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研究者と編集者のあいだ

新卒で就職した財団法人では、研究員として働いていた。学生時代は農業土木分野で、田んぼ周辺を住みかにしている淡水魚の研究をしていた。なので、主な調査研究対象は水生生物だったけど、入社してからは猛禽類も識別できるようになって猛禽調査にも行くようになった。

植物に詳しい先輩には草花のことをいろいろ教えてもらったけど、ほとんど覚えられなかったから、毎年花が咲くころになると、「あれ?これ何でしたっけ?」と聞いてしまう研究員だった。それでも先輩は、「そういう人がいるから毎年僕たちは活躍できるんだよね。」と優しく教えてくれた。そしてまた忘れる私(笑)

私の周りには生き物や植物が大好きな人たちがたくさんいた。生き物の死体や糞を調査現場から持ち帰っては詳しく調べたり(たまに冷蔵庫にいれたまま忘れてる人もいたけど)、この植物には毛があるから〇〇だ、毛が無いから~と楽しそうに話したり。珍しい鳥が近くにやってきたと分かれば、車を飛ばして見に行き、目をきらきらさせながら自慢する上司・・・。

私は特別な生き物や植物が好きというよりも、生きものや植物など自然の話をすることが好きだったし、生きものや植物が好きな人たちと一緒に働けることが楽しかった。もちろん、楽しいことばかりじゃなくて、むしろ悔しいことの方が多かったけど・・・。

そんな私は今、研究者よりも編集者として、仕事をする機会が多くなった。

つい先日、大学で土壌を研究している先生と学生さんに取材をする機会があって、研究していた頃のことをいろいろ思い出した。そして、改めて、私は自分が研究するよりも、研究している人の話を聞くのが好きなことに気づいた。

研究員として働いている時も、研究している内容や自然を守る意義みたいなことをどう伝えるか?ということに興味があったんだよな・・・とも。そう考えていたのは、自分たちがやっていることがちゃんと伝わっていないことに対するジレンマみたいなものもあった。自然ってほんとにすごいし、おもしろいし、楽しいのに・・・・、と。

だから、「研究レベルでやっていることを一般の人にも分かりやすく伝えることって大切で、そうした人材がやっぱり少ないんじゃないかなと思うんだよね。」と、同じ職場に勤めていた夫に話したら、「サイエンスコミュニケーターとか学芸員の人って、そういう人材じゃないの?」と返ってきた。

なるほど・・・そうかもしれない、そうかもしれないけど・・・・

私が意図していることと違うなと感じる違和感を言葉にすると、特に自然科学分野におけるサイエンスコミュニケーターや学芸員の方は、科学をそのまま科学として、そのおもしろさを伝えることに長けている人のように感じている。(←私定義、すみません)

私が言いたかったのは、科学を生活とかもっと暮らしに結び付けて伝える人材が少ないんじゃないかということだった。だから今、私は研究者としてではなく、自然科学の視点を軸に郷土を見つめなおすフリーマガジンを編集しているのかもしれない。

社会人になって、約20年。ふらふらのろのろ歩んできたけど、いろんな点がつながって、やっとしっくりくる働き方やテーマを見つけることができたなあと思う今日この頃です。

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