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晩年の子供

晩年の子供 山田詠美

SNSで「高校の時、現代文の授業で読んだ『ひよこの眼』が怖くて忘れられない」という一文を見て、そんな話、授業に出てきたっけ…?と気になって、この本を読んでみることにした。

この本には短編が8つ収められている。
どれも子どもが主人公で何だか少し不気味な雰囲気。でもそれは嫌なものではなくて、自分も味わったことがあるような、うまく説明できないけどそんな感じ。

短編小説の好きなところは、自分の好きな話、気になる話から読めるところ。

だいたい1つの話が13〜15分くらいで読めるので、通勤電車だったり、お風呂を溜めている間に1話ずつ読み進めた。

どれもよかったけど、「蝉」と「海の方の子」が好きかな。8つのお話の中から1つ、「蝉」のあらすじを紹介します。

「蝉」

ある日、主人公の真実は死んだセミのお腹を裂いてみた。うるさい鳴き声の正体は一体何なのか、気になって開けてみたものの、中身は空洞。
その頃、母親が弟を出産する。両親から可愛がられている弟を見て「あんたなんか死んじゃえばいいのに!」と言ってしまい、母に叱られ泣きじゃくる。そしてその時、自分もセミと同じように、空っぽのおなかで泣いていることに気づいたのです。

その時、私は、自分こそが、おなかを空っぽにして鳴き続ける蟬であったことに気付いたのでした。空洞を満たしてもらいたいと願いつつ人間が泣くということを思い、私は、とてもせつない気持でいっぱいでした。私こそ死んじゃえばいいのに。私は甘い気分で、そう思いました。けれど、死んだ時に、おなかを引きさかれることを思うと、まだまだ死ねないと思うのでした。」

この話、赤ちゃんがどうやってできるのかを知って、ちょっとショックを受けるシーンなどもあって、子どもの複雑な心境が描かれてるなぁと思います。

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