Chika Ishimizu

保育士として14年間私立保育園に勤務。子どもの個別ニーズを満たす保育を行うため脳科学や…

Chika Ishimizu

保育士として14年間私立保育園に勤務。子どもの個別ニーズを満たす保育を行うため脳科学や発達心理学を学ぶ。2022年、子どもの幸福度が高いといわれるオランダに家族で移住。イエナプランやモンテッソーリ小学校の見学や保育園でのボランティア等を通じ、その教育環境の心地よさを自ら体験中。

最近の記事

オランダの学校で、先生が見ているもの

オランダに移住してから一年間、娘はカトリック系の小学校に通った。 昨年九月、息子が小学校に入学するタイミングで娘は学校を転校し、現在二人は公立のモンテッソーリスクールに通っている。 学校の登下校には、基本的には保護者など大人が付き添うことになっている。 我が子が通う小学校では毎朝、登校時間になると校長先生が校門に立つ。 オランダの冬は寒く氷点下の気温が続くこともあるが、校長先生はカップに入れたコーヒーで暖をとりながら、子どもや保護者と挨拶を交わす。 息子の担任の先生も教

    • 自由を尊重する社会は無秩序か?

      すでに別の記事にも書いているが、私にとって自由を尊重する国オランダでの生活は心地良い。 以前、友人から 「自由な社会って、無秩序になって混乱しそうなイメージがあるんだけど、実際はどう?」 と聞かれたことがあった。 私はスーパーでの出来事を思い出した。 スーパーに行くと、支払う前のパンやリンゴをかじりながら買い物をする人を見かけることがある。 買い食いではなく、買う前食い。捉えようによっては、イートイン 。 その光景が頻繁に見られる地域もあるようだが、私はふた月に

      • 自由を尊重する国オランダで学ぶ「正解のない子育て」(後編)

        自由と配慮 オランダに住む人の多くが「子育ては、子どもが育つ姿をサポートすること」と認識していると、私は感じる。 だから、家庭で育てる親、学校で教える先生、社会の人々が、それぞれの役割を果たしながらみんなで子どもの育ちをサポートしている。 バスや電車にはベビーカー優先スペースが確保され、車内が混み合っていても子どもをベビーカーに乗せたまま乗車することができる。 ベビーカーや車椅子、お年寄りが乗り降りする際は、周りにいる大人が手を差し伸べることがマナーだと聞いた。電車や

        • 自由を尊重する国オランダで学ぶ「正解のない子育て」(前編)

          日本で子育てをしている時「子育てに正解はない」という言葉を聞くことがあった。 一人ひとりの価値観は違う。だから子育てに対する正解も一人ひとり違っていていい。 私は、確かにそうだなと思った。 私は私なりの子育てをすればいいのだと思うと、子育てに向かう気持ちが少し楽になる感じがした。 でも実際は、この社会での子育てはそんなに楽ではないと感じていた。 子どもは、親の思い通りに行動してはくれない。 正解がないゆえに親は悩んだり、失敗して落ち込んだりする。もしも私が子育てに行き

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          重度知的障がい児通園施設でのボランティアで学んだこと

          今から15年ほど前、私は発達障がいについて学ぼうと、重度知的障害児通園施設(現在は児童発達支援センターに名称変更)で半年間ボランティア活動を行った。 その時受けた衝撃を、私は一生忘れないだろう。 緊張 そこは知的障がいを持つ4〜6歳の就学前の子どもたちが集団生活を学ぶための通園施設であり、知的障害と自閉スペクトラム症を併せ持つタイプの子どもも多く在籍していた。 3つのクラスそれぞれにクラス担任1人とその補助1人が配置されていた。 それまでの私はごく一般的な保育園しか見

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          娘をピーマン嫌いにさせるもの

          一つ前の記事で、ピーマンを食べなかった娘がピーマンを食べるようになったことを書いた。 現在、娘はピーマンの入った料理が出ると、自分でピーマンの量を調節して食べている。全く食べないこともあれば、自分からすすんで食べることもある。 私はこれでいいと思っている。 でも以前の私は、どんな料理であっても私がお皿に盛り付けたものを、娘が完食することを求めていた。私は、娘が苦手な物を食べないことが嫌だった。 それは娘には、苦手なことにでも挑戦する子どもでいてほしかったから。 「苦

