの人たちがいるってこと
たくさんの、自分だけの松明を持った他人がいるってこと

本当は分かってる
火は大きくたって小さくたって構わない
持てるだけの灯りでいいってこと
その炎を、他人を燃やすために使わなければそれでいいんだってこと

本当はただ、知りたいだけ
この恐怖に似た暗闇が何で出来ているのか
どこから来てどこに行くのか
ただ見たいだけ

偏見という名の松明が
いつしか好奇心という太陽に出会う瞬間を、この目で確かめたいだけなんだ

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