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新しい形のせんべろ…素敵

以前から物凄く気になっていた「焼き鳥日高」に満を持して行って来ました。
というのは大袈裟で、その日、あまり気の乗らない用事を済ませ時計を見ると、午後4時。
「こっちとら飲まなきゃやってられねぇ事情があるんじゃい」と息巻いて、この時間から飲ませてくれる聖母のようなお店を探し、たどり着いたのがこのお店でした。
「焼き鳥日高」は、「日高屋」という中華料理屋チェーンの別業態である、焼き鳥をメインにした居酒屋です。

はじめてのお店にはいつも緊張しますが、店内はそれを凌駕する程の庶民的安心感。
こりゃありがてぇ、と思ったのも束の間、お店のお姉さんが
「当店ははじめてですか?」と来ました。
ムムッ、これは何やら説明の必要があるシステムを採用しているという証。咄嗟に身構える私。
「は、初めてですぅ」と、少々伏し目がちに告白しました。ちなみに私は軽めの人見知りです。
すると、お姉さんはおもむろに、長さ約20cmほどの黒い色をしたペン状の物を取り出し、私に見せました。
「???」
恐らく鳩豆みたいな顔をしていたであろう私に構う事なく、お姉さんはテーブルの上にあらかじめ置いてあったA3サイズ程のパウチされたメニューにそのペン状の物の鋒をぐりぐり押し付け出しました。
「このペンで、品物、数量をタッチした後、(注文します)をタッチして下さい」
するとそのペン状の物の本体から
「ねぎま、一点、注文致します」と、エレクトリックな女性と思しき音声が、まぁまぁの大音量で発せられました。
こりゃたまげた。こんなペラペラで、パウチしただけにしか見えないメニューに一体どんなシステムが搭載されているのか?私の知らない科学技術が、生ビール一杯290円のお店にあるなんて。
私は動揺していましたが、差し出されたその黒いペン状の物をしかと受けとりました。
「お会計の際はこのペンをレジまでお持ちください」
爽やかな笑顔で厨房へ戻って行くお姉さん。
マ、マジっすか

アワアワしながらも、例のペン状の物を使い、生ビールと焼き鳥数種類をオーダーした後、一息ついて店内を見回した私は、またもや驚きました。

「べ、ベテランだらけじゃないの⁈」

店内は、6080代の人生的ベテランの皆様でほぼ満席だったのです。
このお店が繁盛している事は来店前から知っていました。しかし、メイン客層については今、初めて目の当たりしたのです。

「このオーダーシステムは、果たしてベテランの方々に受け入れられるのだろうか?」

ここで私の悪い趣味が出ました。三度の飯より人間観察が好きなのです。
私の座った席は、店内奥の壁を背にしたベンチ席です。店内が見渡せる、絶好の位置でした。
賑わう店内を観察していると、先ほどの私の疑問の答えが見えて来ました。
店内のベテランの皆様は、例のペン状の物を、まるで一刀流の使い手の様にバッサバッサと巧みに操り、次々とオーダーを重ねていきます。中には、片手にジョッキ、もう一方の手にペン状の物を持ち、二刀流の使い手である事を隠そうともしません。
そう、ここにお集まりの皆様は、かなりの手練れだったのです。

「いいな、この感じ」

私もいつか、この老練家の皆様の様に、新しいモノコトを受け入れ、それを楽しみ、お店のお姉さんを笑わせながらお酒を飲むようなステキな老後を獲得したいと思いました。
まだまだ修行が足りないな。

まず、コミュ障なんとかしなければ

新しいせんべろの形、素敵です。






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