          娘をピーマン嫌いにさせるもの

          娘がピーマンを食べるようになった

          私たちは一人ひとり違う人間。 だから、 できないことは悪いことじゃない。 違っていることは悪いことじゃない。 分かってはいるけれど、 子どもが相手だと忘れやすい。 そこで、私なりの方法。 私は子どもと意見が対立したら、ひとまず 「あなたは、そう思うんだね。」 と言うように心がけている。 ピーマンが苦手で、これまで食べてこなかった娘とのやりとり。 この日のメニューは野菜炒め。 娘「ごはん、食べたくない。」 私「食べたくないの?」 娘「うん。」 私「そっか、あ

          娘がピーマンを食べるようになった

          なぜ子育ては苦しいの?

          子どもがご飯を食べない、食べ散らかす、寝ない、すぐ起きる、トイレに行かない、水を流して遊ぶ、静かにしない、走り回る・・・。 小さな我が子を育てながら私はこう感じていた。 「もう嫌だ」 「疲れた」 「しつけがなってない?分かってるから言わないで」 今、私たちはオランダで生活している。 オランダには、大人が子どもの成長する力を信頼し、子どもの意志を尊重する教育文化がる。 そんな考えに、私はとても勇気づけられる。 私たち大人でも、何も食べたくない時があるし食べものをこぼすこ

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          保育の本質は何だろう?

          子ども主体の保育や教育を考える動きが日本に広がる中、私は「保育の本質とは何だろう?」と考えていた。 OECDは保育の質について、 「子どもが心身ともに満たされ、より豊かに生きていくことを支える環境や経験」と示している。 私はこの文が保育の本質を示しているように感じている。 「質」は、「実際の内容」という言葉に置き換えるとイメージしやすいかもしれない。 何をもって心身が満たされるかや、豊かさの定義は、個々の価値観や状況によって異なる。 それをふまえて上記OECDによ

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          何のために学ぶのだろう?

          私たちは何のために学ぶのだろう? 娘に誘われて、数枚の折り紙を組み合わせて作る立体折り紙のパーツを折っていた私は、娘に聞いてみた。 私「人はなんで勉強するんだろう?」 娘「勉強しないとさ、この折り紙の説明書もたぶん読めないから折れなくて困るだろうね」 私「なるほど、そうだね。だから国語を勉強するのかな」 娘「日本語の本は漢字もたくさん書いてあるしね」 私「そうだね、だから漢字も勉強するんだね」 折り紙を立体的に組み立てる過程がなかなかうまくいかず仕上げるのに時間がかかっ

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          オランダへの移住と、我が子の学校選び

          家族でオランダへ移住すると決めた時、私は我が子にはオランダ現地の小学校に通って欲しいと思った。 なぜなら、オランダでは日本の教育とは異なる視点で教育活動が行われており、それは我が子たちにとってとても貴重な体験になると思ったからだ。 そしてまた、日本への帰国後の学習に備え学力もつけていってほしいと思い、この願いを叶えられる学校を、インターネットを通じて探した。 私達が調べたオランダの小学校の多くは、その教育目標を、子どもが未来の理想的な社会を実現するための力をつけていくこ

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          大人の国の子どもたち

          ーここは大人の国。 子どもたちは大人が考えた決まりを守って生活しなければならない。 決まりは子どもが失敗しないためにある。 窮屈に感じる子どももいるが、大人に従うことでより良い人生が送れるならと我慢している。 子どもは大人の決めたゴールにたどり着こうと頑張る。 結果には点数がつき、他の子どもと比べられる。 ゴールすれば大人からほめられ、そうでない子どもは自分にレッテルをはり自信をなくすー 新人保育士だった頃、私は子どものことを大人の国に順応していくだけの存在だと考えてい

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